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自称モブは魔王の生まれ変わりに会いたい

作者: りおん

こんなの読みたいなぁ、と思って書いたやつです


短編初めてなので探り探り。







「フハハハ、この私にできないことなどないのだ!」



小さな子供たちが集まる広場

そこで子供たちを前に1人仁王立ちをして高笑いをするのは、ディオス・ディカルバーであるこの僕である




「嘘つけー」


「この前何もないところで転んでるの見た」


「えー、ださー」




興味なさそうに喋り始める子供たちに、僕は「う、うるさい!そんなわけないだろ!」と焦りつつ黙らせる




「てかディオ兄、今日は学園の入学式なんでしょ?こんなところで遊んでていいの?」



「うっ」



僕よりも5つ年下の子供に諭されるとは...じゃなくて!




「僕は遊んでるんじゃない!その入学式に必要なことなんだ!」



再び仁王立ちをしてドヤ顔で言い放つ僕に、子供たちは



「ふーん、がんばってー。僕暇じゃないからそろそろ行かないと」


「私も習い事の時間だから帰るー」


「俺も帰らないと母さんが心配するな」



と言って振り返りもせずに帰ってしまった





「くっ...まぁいいさ、別に観客が必要だったわけじゃないし...」




その後も1人寂しく「『ワハハハ!この俺に!』の方がいいか...?」などと練習を重ねているうちに、入学式の時間が迫ってきていた




「あっ、そろそろ行かないと」




端に寄せていた荷物を拾い、学園へと向かう





***







さて、今更だが何故僕がこんなことをしていたのかについて説明しよう







世の中にはフラグというものがあるのを知っているだろうか


「俺、この戦いが終わったら彼女にプロポーズするんだ」

とか

「やったか!?」

みたいなやつである。




僕はそのフラグを意図的に作り出したいわけだ。



それがどんなフラグなのかは入学式で実際に見てみればわかるので割愛しよう




そしてそのフラグを理解するための事前知識として、『魔王』という存在について説明しなければならない




詳しく説明するなら『今から数千年前...』とかって話が始まってしまうので簡単に言うと





いわゆる御伽噺の登場人物のことだ。





話によって人物像はだいぶ変わるが、力の象徴として出てくることが多いだろうか


要はいたのかいないのかも定かではない存在なのだが、今世紀は魔王が転生してくると言われているために割とヒーロー的な扱いが多い







そう、今世紀は魔王が転生するのである





あ、ちなみに自分が魔王だと思ってるとかそういうわけではない

だって魔王だった前世の記憶なんてないし。






ところで魔王に限らず、強い存在が転生してきた時のテンプレを知っているだろうか?



