34.森の魔物
森の中を彷徨います。
森に逃げ込んだ一行は海から離れるように移動していた。しかし、馬を連れているため思うように進めない。
「フラム、フルーム、この森って魔物が出るかとか知ってるか?」
「ごめんなさい、私もフルームもこの森のことはわからないわ……」
エイシェルが確認するがさすがにフラムもフルームも森のことはまでは分からないようだ。
どうしたものかとエイシェルが考えているとメルカが話し始めた。
「……この辺りは魔の森って言われてる。恐ろしい魔物がいるから中には入らないようにって商人の仲間内では有名な話だ。ここ数日で出没するって噂の魔物も森にいた魔物って話なんだ」
「え、魔物が出るで噂、さっきの大きなやつのことじゃないの?」
あらかじめ魔物が出ると聞かされていた為、フルームはあの海から近づいてきたものが噂の魔物だと思い確認した。
「あんなのが出るって聞いてたら最低でもBランク冒険者を雇ってるさ。森の魔物は足がそこまで早くないって聞いてたから、4人くらいなら馬車で逃げ切れると踏んだんだ。だから、あの依頼内容にしたんだ……万が一戦闘になっても4人もいれば協力して逃げられるだろ?」
メルカはあくまで全員助かるように考えて依頼を出していた。あくまで万が一に備えてだったが事態は想定していた最悪を越えた状態であった。
「…….つまり、最悪その森の魔物を相手にしなくちゃならないってことか……。みんな、このまま森を通って港町へ行こう。荷台は今は回収できないけど……まずメルカさんを安全なところに避難させるんだ」
エイシェルはやれることはやろうと思い、3人に声をかけた。
「……そうね。このまま森深くに逃げても何も状況は変わらないわ。それなら港町へ進んだほうがマシよ」
エイシェルの提案にアリスが答える。アリスもこのままではまずいと思っていたのだ。
「異論はないわ。私が先頭を行くわね。フルームはしんがりを頼むわよ」
「りょーかい!」
剣士である2人が前と後ろを守る。そこに弓と魔法のサポートを加えることにした。
こうして港町へ向かって森の中を歩くことにした。
1時間ほど歩いて道中何も起きなかったが、日が落ちて辺りはすっかり暗くなってしまった。
「まずいわね……暗くなりすぎてる。このままだと視界が悪くて突然襲われたら反応できるか怪しいわ……」
「……わたしが、魔法で松明みたいに、灯りをつければ……少しはマシになるかしら……?」
フラムが辺りが暗くなったことで不安を口にする。アリスは険しい森の道に体力を持っていかれ息も絶え絶えの状態ではあるが少しでも状況が改善できるのであればと提案をする。
「いや、それは逆に危険だ。魔物に気付かれて引き寄せる恐れがある。」
エイシェルがアリスの提案に反対する。
村で魔物の被害が何回かあったが、夜に灯りをつけていたら襲われたと言う話をよく聞いた。
「そうなると暗闇のまま進むしかないのかー……あとどれくらいかかるんだっけ?」
フルームはこのまま進むと結論付けどのくらいかかるのかを確認する。
そこにずっと黙っていたメルカが口を開いた。
「……この調子なら、ざっとあと4時間はかかるな……」
馬車であと2時間の距離であった為、平坦な道でさえ最初の位置から4時間はかかるはずであった。森の中で思うように進めない為、1時間歩いた今でもあと4時間、もしかするともっとかかると考えられた。
「……このまま歩くのは危険だな。メルカさん。今日はここで夜が明けるのを待ちませんか?……アリスも休ませてあげたいんです」
エイシェルが話をまとめメルカに提案した。
暗闇の中4〜5時間歩くのはとてもリスクがあるのと、アリスの様子を見る限り、これ以上耐えられないと思ったのだ。
「……ごめん……なさい……。」
アリスは自分の不甲斐なさに泣きそうになりながら謝る。
「気にしないでください。私も馬も休まないとこのあとが辛いですし、暗闇のを無理に進んで怪我をしても大変ですから……。今日はここで夜を明かしましょう」
メルカがアリスを励ます。メルカがエイシェルの提案を受け入れ、この場所で夜を明かすことになった。
「なんだか大変なことになったわね……夜に休める人は休んだ方がいいわ。見張りを交代でやりましょ?最初は私が見張るからみんな休んでていいわよ」
フラムが手慣れたように見張り番を名乗り出た。幼い頃から剣術だけでなく不測の事態に対応できるようにと教え込まれていたのだ。
「……そういえば、さっき海から来てたやつはどうなったんだ……?陸に上がるならとっくに上がっていると思うんだが……?」
エイシェルが思ったことを口にした。もともとの元凶がいなくなっているのであれば引き返すのも悪くないと思ったからだ
「分からないわね……とにかく、まずは休みましょう?明日調査すればいいわ」
フラムはエイシェルに休むよう促し、明日明るくなってから確認することにした。
カサッ
休み始めてしばらくすると森の奥から何かが近づいて来る気配を感じた。フラムが全員を起こし警戒する。
「みんな!何か来る!気をつけて!」
ガサガサッ
音が大きくなり明らかにこちらを狙ってきていることがわかる。
位置がバレていては暗闇に紛れる必要もない。
「アリス!灯りを頼む!メルカさんは後ろへ!」
「わ、わかったわ」
「気をつけるんだぞ……!」
エイシェルはアリスに灯りを点けてもらい弓を構える。
メルカは急いで馬を連れて後ろへ避難した。
ガサッ!
森の奥の暗闇から見覚えのある魔物が現れた。
「!?なんで……なんでお前がいる!?」
エイシェルが叫ぶ。そこにいたのは村で倒したはずの猿の魔物だった。
次回、猿の魔物と戦います




