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ジェミニ 〜魂の契約者達〜  作者: えいりす
第三章 王都への旅
39/224

39.ハク

再び地下サイドのお話。

50m級の白蛇が現れた

 【コマンド】

  たたかう

  まほう

  どうぐ

 → にげる

エイシェルとアリスの2人は突然の地震で崩落した空洞の中で白い大蛇に遭遇していた。


「いやああああぁぁぁぁぁ!」


「なんだよあいつ!?あんなん勝てるわけないだろ!?」


アリスとエイシェルは白い大蛇から離れるように走り逃げた。

だが、2人ともクッションの水によりずぶ濡れであったため、思うようにスピードが上がらない。服が重く体力が持っていかれた上に、逃げた先が行き止まりになってしまった。


「いやぁぁぁ!まだ死にたくないぃぃ!」


「おれだって死にたくないって!くそ!ここまでか……!?」


エイシェルはふと思い至る。前回の魔物を倒した魔法なら倒せる。そう確信したのだ。

ただ、今回はエイシェルもアリスも生命力を消耗している。この状態で魔法を放てば間違いなく2人の生命力は無くなり、命を落とす。

ただ、このままだとどうせ2人とも蛇の腹の中だ。どうせ死ぬなら、目の前のバケモノを道連れにすれば、今後起きる目の前のバケモノ絡みの被害は無くなるだろう。

エイシェルは覚悟を決めた。いや、もはや自暴自棄になっていた。


「アリス、ごめん。多分勇者の魔法を使えば倒せるんだけど、今回ばかりは使ったら死ぬと思う。」


「はぁ!?本末転倒じゃないの!!?他にアイデアないの!?あ、私が魔法でトゲの壁を作るから壁を登って逃げましょう!!」


「そんな登ってるのを待ってくれるかぁ!それに、あいつをこのままにしたらフラムやフルーム、メルカさんだけじゃなく港町も危険になる……。どうせ死ぬならここで差し違えてでも倒すべきだと思うんだが?アリスはどう思う?」


確かにエイシェルの言う事にも一理ある。自分たちが無駄死にするのではなく、相手を道連れに出来るのであればそっちの方が良いに決まっている。

……ただ、アリスは全然心の準備ができていなかった。


「最悪の場合はそうだけど!!そうだけど!!他に出来ることあるでしょ!?ハクが相手なんだから火でも見せれば……」


アリスが自分で発した言葉に違和感を覚える。


「……あれ?わたし……なんて言った?」


「……ハクって言ったな」


すると距離を縮めてきた大蛇の反応が変わった。なにやら嬉しそうに尻尾を振っている。


そして2人の前に顔を近づけてきた


「ひっ!?た、たべないで……!?」


アリスが言うと大蛇は言葉を理解しているかのように首を縦に振る。


「なんだ……?様子が変わった……?」


アリスはその様子に気付かず、泣きながら懇願していた。


「お願いだからぁ……ひっく……静かに海へ帰って……うぅ……おとなしくしててぇ……」


エイシェルは気付いた。この白蛇はきっと勇者と魔王の関係者だと。

アリスが名前を呼ぶと白蛇が喜んだように見えたのだ。


「アリス!」


「お願いだからぁ……」


「おい!アリス!さっきの名前を呼ぶんだ!」


「うぅ……え?……名前……?」


「早く!」


「う、うん。ハク?」


『シャー』


アリスはなんだか分かっていなかったが言われるがままにさっき口から出た名前?を呼んだ。

すると白蛇は分かったと言わんばかりに首を大きく縦に振り、もときた道を引き返して行った。


白蛇が去った後にはポカンとしている2人が取り残された。


「わたしたち……たすかったの……?」


「……はぁー!もうダメかと思ったー……」


アリスとエイシェルは自分たちが無事である事に心底安堵した。


「たぶん、例の勇者と魔王に関係してるんだと思う。アリスが名前を言った瞬間にあの蛇、嬉しそうに見えた」


「えぇー……?わたし蛇苦手なんだけど……。でも、おかげで助かったわ……。……それにしても、あなたも叫んだりするのね。思い出したら……ぷっ、ふふ……。」


アリスは安心し緊張が解けると変なテンションになっていた。エイシェルが初めて見せた狼狽した姿を思い出し、笑いを堪えていた。


「お、おれだってあんなのが出たら叫ぶよ。……アリスなんてイノシシの討伐の時から叫んだり泣いたりしっぱなしじゃないか」


エイシェルは照れ臭そうな顔をしながら抗議する。


「ごめんごめん。……悪気があったわけではないの。ただ、ちょっと印象変わったかなーって。……どんな時も冷静に考えて落ち着いている。頼りになるけど何処となく距離を置いている感じ。それがここ数日の印象ね。でも、さっきのエイシェルは素って感じがしたの。エイシェルも怖いものは怖いし、焦る時は焦る。わたしと同じなんだって思った。」


アリスは率直な感想をぶつけた。エイシェルは色々思いつくし、とても頼りになる。ただ、常に気を張っている感じがしたのだ。


「なにをそんな当たり前のことを……。そりゃまだ出会って数日だし、お互い分からないことだらけでしょ?」


「ふふ……そうだね。それならもっとお互いのこと教え合おう?……お互いのことをよく知って、お互いの足りない部分を助け合う。だから……頼ってくれていいんだよ?」


「!」


アリスの言葉にエイシェルは衝撃を受けた。

両親が死んでからなんでも自分がしっかりしないとと思って過ごしてきた。もちろん、出来ないことは誰かに頼っていたが、アリスが言っていたのはそう言うことではない。

心の支えとして頼れるものを持たなかったのだ。

オージンに対してすら心配させまいと弱音を吐いたことはない。いつも気を張り続けていた。ずっと気を張り続けてしまうとどこかで壊れてしまう。連日の出来事はエイシェルを追い込んでいたのだ。

そのため、アリスの言葉は単純な言葉であったが、不思議と今までこんなに心に響いた言葉はないと思えたのだった。


……その証拠に無意識にエイシェルの目から涙が溢れた。


「え!?なんで泣いてんの!?わたしなんか変なこと言った!?」


「あれ?……おかしいな……なんでおれ泣いて……うぅ……うわあぁぁぁ…….」


アリスはエイシェルが突然泣き出し、なにか変なことを言ったか不安になったが、杞憂とわかり安心した。

そしてアリスは泣きじゃくるエイシェルをそっと抱きしめるのだった。

気を張り続けると心身共に疲れちゃいますからね。

どこかで息抜きをした方が良いです。

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