まさにそれこそが今回僕がやりたいと思っている『フラグ』である









***






入学式が始まるより少し前、学園の門の前で意気込む存在が1人






もちろんこの僕、ディオス・ディカルバーである





「あれ、ディオスじゃん」



そんな僕を見て声をかけてきたのは幼馴染のユリウス・ユーバイヤーだ




「ユリウス!ついにこの時がきたな!」




「え、まだやってるの?魔王の生まれ変わりだとか言ってるやつ」




「まだとは何だ、まだとは!僕は魔王の生まれ変わりなのだから事実を言っているまでだ!」



「いやまぁ、お前が強いのは認めるけどさ。魔王の生まれ変わりはちょっと...」



「じーじーつーなーのー!!!」



「はいはい、わかったわかった。友達ができなくて困ったら声かけろよ」



ユリウスはそう言って適当に手を振りながら校舎へと向かって行った






さっきの会話でわかったと思うが、僕は魔王の生まれ変わりを自称している。何故ならフラグ構築のために必要だからね












「ディカルバー様!お初にお目にかかります!私、アイナ・アースセッドと申します!」



「やぁ、初めまして。ディオス・ディカルバーだ」



「ディカルバー様!私の名前は...」


「私が先よ!ディカルバー様!私は!」





急に女性が集まってきて我先にと挨拶をしてくる



うん、計画通りだね



入学試験の順位は既に張り出されており、僕は2位を狙った。



2位だ。ここ重要。




1位は魔王の生まれ変わりと相場が決まっているからな。




まぁ、魔力が強すぎて0判定されたとか、桁がおかしくて下2桁しか出なかったとかっていうテンプレもあるけど

今回の入学試験、そこら辺の対策はちゃんとしてある。何故なら魔王を想定しているからね。

一応僕も調べたけど、魔力ゼロの人はいなかったし、魔力測定値は数字じゃなくて色だから大丈夫そうだった。



だからきっと桁違いの魔力やら、失われた魔法陣を復活させたとかで満点超えをしているはずだ!



今回、僕は満点をとったので2位になっているだろう



つまり!



『1位だと思い込んで意気揚々と魔王の生まれ変わりを名乗るザコ』




これが今回、僕が演じるモブである!





入学式までの練習した日々が甦るな...

『何故だ!満点超えなんてありえないだろう!?』

このセリフを何度練習したことか...





「ディカルバー様!一体どんなことをされたらあんな点数を!?」



「いやいや、大したことじゃないよ。まぁ前世の知識があるから、ちょっとズルかもしれないけどね」



「前世...?まさか!」



「ああ、僕は魔王の生まれ変わりだからね。このぐらいは当たり前さ」









「ふむ...俺がこの程度のレベルだと思われているということか?」








きた!



きたきたきたきた!!!!





落ち着け僕、12年の修行の成果を今見せる時だ






「ん?君は誰かな?ちょっと、言っている意味がわからないんだけど」




「俺が魔王の生まれ変わりだと言っているのだが?」




「誰よ、あんた!ディカルバー様に生意気な口叩いて!」


「そうよ!名乗りもせずに邪魔しないで!」



女性たちの声に、今気付いたという顔をして僕に頭を下げる




「あぁ、失礼した。デュアルだ」





「平民!?信じられない!」


「てかデュアルってもしかしてあの...?」







うんうん、いいね平民

平民が1位だったってことでみんなざわついてたわけだね



そうか、彼が魔王か...

モブとは言っても好成績をとった自称魔王なら今後も関われるはずだし、いいライバル的な立ち位置になれるといいな






「まぁまぁ、落ち着いて君たち。先に行っててくれる?彼は僕と話があるみたいだから」


僕がそう言うと渋々彼女たちは校舎の方へと向かっていった




2人だけになったところで、魔王の生まれ変わり(仮)に向き合う




「えっと...デュアルくんだったかな?本当に君が魔王だと言うのなら模擬戦でもどうかな?」




「模擬戦...?俺とお前がか?」




困惑している!いいね

きっと心の中では『殺さずに戦うことができるんだろうか?』とか考えているはずだ!




