30.それぞれの視点
前回の別視点回です。
エイシェルが新しい依頼を淡々と受けている時、受付のお姉さんの葛藤やアリスたちの姦しい話が繰り広げられていた。
〜受付のお姉さん視点〜
書類仕事を受付でやっていると見覚えのある4人が近づいてくるのが見えた
(あら?昨日の2人だけじゃなく先月登録した姉妹もいるじゃない?優秀な人材は引かれ合うのかしら?)
フラムとフルームは登録してからどんどん依頼をこなしており、ギルドからの評価も高かった。囲い込みの対象として目をつけていた人材であった。
「この依頼お願いします。」
男の子が代表して依頼書を持ってきた。
「はい。確認しますので少々お待ち下さい」
依頼を見ると護衛の依頼のようだった。
(備考は……と。なるほどEランクは4人必要だから集まったのね。報酬は依頼者から直接受け取りと。場所は…………!?)
場所をみて少し焦る。行き先は港町。そこから様々な場所へ船が出ている。
しかもこの依頼は片道なのだ。
「……この4人で受注処理しても良いでしょうか?」
「はい、お願いします。」
「かしこまりました。……こちらに4人の名前を記入ください。……はい、そこです」
つい当たり前の確認をしてしまう。
過去にもこういった片道護衛の依頼を受けた冒険者はいたが、受付証明証を他の人に託し帰ってこないものもいるのだ。
特定の拠点を持たずに気のままに旅をする。それが冒険者。
そのためこういった依頼をギルドが囲い込もうとしてた冒険者が持ってくるとどうしても気になってしまうのだ。
(落ち着きましょう。まず、昨日登録した2人はまだ買取の精算が終わってないはず。つまり戻ってくる可能性は高い。問題はあの姉妹ね。依頼もそこそここなしてたし、買取素材も結構出してた。船で王都とか行きかねないのよね……)
姉妹にはこのギルドの依頼をこなして欲しいと思うが、無理強いはできない。そもそも冒険者とは自由なものの為、引き止めてはいけない暗黙のルールができていた。
「……これで登録完了です。こちら受付証明証ですので無くさないようにお願いします」
(お願い!みんな戻ってきてね!まだまだあなた達みたいな有望な子に捌いてもらいたい依頼が沢山あるの……!)
ひたすらに祈るのであった。
〜アリス、フラム、フルーム視点〜
アリスたちはエイシェルの邪魔にならないように少し離れたところでイノシシを退治した時の話をしていた。
「……と言うわけで窒息させようとイノシシの鼻と口を水で塞いだところまではよかったんだけど、闇で目が見えていないはずなのにイノシシの魔物が何故かこっちに走ってきたのよね……わたし、その時もう足が動かなくて、あ、これもうダメなやつだ。って思ったもの」
「ぜったいぜつめいー!」
「それで!どう助かったの!?」
アリスの話にフルームとフラムが熱中する。
普段他の人の冒険談など聞かない為、とても新鮮で楽しいようだった。
その後もアリスはありのままを話したが、2人のテンションは上がっていった。
……アリスが避けていた方へ。
「そこでね、別行動してたはずのエイシェルがギリギリのところで助けてくれたの!」
「「キャー」」
「エイシェルが弓でイノシシの足を射抜くとイノシシは倒れて動かなくなったわ」
「エイシェルさんカッコ良すぎです!」
「さすが彼氏の鑑ね!」
「か、かかか彼氏なんかじゃないわよ!!」
フルームがエイシェルを褒め、フラムが爆弾を投下する。その爆弾に、アリスは顔を真っ赤にして否定する。
「あれ?違うの?」
「違うわよ!エイシェルとは昨日会ったばかりだし!」
「なんだぁ、てっきり付き合ってるのかと思ってたわ」
「つ、つつつ付き合ってないし!?全然そんなふうに思ってないから!!」
「ふぅーん」
「でもドキっとしたんじゃないのー?」
フラムが勘違いで終わらせようとしたところにフルームが追い討ちをかける
「な!?た、たしかにちょっとはドキッとしたけど……」
アリスは鋭い指摘に尻すぼみになりながら答えた。
「ほらぁーほらぁー!!」
「アリス……可愛いわね!!」
「むぅ……」
アリスをからかうフルームとフラム。アリスは完全に不貞腐れていた。
そんな中タイミングが良いのか悪いのか、エイシェルが戻ってくる。
「依頼受けられたよ。あれ?アリスどうかしたの?」
「な、なんでもないわよ!行きましょ!」
「?」
アリスとエイシェルの様子を眺めて終始ニヤニヤしている姉妹だった。
次回依頼を進める予定。




