109.気持ちを切り替えて
久しぶりの投稿です!
ステラ道具店を出た4人は人通りのない通りを進んでいた。
「……さて、この後どうしようか?」
しばらく無言で歩いていた4人だったが気まずさに耐えきれずエイシェルが声をかける。
「……そうね。さっきの話は黙っていてごめんなさい。本当はすぐに話せればよかったんだけど、わたしの頭の整理が追いついてなくて……」
「おれも話せるような状態じゃなかったんだ……ごめん」
アリスとエイシェルが黙っていたことを謝罪する。
その言葉を受けたフラムとフルームは一瞬キョトンとした顔をしたが、慌てて手を振り話し始めた。
「え?あ、違う違う!私もちょっと考え事をしてたから」
「そうだよ!それに、急にそんな事分かったからって簡単に人に話しちゃダメだよ」
「2人とも……。そう……ね。ありがとう」
エイシェルとアリスはそれぞれの中に別の魂があることを黙っていた為、フラムとフルームの2人が無言で歩いていたものかと思っていた為気まずかった。
しかし、話を聞くところ原因はそうではないらしい。
「でも、それじゃ何を考えていたんだ?」
エイシェルがフラムとフルームへ質問する。しかし、2人の反応は鈍かった。
「うーん……」
エイシェルとアリスの視線がフラムに集中するなか、フラムは困った顔をしながらフルームと顔を合わせる。フルームが頷くとフラムも何かを決意したような顔つきで答えた。
「実は私達も話さなくちゃいけない事があるの。そのことを考えてた」
「話さなきゃいけない事……?まさか、こっちに戻ってきたからお別れとか……?」
「えっ!?帰っちゃうの!?」
フラムの答えを聞いてエイシェルがもしかしてと確認する。それを聞いたアリスはすごく驚き声を上げる。
それをみたフラムとフルームは慌てて否定した。
「違う違う!帰る気なんてないから!」
「そうだよ!嫌だって言われてもついていくからね!」
フラムとフルームがついていくと答えるとエイシェルとアリスは安心したような表情を浮かべる。
では、何を話そうとしているのか?エイシェルが不思議に思ったところでアリスが喋り出した。
「わたしたちの事とか2人の事……色々話したい事があると思うけど…………まずはこの街を見て回らない?難しい事は一回頭をさっぱりさせてから考えましょう?」
アリスは先程までの気不味い空気を和ませようと考え難しい話は後回しにしようと提案した。
一度考えを整理したいと思ったこともあるが先程までの沈黙が耐えられないのだ。……決して空腹に耐えられなくなったわけではない。決して。アリスは頭の中でそう言い聞かせるのであった。
「そう……だな。夜に集まって話そう。今は無事ついた事を喜ばなきゃな」
「そうだね!美味しいお店いっぱいあるから案内する!」
「いいわね!早速行きましょう!」
「フルームもアリスも……お腹すいてるのはわかったから……食べすぎないでよ?」
今夜話をすると決めた4人は気持ちを切り替えて遅い昼食を取りに向かうのだった。
昼食が遅くなってしまったからか4人ともいつもよりお腹が空いており、フルームが船の上で話していた大盛りの店へ行くことになった。
人通りの少ない道から大通りへと出ると先程までの光景が嘘のように賑わっている。
フラムとフルームに聞くと、これがポルトゥスのいつもの光景らしい。
フルームの案内に続き、人をかき分けて行くと大きな看板がある店へたどり着いた。
「着いたよ!ここが大盛りのお店。メニュー全てが大きいサイズで出てくるんだ」
「全て大盛りって……いいわね!どんな料理があるのかしら?ひとつに決められないかも!……ねぇフルーム?ここの料理って2つくらい頼んでも食べられそうな量?」
「2人とも……食べ過ぎて動けないとかならないようにしなさいよ?それに、2つ食べなくても、2人で協力して頼めば半分ずつ分けられるんじゃないかしら?」
「うーん、それはそれで足りなさそうな気が……」
「右に同じ」
「あなた達のお腹はどうなってるのよ……」
「ははは……ええっと、メニューは……ん?これは?」
アリスとフルームが盛り上がり、フラムが注意している中、エイシェルはアリス達の会話に苦笑いしつつ看板に目を通し気になる一文を見つけた。
「超大盛りプレート?時間内に食べ切ったら……無料?」
「え!?タダになるの!?」
エイシェルが読み上げるとアリスがもの凄い勢いで食いついた。その様子を見ていたフルームも興奮気味に話す。
