46.騎士として
その時、姉妹は?
エイシェル達と別れたフラムとフルームは目的の場所へと向かう途中だった。
「それにしても、お姉ちゃんがあのお店を紹介するなんてね。ま、お姉ちゃんが言わなかったら私が紹介してたけどね」
「当たり前じゃない。一番のオススメに行かないと2人に失礼よ。……確かに最初はそこそこのお店紹介して終わろうと思ってたけど、それじゃ私の気が済まないわ。……たまたま朝の空いてる時間に行けたからってのもあるけどね」
フラムとフルームは一番のお気に入りの店でエイシェルとアリスに奢ったのだ。
値段が周りに比べて高いのに日中はいつも満席になる盛況っぷり。余程のことがないとただ席を取り合うライバルを増やすだけになるので教えないようにしている。
「そうだね。それにしても臨時収入助かったよねー。4人分払ってもまだお釣りがあるもん」
「確かにその通りなんだけど、あまりそう言うことは外で言わないの」
「はぁい」
フルームはフラムに注意されて気のない返事をする。
フラムもフルームがそう言うのが理解できたため、軽く注意した程度で済ませたのだ。あの店は時価で提供するため日によって値段が違う。
今回は4人分のコース料理を頼んで、なんと金貨2枚だった。
値段こそ普段より高いが良いネタが揃っていたようで、以前食べたものよりも数段美味しく感じた。
……会計時にフラムとフルームが値段を見て顔が引きひきつったのは仕方がないことだった。
「……あの2人すごかったわね」
「うん……一緒に依頼受けたのがあの2人じゃなかったら……私……今ここにいなかったよ」
フラムがつぶやき、フルームも同意する。
恐らく、あの猿の魔物は他の人と組んでいたら全滅していただろう相手だった。
アリスのデタラメな魔法にエイシェルの正確な射撃があったため、フルームは助かったのだ。
「あの時のエイシェル、あの距離、あの状況で目を狙い撃てるとか冷静すぎるでしょ……その後のアリスの連携も、本当に昨日会ったばかりなのかってくらい息ピッタリだったし」
「エイシェルが落ちた時のアリスもカッコよかったよねー。エイシェルが落ちるのを見たら体が勝手に動いてるみたいだった。……ふつう一度助けられたとはいえ、あんなに自然に動けないよ……」
多少美化されている感は否めないが、フラムとフルームにとって、エイシェルとアリスは憧れの存在となっていた。
自分達の目指していた理想が突然現れたのだ。憧れないはずがない。
「……どうすればあの2人みたいになれるかなー……。どんな状況でも迷わずに助けに入って、そしてみんなを守る」
「……私たちが目指すべき姿よね」
どうすれば同じようになれるのか、どうしたら同じ土俵に立てるのか。2人はそんな事を考えていた。
ほんの少し間が空いたと思ったところでフラムが決意と共に口を開く。
「……私決めたわ」
「……たぶん、私も同じこと思ってるよ」
どうすればいいか。せっかく身近に手本がいるのだ。手本がいるなら真似をして身につけていけば良い。
……それこそずっと一緒に旅でもして……
「「2人について行こう!」」
流石は姉妹というべきか、考えることは同じであった。
そうと決まれば善は急げである。
さっさと用事を済ませて2人を探しに行こうと考えた。
フラムとフルームの2人はワクワクして眠気など忘れていたのだった。
しばらく歩くとひときわ豪華な宿に着いた。
団体で泊まれるほどに大きい宿である。
フラムとフルームは宿の中へと入るとたまたま目的の人を見つけた。
「あ、パパ!戻ってきたよー」
「ただ今戻りました。」
「おぉ、お前達……よく戻ってきた!1ヶ月間冒険者をやってみてどうだった?守るべき人々がどんなことに悩んでいるか直に触れることはできたか?」
フラムとフルームの父親で名前はフェルスという。
王国騎士剣術部隊の団長を務めている。今も任務で派遣された先で作戦を練っているところだった。
煮詰まったところで気分を変えるために散歩をしていたら、1ヶ月前に修行に出ていた娘達が帰ってきたので、息抜きも兼ねて話題を振ったというところである。
「はい。人助けになる依頼を選び、困っている人を助けるよう尽くしてきました。」
「帰りに魔物の……討伐になるのかな……?魔物を倒すのに戦闘に参加したりもしたよ!」
フラムとフルームは誇らしげに語った。
もともと、騎士として人助けをする勉強のために冒険者になったのだ。
そこで経験した出来事は彼女達の成長に繋がった。
「そうか、それは良かった。我々の剣は人を守るために使われるのだ。それを忘れないようにな」
「「はい!」」
フェルスは娘達の成長を喜びつつ、自分も同じように学んだ日々を懐かしんでいた。
「それでね、相談があるの」
「ほぅ、フラムが相談とは珍しい。言ってみなさい。」
「じつは……」
「た、大変です!団長!」
フラムが相談しようとした時、騎士団員が駆け込んできた。
「どうした!?また被害が出たのか!?」
フェルスは連日とある魔物の討伐に挑戦していた。しかし、あまりにも魔物が強く団員に少なからず被害が出ていたのだ。
魔物に傷一つつけられずにいたためどう戦えばいいのか作戦を練っていたのだ。
「いえ、被害はありません!あの魔物が討伐されました!!」
「なに!?本当か!?」
「はい、商人が魔物の死体を運んでいたのをこの目でも確認しています!」
この1ヶ月間、ずっと戦っていた魔物が討伐されたというのだ。フェルスは信じられないとばかりに驚いていた。
そんな中フラムとフルームがコソコソと話し出す。
(あれ?商人が魔物の死体を運んでいたって、まさか……)
(……メルカさんのことかな?)
