120.招集
祝1周年!活動報告に書きましたがこれからもよろしくお願いします!
魔王が仲間に加わった翌日、新しい転魂箱を求めてステラ道具店へと向かっていた。しかし、この街に詳しいフラムとフルームですら店への道があやふやであった為、昨日歩いた通りに向かおうと考えたのだ。その為に5人(4人と1箱)は最初に訪れた港へ向かっている。
「ごめんね。あの通りは行かないから道が分からなくて……」
「闇雲に歩くと迷子になりそうだよ……」
「仕方ないわ。あんな怪しいところ普通は通らないもの」
『私、船の戦闘から呼び出されるまで意識なかったから案内できないわよ?というかこの箱を作れる人って何者よ』
「道具屋の店主なんだけどちょっと変わった子供だったな」
『子供……?』
魔王が怪訝そうな声を上げる。正直このような箱を作れる人は1000年前でもそういないだろう。もっというと今の時代ではこの手の技術が衰退しているように見えた為、今の時代にこのような代物を作れる人がいるなんて想像ができなかったのだ。しかもそれがエイシェルから見て子供だというなら尚更である。
「今からその道具屋に行くから会えるよ」
『是非会ってみたいわ』
そんなことを話しながらしばらく歩いていると港へと着いた。
「すごい人が多いな。昨日より多くないか?」
港へ着くと人がとても多く、皆何やら忙しそうにしていた。よく見てみると半分くらいの人は船の損傷箇所を調べている。エイシェル達が元いたパエニンスラ港町へ向かう定期便はこの船しかない為、急ピッチで修理をしているようだ。航海は1週間はかかるので、それまでになにかあるとまず助からない。その為万全の状態に戻そうと細かいチェックを大人数で行っているようだった。ちなみに残りの半分は野次馬のようで船を見に来たもの達だった。
「昨日きた連中はいないみたいね。いつくるかも分からないし早く行きましょう?」
フラムがそういうと昨日歩いた道を思い出しながら店へ向かった。いつまでも港にいると連中に見つかる恐れがある。まだどういう集団かよくわかっていないが関わり合いにならない方が良いだろう。途中、分かれ道がいくつかあったものの昨日の今日であったためすんなりと目的地へ着いたのだった。
「着いたわ。あの看板は分かりやすいわね」
フラムが到着を告げると皆で店の前に集まる。前日同様に目立つ看板が目に入った。
『ステラ道具店……?ステラ……?』
「どうでもいいけど、カバンの中にしまってても外が見えてるのね……」
魔王がつぶやいたところでアリスがツッコミを入れる。アリスのカバンの中に転魂箱が入っているのだが、どういうわけか周囲が見えるらしい。
『あら、これ便利よ?360度ぐるりとあたりを見回せる……わ……?』
魔王がそう言ったところで何かに気付く。今まで歩いて来た背後の道に人影が見えたのだ。
『……つけられてるわ』
「「「「え!?」」」」
魔王の言葉に4人が驚く。この場所はほぼ無人と言っていい。それなのにも関わらず人がいるということは後をつけてきたに違いない。
『静かに!……向こうは2人。兵士風の装いで物陰に隠れているわね』
「あいつらかな……?こっちが気付いたとわかったら何を仕掛けて来るか分からないな……まず店に入ろう」
魔王が静かにするように話すと相手の
情報を伝える。それを聞いたエイシェルは前日の怪しい集団を思い出していた。尾行がバレた場合、こんなに人通りが無ければ実力行使に出かねない。向かうが様子見をしているのならまず安全な店内へ逃げようとエイシェルは提案する。
「賛成……ってあれ?」
「どうしたの?」
「……鍵がかかってる」
フルームが店の扉を開けようとしたが鍵が閉まっており中に入れないようだ。よく見ると扉に小さく「本日はお休みします」と書かれた札がかけられている。2階を見上げてみても窓が全て閉まっていることからどこかへ出掛けているようだった。
まさか店が閉まっているなんて思わなかった4人だったが、よく考えてみると店だけで生計を建てるのは不可能である。つまり、副業として何かをやっているはず。そこまで考えたところでエイシェルがなにやら呟いた。
「害獣駆除……。たしか害獣駆除のクエストを受けないで済むとか言ってたよな?」
「なるほど、確かにお店の売上で生活出来ないならギルドで依頼を受けて生活費を稼ぐとかしないとだもんね」
「……そうなると定期受注の依頼を受けている可能性が高いわね」
「定期受注って?」
アリスの質問にフラムが説明し始める。