「ああ、怖い?そうだよね、模擬戦なんて普通やったことないし。それに僕は強いからね。例えマオウサマでも勝てないだろうよ」



バカにしたように笑う僕に、デュアルは

「まぁ、お前がいいならいいぞ。ルールはそっちで決めてくれ」

とどうでも良さそうに返した




「ふっ...随分とナメられているようだ。後で後悔するなよ?」




そして模擬戦のルールを決め、早速模擬戦を始めることにした




入学式?もちろん、こんなことになるだろうと思ってめちゃくちゃ早く来てるから余裕だよ







***




模擬戦をするという噂を聞き、在校生やら新入生やらが集まってきていて

デュアルと僕の周りにはちょうど円形の舞台が整っている







「ルールは相手を殺さないこと、降参したら負け、魔法の使用制限などはなし。で、本当にいいのか?」



訝しそうに確認してくるデュアル




ハンデあげようか?という顔をしているな。まぁ僕もある程度は鍛えたし、殺されさえしなければ大丈夫なはずだ




「うん?やっぱりハンデあげた方がよかった?」




「いやいい。早く終わらせよう、入学式に間に合わなくなる」




「ふっ、心配するなよ、一瞬で終わらせてやる...!!!!」




僕が先制、これはモブとしての常識である



強さを見せるためには相手の切り札まで出させて全て無傷でいることが1番だ




そして今回、僕は『プライドを傷つけられているから、強い魔法で一瞬で殺してやる!』という気持ちで攻撃する



しかしまだこっちにも侮りがあるため、1番強いやつではなく一般的にはすごいな!ってぐらいのやつだ


まぁ、1番最初に出てくるモブの魔法だし、中級魔法がちょうどいいだろう




「【猛る炎よ、心を燃やせ、血肉を燃やせ、我に力を】」




ちなみに詠唱はザコに必須のアイテムである

長ったらしく詠唱した割にショボい魔法、これが重要だ




「【中級魔法・ファイアーストーム】!」





「なっ、新入生が中級魔法を!?」


「待て、しかも威力が桁違いだ!このままだと死んじまうんじゃ!?」



観客がいい味を出してくれている


確かにファイアーストームはまともに受ければ死ぬ。

持続性の魔法なので、正確には「受け続ければ」ということになるが、その間に降参させようという魂胆を見せているわけだ


威力自体は大したことないかな、維持するのが少し難しいだけだ





「なっ、これが中級魔法だと!?バカな...!!」





おお、これは『この程度の威力で中級魔法なのか...俺なら生活魔法でこのぐらいできるぞ』という意味の「バカな!」だな




「死にたくなければ降参するんだな!」



僕の魔法が消しとばされる瞬間をワクワクしながら待とうとしていたら、デュアルは唐突に両手を挙げた











「こ、降参だ!死にたくはねえ!!!」











「...え?」



予想外の言葉に咄嗟に反応ができず、ファイアーストームはどんどんデュアルの方へ向かっていく









「ヒィ!早く魔法を消してくれ!!!」






呆然としながら、とりあえずフッとファイアーストームと消すと、胸を撫で下ろすデュアルの姿があった




「こ、こんなはずじゃなかったんだ!俺は強いって昔から言われて!なんだかあるはずのない記憶とかもあって!だからきっと魔王の生まれ変わりなんだって!勘違いだったんだ、今までのことは謝るからどうか!」




終わった途端にひたすら言い訳をして土下座するデュアルの姿に僕は理解できず、無言で見下ろしていた







「ディオス様」




何も言わない僕に、困惑の色が広がり始めた頃

ふと名前を呼ばれて見ると、幼馴染のイリス・イスカトールがいた




「イリス」



「入学式が始まってしまいますよ、早く行きましょう」



「あ、あぁ、そうか。じゃあ行こう」




未だ混乱していた僕は、デュアルを放置してイリスに着いていくしかなかった






***





「ディオス様、あそこまでする必要がありましたか?」



校舎に向かう途中、イリスに言われた言葉に疑問を抱きながら返す



「いや...魔王の生まれ変わりだと言っていたから、確かめてみたかったんだけど...違ったのかな」



完全にテンプレ通りに進んでいたのに...と落ち込む僕に、イリスはため息を吐く



「ディオス様が自称魔王に対して厳しいのはわかりますが...そこまでしなくてもディオス様が魔王様であったことは変わりません。自称魔王なんて掃いて捨てるほどいるのですから、放っておいた方がいいですよ」



そういや、イリスは昔から僕の自称魔王ごっこに乗り気だったんだよな

「私は魔王様の秘書の生まれ変わりですから、ディオス様の秘書になります!」って言った時は笑っちゃったっけ


まぁ、1人で頑張るより味方がいた方が嬉しいのは事実だから特にやめさせたりはしてないけど




「そんなこと言わないでよ、僕は魔王の生まれ変わりがいるなら是非会ってみたいだけなんだからさ」



「ディオス様...そう、おっしゃるのであれば...」




渋々返事をするイリスに、クスッと笑う




「イリス、昔からずっと一緒にいてくれてありがとう」



僕の言葉にイリスは花が咲いたように笑う



「ディオス様、それはこちらのセリフです」












今回は本物の魔王の生まれ変わりじゃなかったけど、学園にいる間に必ず会えるはずだ



だからきっとその時まで、僕は頑張ろうと思う











だって本物の魔王に会うのは、前世からの夢だからね!!








