33.万が一
万が一とか言うとフラグが立つんです。
割とほんとに
お昼を食べ終わり、また港町への道を馬車で進み始めた。
「うぅ……」
「あんなに食べるから……」
荷台でお荷物になっているフルームにフラムが言う。
「だって……すごく美味しかったから……つい……」
「つい。じゃないわよ。これでもし魔物に出くわしたらどうするのよ……」
「その時はその時で食後の運動って感じかな?」
「本当に動けるんでしょうね?!」
フルームとフラムが話しているとエイシェルが間に入ってきた。
「たくさん食べてくれてありがとうな。気を遣って無理させちゃってたらごめん」
「ぜ、全然無理なんかしてないよ!こっちこそ美味しいスープをありがとう!」
「そうよ。この子は後先考えずに食べたいものを食べたいだけ食べる事があるから……まぁ、それだけ美味しかったってことよ。気にしないで?」
エイシェルはフルームが気を遣って食べてくれたんじゃないかと思い声をかけたが、特にそんな事はなかったようだ。
3人は他愛もない話を続けて道中を進む
そんな中、アリスは1人思い詰めていた。
(フルームと同じくらい食べたけどまだ食べれる……このままだと……危ないのでは!?)
アリスはここ2日間で食べたスープを思い返して悩んでいた。
フラムに指摘されて気付いたのだ。たしかに食べ過ぎだと。
2日前の激辛シチュー事件?からアリスの食に対する価値観が急変してしまったのだ。美味しいものを食べたい。ひたすらに貪欲に。
実はアリスの本質は好きなものに度を越してのめり込むことにある。魔法が好きだから魔法に関しては暴走気味になったのだ。
その対象が魔法だけじゃなく、食も追加されたためここ2日間の暴食が続いていた。
昨晩を抜いたのは旅費節約も頭によぎったからに他ならない。
アリスはフラムの一言をきっかけに自分の本質に気づき始めていた。
(なるほど……わたしは好きなものに"ちょっとだけ"のめり込むタイプみたいね……少し気をつけなきゃね)
まだ自分を理解するには時間がかかりそうだった。
そんなこんなで道中馬車を進めているといつのまにか夕暮れになり、景色が一変する。
周りに広がっていた草原はなくなり、森の中を進んでいた。そして森の片側がひらけ一面の砂浜と海が広がった。
「わぁ!海だぁ!」
「これが……いったいどこまで広がっているんだ……?」
アリスとエイシェルはそれぞれ感想を述べる。アリスもエイシェルも海を見るのは初めてだった。アリスは父親から、エイシェルはオージンから海の存在は聞かされていたが見るのは初めてだった。
「2人とも海は初めてなんだ?」
「うん!キラキラしてて綺麗ね!」
「まるで太陽が沈んで行くようだ……」
2人はその景色に見惚れてしばらく海を眺めていた。
「……ねぇ、エイシェル……」
「ん?どうしたの?」
「あの……ね?」
しばらく黙って海を見ていた2人だったが、突然アリスがエイシェルに話しかける。
先ほどから空気を読んだつもりの姉妹が後ろでひそひそと騒いでいる
(え、私たちいるんだけど!?何このムード!)
(私たち忘れられてるー?)
(きゃー!なんかこっちが恥ずかしくなってきた!)
(お姉ちゃん!我慢だよ!ここは耐える時だよ!)
とても楽しそうな姉妹をよそにアリスは言葉を続ける
「……あの……海から……なにか近づいてきてるような……?」
「え?」
「「はぇ?」」
アリスが、見つけたなにかを荷台の全員で凝視する。
確かに遠くからうねうねした何かがこちらに迫ってきている。
遠くからわかると言う事は……つまりそう言う事だった。
「メルカさん!海から大きななにかが迫ってきてる!なんとかして港町に逃げ込めないか!?」
「なんだと!?まだ港までは2時間程かかるぞ?…….くそ、なんてこった!」
エイシェルの報告を聞いたメルカは思わず悪態をつく。
メルカが何かいい案がないかと考えるが、後ろは木々が生い茂り馬車が通れる隙間などなく、海側は一面見晴らしの良い砂浜が広がっている為隠れてやり過ごすことは出来ない。
「くそ!あんなの想定外だ。荷台は置いていく!馬を連れて森に入ろう!」
メルカが声をかける。さすがの4人も相手が悪いと思い森の中へ入る事にした。
次回。森を彷徨います。