「そのままの意味よ。依頼主が定期的に同じ内容で依頼したい時に毎回違う人が対応すると説明も毎回しないといけないでしょ?それに人によって依頼を達成した時の質も変わってきちゃう。もし、満足できる質で依頼を達成できる人がいた時に、毎回同じ人が対応してくれるなら依頼者としては嬉しいと思わない?冒険者としても長期で滞在するなら安定して一定の収入を得られる定期受注は嬉しいし両方に利点があるのよ。そして、恐らくだけどここの店主は害獣駆除の定期受注をしているんだと思う。……ここから一番近いギルドだと王都まで行かなきゃいけないから王都に行ってるのかもしれないわね」
フラムの説明を聞いて納得するアリスとエイシェル。昨日ステラと会えたのは運が良かったのかもしれない。そうなると王都に向かうかこの街にしばらく残るかの二択になるが今はそれどころではなかった。
『……悠長に話してる場合かしら?この状況どうするのよ』
魔王が痺れを切らして今の問題を突き付ける。店に入れないのであれば他の場所へ行くしかない。人通りのある場所に出れればうまく尾行を撒けるだろう。しかし、人通りのある場所に出る為には狭い路地をまだまだ歩く必要がある。最悪挟み撃ちにされた場合逃げ道は無いだろう。それなら、この店の前であれば多少の広さがある為、ことを構えるのであればこの場所が望ましく思える。
「……ねぇ、いっそここで迎え撃つのはどうかしら?」
「お姉ちゃんらしからぬ発言だねー。でも賛成。この先の路地はちょっと厳しいと思う」
「被害は最小限に抑えたいけど……多少ならステラが直してくれるでしょ。店の前だし」
「出来れば向こうも無傷で無力化したいところだな……」
『そんな甘い考えだと足元を掬われるわよ?』
みな同じ意見である事を確認し、一斉に振り返る。そこに尾行者の姿は見えないがいつまでも隠れられると話が進まない為エイシェルが誘い出す。
「おい!そこにいる2人。コソコソつけてないで出てこい!」
エイシェルがそう言うと物陰から2人の兵士が現れた。ひとりはがっしりとした体格で背が高い。もうひとりは標準的な背丈でひょろっとした印象だ。
「……驚いたな。俺たちに気付くとは」
「ほらぁ、だからさっさと接触した方が自然だって言ったんだ。あちらさんかなり警戒してるぜ?」
「お前だって最後には賛成してただろう」
兵士の2人は姿を現すや否や愚痴を言い合う。2人の雰囲気からなんともゆるい感じの印象を受けるが正体不明の相手のため4人は警戒は怠らない。
そんな4人を見て体格の良い兵士は慌てて喋り出した。
「まぁまて。尾行したことは謝罪する。だが理由があるんだ」
「理由?」
「そうだ。まず、君たちはエイシェル、アリス、フラム、フルームで間違いないか?」
「……」
尾行したのには理由があると話す大柄の兵士。理由を話す前にエイシェルたちが本人か確認したいようだ。しかし、この場で「はい、そうです」なんて答えるバカはいない。しかも「いいえ、違います」と答えるのも怪しい。どこかでボロが出るだろう。そうなると沈黙するしかないのだが、沈黙は沈黙で肯定とも捉えかねない。そもそも論としてこの質問は無意味なのだ。
そんな様子を見ていたひょろっとした兵士は呆れて物申した。
「おい。そんな聞き方してもはいそうですなんて言うわけないだろ?本当に頭硬いんだから。そうだな……理由だが、俺たちはあんたらが国の脅威となり得るのか見極める為に見張っていたんだ」
「国の脅威……?何のために?そもそも何でおれたちなんだ?」
エイシェルは兵士の言う意味がわからなかった。それはそうである。いきなりそんな事を言われてもなんのことですかと言うのが普通だ。
ただ、今のエイシェルたちは少し緊張していた。なんせカバンの中に魔王がいるのだ。世界を滅ぼすなんて言っていた為十二分に脅威である。
だが、帰ってきた答えは真っ当なものであった。
「ん?だって巨大な魔物を倒したんだろ?そんな力を持った人が悪人だったらどうするよ?普段の素行を知りたいから尾行をさせて貰ったんだ」
「そして、こんなに人気のない所にくるなんて怪しいと思っていたところだったんだが……見た感じここの店に用があったみたいだな」
「まさか気付かれるとは思わなかったけどな」
兵士たちの言い訳を聞き少し疑問が生まれるが、なんとなく腑に落ちたエイシェルたち。そんなところに予想だにしない言葉がかけられる。
「あの船を守ってくれてありがとう。あの船は客こそ少ないが荷物を運ぶのに重宝してるんだ。薬とかこっちでしか買えないものもあるみたいだからね」
そう言う大柄の兵士。話しを聞いた限りでは悪い人ではなさそうである。そんな事を考えているとひょろっとした兵士がとんでもない事を言い出した。
「魔物退治の功績を讃えるということで王様から招集がかけられてる。報奨金が出るらしいぞ?一緒に王都まで来てくれないか?」