「そう!それ気になるよね!?この前は他で色々食べてたから断念したんだけど、今ならいける気がする!」
「でも、これ失敗したら金貨1枚ってなってるわよ?大丈夫なの?」
「んー?食べれるんじゃないかな……?」
フラムの心配を他所に変な自信をつけるフルーム。アリスも少し考える仕草をしたものの特に問題は無いだろうと思いこの超大盛りプレートに挑戦する気満々なのであった。
そんな中エイシェルが他にも挑戦系メニューがある事に気づいた。
「あれ?他にもあるぞ?……激辛挑戦?」
「ぜっったいダメ!!」
「……そんな強く言わなくてもやる気はないから安心していいよ」
エイシェルがメニューを読み上げるとアリスが瞬時に反応した。特に食べる予定は無いから良いがアリスが強く反対し少し驚いた。……しかしこのメニューが気になるエイシェル。以前村で食べたもの以上の辛さがあるのだろうか?あったとしたらそれはどのような食材なのか?……これ以上はいけない。食べてみたいという気持ちは胸の奥底へと仕舞われたのだった。
諦めて瞬時に気持ちを切り替えたエイシェルは他のメニューにも目を通した。
「ええっと、他には……?麻痺食……挑戦?毒耐性挑戦……。超大盛り以外はどれも食べ切ったら無料、失敗したら銀貨5枚みたいだけど……毒って……これ、命に関わるよな……?」
「そこは大丈夫みたいよ?あくまで死人が出ない程度の麻痺毒や幻覚とかの毒らしいから。……まぁ、何をもって大丈夫と言うかという問題はあるけど……」
世の中には不思議な需要があるようだ。そう思う事で思考を停止させたエイシェルは他3人とその店に入るのだった。
「いらっしゃいませ!お客様は4名様ですか?」
店に入ると店員が元気に出迎えてくれた。店内は掃除が行き届いておりとても綺麗な印象を受けた。また、席がいくつかの席ごとに仕切られており、座るとその区画以外の席は見えにくい高さになっている。その為、周りの目を気にせずに料理を食べる事が出来そうだった。
前にも訪れた事があるフルームが店員に4人だと答えると4人はそのまま席へ案内された。
エイシェルが席の形状が気になり店員に聞くと、どうやら最初は机が並べられただけの内装だったようだ。しかし、挑戦系メニューを始めてから周りからの視線が挑戦者に集まるようになり、集中出来ないから失敗しただの、外野と喧嘩になるなど問題が起こるようになった。
オーナーは挑戦系メニューを辞めようかとも考えたが既に話題になっていた為辞めるに辞められない状態となっていたという。
そこで、なんとか継続しようとして考えたのがこの仕切りだった。
結果、この仕切りが好評となり、単純に食べてる姿を他の人に見られたくない人や、仲間グループだけで楽しみたいという人からも支持を得た。
そんなこんなで今の店の形状となったらしい。エイシェルが店員にお礼を言うと、店員は注文が決まる頃に再度来ると言い残しどこかへ行ってしまった。店員がどこかへいくと言うことは知らない人がいない空間で安心してメニューを選ぶことが出来るということだ。店員が目の前で待つことをせず焦らせない。その気遣いにも脱帽するエイシェルだった。
(なるほど……確かに目の前で待たれるとまだか?と言われそうでゆっくり選べないからな。しかし、この内装もよく考えられているな。立って歩く分には周りの人が見えるが、席につくとぎりぎり頭が見えるくらいで食事光景が見えなくなってる。こういう店だったら入りやすいかもな……)
何故か気になりしっかり考察するエイシェル。そんな事はお構いなしにフルームが注文を確認する。
「えっと、アリスと私は超大盛りプレートでいいんだよね?」
「いいわよ!」
「おーけー。後はお姉ちゃんとエイシェルだけど、2人はどうする?」
「私はこの魚のフライ定食にするわ」
「おれは……カキフライ?の定食にしてみる。貝をフライにした物みたいだけどどんな物なのか気になる」
「あーそれひと口で食べた方がいいよ?なんか断面グロいから。美味しいんだけどちょっと見た目がね……」
「フルームの言う通りよ。初めて食べた時に噛んだ断面見ちゃって、私はちょっと苦手かも」
「そうなのか……?そう言われるとちょっと抵抗あるが……美味しいなら食べてみるか」
4人が食べる物を決めると店員が見計らったかのように現れた。
「ご注文は決まりましたか?」
「あ、はい。超大盛りプレート2つと白身魚のフライ定食、カキフライ定食でお願いします」
