20.戦闘
今回長いです
「ふぅ……生き返るわー」
アリスは持っていた水筒から水を飲み木陰で休んでいた
「そんなペースで飲むと無くなっちゃうぞ?」
エイシェルが注意する。今までのやり取りから、あれ?この娘、実は残念な娘では?と思い始めていた。
……アリスは決して残念ではないのだ。ただ、初めてのことに対して見積もりが甘いだけなのだ……!
「うっ、そ、そうね……大切に飲まなきゃ」
「そうだな……もう少しここで休んでるといい。俺はもうちょっと先まで偵察に行ってくるよ。そんなに遠くまでは行かないつもりだから安心して」
エイシェルはアリスを気遣う気持ち半分と、このままでは日が暮れてしまうという気持ち半分で別行動を提案した。
「ごめんなさい……足手まといになってるわね……」
「まぁ……山に慣れてないならそうなるよ。落ち込まないで、今は少しでも体力回復しておくんだ。討伐では頼りにしてるよ。自慢の魔法を見せてくれ」
「!……うん!」
エイシェルはエイシェルなりにアリスを励ました。
力不足に歯痒い思いをしているアリスを見て昔の自分が重なって見えたのだ。
(何事も初めての時はうまく行かないもんだ。俺も最初はすぐへたってたっけ)
「じゃあ様子を見てくるよ」
「お願いしまーす」
エイシェルはアリスを置いて様子見に出発した。
(うわぁ……ちょっとドキッとした……え、これはどうなの?)
アリスは自身が足手まといであると自覚し、巻き込んでしまったエイシェルに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
その巻き込まれたはずのエイシェルが励ましてくれたのだ。
嬉しくないはずがない。
(わわわ……変に意識しちゃダメ!……はわわ帰ってきたら目を合わせられるかしら……!)
アリスは乙女だった
ガサッ
しばらくアリスがきゃっきゃっしていたら、突然何かが、近づいてくる音が聞こえた
(!?え、見てた道と反対側に何かいる?)
ガサッ……バキバキッ…….
明らかに細い木をなぎ倒し進むような音が迫ってくる
(……あれぇ?これはまずいのでは?)
大きな何かが木と木の隙間から顔を出す。
そして、目と目があった。
討伐対象のイノシシの魔物と
「いやあああああああああああああああ!」
アリスは盛大に叫び走り出した。
「わああああ!なんでこんな時に出るのよ!」
アリスは走りやすいようにマークしていた広い道へ出た
「この広さなら……!ファイアボール!」
アリスは周りに引火しないよう注意しながら魔法を放った
ボン!
イノシシの魔物に当たるがびくともしない
「ウソでしょ!?なんで怯みもしないのよ!それなら……ウィンドカッター!」
鋭い風の刃を生み出しイノシシに向けて放つ
バシッバシッ!
多少身体の表面にキズは出来たものの止まる気配がない
「やばいやばいやばいやばいっ!アースニードル!」
イノシシに向け土のトゲの壁が生える。アリスは壁ができたことに少し安心……したが我に返った。
魔物の直線上から外れるように逃げるアリス。案の定土のトゲを蹴散らし突進する魔物が先ほどまでアリスがいた場所を通過した。
(あっっっぶなかったああああ!エイシェルの話聞いてなかったらそのまま轢かれてたわ……)
イノシシは勢い余って距離が離れたがすぐにアリスへ向きを変える
「なにか手は……そうだ!ダークネス!」
アリスは闇を作り出した。魔物を起点に包み込むように魔法を発動させたのだ。
「ビンゴ!この前は空間を指定して使ったけど、座標をあの魔物に指定してあげれば、移動してもあの闇はついていくわね。ん?これなら……」
魔物は急に暗闇に取り込まれ、アリスの位置を見失い身動きがとれなくなっていた。
「座標を……あの魔物の鼻あたりでいいかな?ウォーターボール!」
アリスは水球を作り出した。……魔物の鼻と口を覆うように。
『ブヒッ!!ブゴゴ……!?』
急に呼吸が出来なくなった魔物は必死に暴れる
まさかのアリスのいる方向に突進してきた
「ちょっ!なんでこっちにくるのよ!!」
アリスはもう限界を超えており足がガクガクになっていた
(ダメダメ!!本当に足が動かない……!あ、これ、ダメかもしれない……!誰か!助けて!!)
アリスは正面から突進してくる魔物になす術がなく、思わず目をつぶった。
身体がぶつかるのを感じる……横から倒れ込むように突き飛ばされる
「きゃっ!」
「おっと!」
エイシェルはぎりぎりのタイミングでアリスを突き飛ばした。
そして弓を構えて通り過ぎた魔物の足を射抜く。
パシュッ
足を射抜かれた魔物はバランスを崩して横倒しになり、しばらくするとそのまま動かなくなった
エイシェルはすぐさま魔物に近づきお腹を確認する。
(こいつのお腹には……何もないか)
エイシェルは村を襲った魔物に描かれていた魔法陣がないか念のため確認したが、そんなものは見当たらなかった。
「ゔええええええええん!ありがとおおおおおおおお!」
アリスは泣きながらエイシェルに感謝した。それはもう盛大に。
「間に合ってよかったよ……叫んで逃げてくれたおかげで間に合った」
アリスが叫ばなかったら気付くことはなかっただろう。不幸中の幸いとはこの事であった。
「…….ぐすん……本当にありがとう……死んじゃうかと思った……」
「もういいって。それより怪我はない?」
アリスは泣きながらずっとエイシェルにお礼を言っていた。
やっと落ち着いて来たところだ。
「うん……ちょっと右腕擦りむいたくらいだから大丈夫……あれ?エイシェルも怪我してるじゃない!」
エイシェルの右腕にも擦り傷があった
「あれ?こんなのなかったと思うんだけど……?」
「今治すわね。ヒール!」
アリスはエイシェルにヒールをかけた。するとたちまちキズが無くなるのが見て取れる。
……2人のキズが無くなるのを。
「おぉ……回復魔法使えるんだ……すごい効果だな!」
「あれ……?わたしのキズも……治ってる……?」
エイシェルは魔法の効果に感動しており、アリスは何故エイシェルのキズを治したのに自分も治ったのかを考える。
(ちょっとまって……今日登録したての冒険者ってことは昨日、今日町についたってことよね。村を出て町についてから何日もふらふらするわけないし。そもそも背負ってた野菜も新鮮だったから多分そう。急に弓が上手くなったっていうのももしかしたら……)
アリスは持っているピースを当てはめていくかの様に情報を整理していく。
「ねぇ、エイシェル?」
「ん?どうしたの?」
「ちょっと右の手のひら出して?」
「こう?」
エイシェルはアリスの言う通り右の手のひらを出す
そしてアリスは自分の荷物から果物ナイフを取り出すと、アリス自身の右の手のひらに軽く傷をつける
「「ッ!」」
痛みに耐えるアリス……とエイシェル。
アリスとエイシェルの右手には同じ形のキズがついていた
「これは……?どういうことだ……?」
「ヒール」
アリスがヒールを唱えると2人のキズが治る
「アリス……これはいったい……」
「…….お……」
「お?」
「……おまえかああああああああああああああああああああ!!」
アリスがぷるぷる震えたと思ったら盛大に叫びだした。
感謝したり突然怒り出したりと忙しいアリスであった
やっと出発点に来ました。これからの2人の活躍にご期待下さい。




