36.小休憩
猿の魔物を倒して休憩回です
協力して魔物を倒した4人は、魔物が動かなくなったことを確認するとその場にへたり込んだ。
それだけ消耗する相手だったと言うことだった。
「はぁ……こんなのよく倒せたわ……」
「ほんと……2人の助けなかったらわたしきっと死んでたもん……」
攻撃を引きつけていたフラムとフルームは戦いが終わったことに安堵した。上手く引きつけていたが一撃一撃が重く、体力が削られていたため、いつ均衡を崩されてもおかしくない状況だったのだ。
「ふぅ……なんとかなったわね」
「あぁ……サポートありがとうな。助かったよ」
アリスもエイシェルも極度の緊張から解放され安堵する。
「エイシェル……あなた、村であんなの相手にしてたの?よく無事だったわね…….」
「道具屋のおっちゃんも一緒に戦ってくれたからな。……ただ、村を襲ったやつは桁違いに早かったし、状況を判断する知恵もあった。勇者の魔法が無かったら倒せなかったと思う」
「闇に吸い込む魔法だっけ?出来れば避けたいけど、最悪の場合は覚悟しなきゃか……」
エイシェルは村での出来事を思い出していた。今思えば生きてること自体が奇跡のようなものであった。
アリスも生命力が激減した時のことを考えて出来れば使って欲しくないと思ったが、それだけの魔物を葬れるのなら、きっとどんな相手にも通用する。そう考え最後の手段としては使う覚悟を決めた。
「……そういえば、メルカさんを呼びに行かないと」
「そうだな、俺が行ってくる。アリス達はここで待っていてくれ」
「それじゃあ……はい。ファイアボール。エイシェルの頭の前の方に固定しておいたから、動けばついていくよ」
戦いの後の余韻に浸っていた4人だったが、依頼人を放置するわけにはいかない。
アリスに灯りを作ってもらい、比較的体力が残っているエイシェルが迎えに行く事にした。
メルカは暗闇の中、街道に向かって逃げていた。
「くそ……私はなんて無力なんだ……。未来有望な4人が犠牲になるなんて……こんなことなら私が犠牲になれば……」
逃げている間に何度も依頼をしたことを後悔するメルカ。その足取りは重く、あの魔物が追いかけてきたらすぐにでも追いつかれてしまうであろう速度だった。いや、むしろそれを望んでいるのかもしれない。それ程に失意の中にいるのだ。
そして気づいたら足が止まっていた。歩いているつもりだったが心が止まり、身体も止まっていたのだ。
「……なにしてるんですか?」
そんな中、突然背後から声がかけられた。火の玉が喋っている。あぁ、お迎えが来たのか。そう思ったメルカだったが違ったようだ。
火の玉の奥にエイシェルが立っている。
「君は……無事……なのか?」
「えぇ、魔物は倒しました。みんな無事ですよ?」
報告を聞いたメルカは信じられなかった。森に住む魔物は真っ向勝負するにはBランク冒険者でも苦戦する程の強さと聞いていた。
しかも動きづらい森の中で、逃げるだけならまだしも真っ向に立ち向かったのだ。普通なら無事では済まないと思うだろう。
「……それに、万が一があっても守るって約束しましたしね」
「……はは。君たちには敵わないな」
エイシェルはさも当たり前かのように出発前にした約束を繰り返す。
そうすることでやっとメルカに笑顔が戻った。
先程までは今回の依頼をした事を後悔していたが、今では本当の意味で頼もしい護衛がいてくれた事に感謝していた。
「さ、一度みんなのところへ戻りましょう」
エイシェル達はアリス達のいる場所まで戻るのだった。
エイシェルとメルカが戻ると3人は出迎えた。
「メルカさん!無事でよかった。暗闇の中なので心配しましたよ」
アリスもなんでもないかのように振る舞い出迎える。
「あそこに見えるのがその魔物か……」
頭を美しく透き通った槍で貫かれたまま倒れている魔物を見た
「あの魔物、身体の表面が毛皮のように見えてすごく堅いんですよ……。私の剣も刃が立ちませんでした……」
フラムも悔しそうに話す。腕に自信があっただけになおさらであった。
「そんなに堅いのか……あの魔物はどうするんだ?」
「重くて運べないのでそのままにしていくつもりでした」
アリスは4人を代表して答える。
「そうか…….どうだ?君たちが良ければあの魔物を買い取らせて貰えないか?馬に運んで貰えば持ち運べるだろう」
「え?それはいいですけど何に使うんですか?」
「そんなに堅いなら防具の材料として売れるかなと思ったのもあるが……まぁ仲間の命を奪ったやつだ。生き残った商売仲間に仇は取ったぞって知らせたくてな。なにぶん、商人は自分で確かめないとなかなか信用しない生き物だからな」
アリスの質問にメルカは正直に答える。
メルカの事だ。最初に話した理由もあるんだろうが、きっと今思いつきで言ったのだろう。後から話した理由が本音だと4人には感じられた。
「さて、どうする?まだ辺りは暗いけど、先に進む?」
アリスは3人に確認する
「いや、あれだけの魔物がいたんだ。他の動物は逃げていると思う。海から来たやつもこんなに暴れても出てこないんだからもうどこか行ったのかもしれないし、ここでキャンプして朝になるのを待つのがいいと思う」
「私も同じ意見よ」
「さんせいー」
「そうね。ということでメルカさん夜が明けるまでここで休憩にしませんか?」
アリスも3人と同じ意見だった。みんなの意見を聞いた上で依頼者であるメルカに確認を取る。
「……まったく……本当に頼もしい子たちだよ。朝まで休もう」
メルカは護衛の頼もしさに苦笑し、朝まで休む事にした。
強い生き物が現れると生態系が崩れるアレです。
次回、港町へ向けて再出発……?