2人は思い当たる人を思い浮かべた。
そう何人も商人が魔物を運んでいるわけが無いと思い、騎士団が苦戦する相手となるとあの猿の魔物であれば納得ができた。
「一体どうやって……?その商人に話を聞くことは出来るか?」
「はい!商人はメルカ商会のメルカと名乗っておりましたので、商会に行けば詳しい話が聞けるかと」
((やっぱり!))
まさか父親が仕事で討伐対象としていた魔物を相手にしていたとは想像も出来なかった。
そもそも仕事の内容は聞かされておらず、本来であればここで話を聞くのもダメなはずである。
2人がいても団員が報告してしまうくらい衝撃だったらしい。
「ねぇ、パパ?」
「あぁ、すまん。急用が出来た。相談はまた帰ってきてからで頼む」
フェルスはそのまま宿を飛び出そうとしたため2人は呼び止める。
「まって!その魔物って猿みたいなやつでしょ?」
「なに?何故お前達が知っている?」
「だって、倒した時そばに居たもん」
「…………は?」
フラムとフルームの言葉に思考が停止するフェルス。
確かにフルームが、魔物との戦闘に参加したと言っていたが、まさか討伐対象の魔物とは夢にも思わなかった。
「私達、町からここまで来るのにメルカさんの護衛任務受けながら来たの。そこで魔物に遭遇して、一緒に依頼を受けた2人組と討伐したの」
「剣が全く効かなくて……猿の攻撃を剣で受け流すので精一杯だったよ……」
「なんと……よく無事でいてくれた……。それで、どうやって倒したんだ?」
フェルスは2人の話を聞き、間違いなく討伐対象の魔物だと分かった。
分かった途端、娘達が無事であったことにとても安堵した。
それだけの相手だったのだ。それなのにも関わらず、倒す事ができた。その方法を知りたく無いはずがなかった。
「一緒に組んだ2人が倒してくれたわ。1人は魔法使いで、頑丈な氷の槍を作って、もう1人が弓でその槍を放ったのそうしたら魔物の口から頭に槍が刺さって倒せたの」
「なんと、感謝しなくてはな。高ランクの冒険者だったか。なら、限られるから調べればすぐわかるな」
「Eランクだよ?」
「……いや、お前達の話をしてるんじゃ無いんだ。その倒した冒険者のランクをだな……」
「Eランクよ?私達と同じね」
「……そんなバカな……」
フェルスは信じられなかった。信じたくなかったのだ。騎士団員が束になっても勝てなかった相手、それをEランクの冒険者が倒したというのだ。
何かの間違いでは無いかと頭を悩ませているフェルスにフラムが話しかける。
「そこで私達のお願いに繋がるんだけど……。その2人の旅について行きたいの。……私達がどれだけ未熟か思い知ったわ。あの2人と一緒に行けば足りないものが手に入ると思うの」
「あの2人がいなかったら私……私達はあの魔物に殺されてたと思う。強くなるために、あの2人から学べる事がたくさんあるの。だからお願い!旅に行かせて!」
「…….フラムだけでなく、フルームまでもそのように言うか……」
フラムだけでなく、いつも飄々としているフルームですらこんなにも真剣にお願いしてくるのだ。何があったのか想像も出来ない。
ただ、フェルスはこうなるんじゃ無いかと1ヶ月前から予想はしていた。
(いい刺激を受けたみたいだな……やはり、子は親に似るのか……)
フェルスは昔の記憶が蘇り懐かしく感じていた。
「……分かった。その代わり条件がある。何があってもその2人を守ること。受けた恩を返すんだ」
「「はい!!」」
こうしてフラムとフルームはエイシェル達の旅について行けるようになったのであった。
まずは2人を探すことになるが、きっとすぐに会える。
フラムもフルームもそんな気がしていた。
ひとつの話が長くなってきました……更新頻度の見直しするかもです。。