「畏まりました。……ちなみに超大盛りプレートはどなたが?」
「わたしです!」
「私!」
店員が訊ねると元気よく手を上げて返事をするアリスとフルーム。そんな2人を見て店員が忠告する。
「……超大盛りプレートは大人の男性でも普通は食べきれない量となっております。他の方とわけることはできません。失敗した場合は金貨1枚。……それでも挑戦しますか?」
きっと今まで成功者が少ないのだろう。店員から念押しで確認される。それもそのはず、大人の男性ですら食べきれない量なのだ。それを2人の少女が挑戦すると言うのだから念押しで確認しない理由がない。失敗した時の費用も金貨1枚と高額である為、店員としてはあとで文句言わないでね。ちゃんと説明したから食べきれなかったら金貨1枚払うんだよ?と念押ししたのだ。
だが、そんなものはとうに覚悟しているアリスとフルーム。2人とも店員に「大丈夫です」とだけ答え、店員も諦めたように厨房へ戻りオーダーを通すのだった。
店員がオーダーを通してから10分ほどで全ての料理が運ばれてきた。運ばれている道中で超大盛りプレートが目に入ると他の客がざわつき始めた。やはり人気店なのかお昼の時間をとうに過ぎているにも関わらず空白の席はわずかであった。恐らくピーク時に訪れていたら席が空くまでに長いこと待つことになっていただろう。
そんなこんなで運ばれてきた料理を目の当たりにした4人。思うことは同じだった。
「ねぇ、フルーム?それ本当に大丈夫?なんだか……」
「アリスも大丈夫か?なんというか……」
「……うん。ありがと、エイシェル。すごく茶色い料理ね……」
「揚げ物山脈……みたいな……?」
見事に揚げ物で覆い尽くされていた。とても立体感のある皿。プレートという表現が正しいのかわからなくなるほどの高さがある。
それもそのはず、挑戦系のメニューは基本的に制覇出来ないように作られている。いまだかつて成功した物は……いるにはいるがほぼ失敗している。その為、今となっては挑戦系メニューを頼む人はいないのだ。だからか超大盛りプレートが運ばれている様子を見た客で店内がざわざわするのは仕方がない事だった。
4人がその光景に圧倒されていると店員が無慈悲に告げる。
「ご注文はお揃いでしょうか?……それでは
!超大盛りプレートのお二方、今から30分スタートです!」
店員による開始の合図を聞いたアリスとフルームは慌てて食べ始めた。2人とも1番上に乗っている唐揚げの山から処理にかかる。
そんな2人を横目にエイシェルとフラムはそれぞれの料理を楽しんでいた。
「カキフライ美味しいな。独特な味わいだけど……船にもあったがこのタルタルソースがよく合ってる」
「それなら良かったわ。私の魚のも柔らかくて美味しいし、塩加減もちょうどいい」
「……この2人は味を楽しむ余裕はあるのだろうか?」
「……落ち着いて食べられないわね」
一方でアリスとフルームは唐揚げの山を食べ切り、次の壁にぶつかっていた。
「唐揚げ美味しかった!……で、これなに?」
「なに、これ……?板状のカツ?」
そこには唐揚げが乗っていた皿、もとい、丸い板状の揚げ物があった。フルームが勢いよくかぶりつくと、どうやらハムカツのようだった。ただし、ただのハムカツではない。皿一面を覆うだけの大きさであり、元のハム自体がとても大きい。厚みもそこそこあることから、どうやら挑戦者を苦しめる壁のような役割を持っているようだった。
フルームが一心不乱にハムカツに挑む中、アリスもハムカツに挑むべく箸で持ち上げる。
「っ!これは……!」
その時気づいてしまった。ハムカツの下にある第二の壁の存在に。ハムカツに隠れていた為見えなかったが、そこにはハムカツと同じくらい巨大なかき揚げが存在していた。よくみると野菜だけでなくタコのぶつ切りや小さいエビなども入っており、港街に相応しいと思えるものだった。
フルームもその存在に気付いたようで少し驚いているのが見える。しかし、食べるスピードを落とすことなく、次の壁もこのままのペースで乗り越えるんだと言わんばかりの気迫で食べ進める。それを見たアリスも負けじと食べ進めるのだった。
「……これ、食べ切れるのか?」
横から見ているエイシェルが思わず呟き、見ているだけで胸焼けするのだった。
ちょっと見やすいように書き方変えてます。そのうち内容変えずに全部見直そうかなと考えてますー。
次回フードファイト後半