***




数千年前、魔王と呼ばれる人がいた



全ての国を統一し、その頂点に立った唯一の王である



しかし表舞台に出ることは一切なく、どんな人物であったのかも国民は知らなかっただろう



いや、きっと直属の臣下でさえも知らなかったに違いない













「魔王様、ノーステリアで反乱の兆候が見られますがいかが致しますか」



「任せる。必要なら潰すことも構わない」



「御意」



「魔王様、サウステリアに拉致されたとの被害報告が今年に入って増え続けています」



「領主を呼べ。会談はお前に任せる」



「御意」





ふぅ、と臣下がいなくなった部屋でため息を吐く



無駄に豪華な部屋でひたすら報告を聞くだけの生活


僕がやりたかったのはこんなことだったっけなぁ、と考える





確かに僕は魔王に憧れた


そうしてこんなに人を集め、魔王として振る舞い始めた




でもこんな...こんな...





本格的な魔王ごっこを望んでたわけじゃない!



みんなすごい乗り気になっちゃうし!



まるで本当の魔王になったような気分になっちゃうじゃん!!









もう疲れちゃったしなぁ...






そうだ!転生しよう!






「おい」


「はい、魔王様」




声をかけた瞬間にどこからともなく人が現れる




「転生する、準備を」


「転生...ですか」


困惑したような彼女に、訝しげに尋ねる


「何か問題でも?」


「いえ、ちなみに私も同行してよろしいのでしょうか?」


一緒に転生?まぁ、転生した後も魔王ごっこをするわけではないし、それに味方はいた方がいいか



「うん?まぁ、好きにすればいい」


「ありがたき幸せ。それでは準備をしてきます」




(本物の魔王にはなれなかったけど、転生したら魔王に会えるかもしれないし。楽しみだな)









臣下は知らなかっただろう、国を統一していることを魔王自身は知らなかったという事実を。




そして転生後、魔王がいたという話を聞いて「会ってみたい!」と見当違いな夢を抱いて学園に入学することを。







これは、存在しない魔王の生まれ変わりに会いたい、本物の魔王の生まれ変わりが

当時の臣下の生まれ変わりと再び世界を征服するまでのお話である

イリスは魔王時代の秘書で、転生の準備してた人です

ユリウスは魔王時代の友人で、「生まれ変わりとかw」って言ってるのは、モブとして本物釣ろうとしてるのを知ってるからですね

デュアルは魔王時代の臣下の1人ですが、だいぶ下っ端でしたのでディオスのことは知りません



満点超えの1位を取ったのはディオス、デュアルはダントツの最下位でした。喧嘩ふっかけた時はまだ順位を見てなかったので


何で魔王の生まれ変わりが今年入学すると確信しているかというと


「イリス...魔王の生まれ変わりって、いるとしたらいつ学園に入学するかな?」

「(ディオス様が2年後だから...)2年後ですね」

「マジか!僕と一緒じゃないか!(イリスがそう言うなら絶対そうなんだろうな!楽しみ!)」


という、信頼とすれ違いによる成果です



ちなみにディオス、イリス、ユリウスは貴族です

爵位は大体同じぐらい


名前と名字の最初の文字がみんな同じにしてあるのは私が覚えやすいからですね(名前覚えるの苦手)

デュアルは数ある自称魔王の1人ということで、ディオスに近い名前にしてあります




読んでいただきありがとうございました。

連載の挫折が多いので、今後は短編を投稿しようかな?と考えていますがどうですかね...

拙い文章ですが、いろんな作品を読んで学んでいきたいと思っていますので、温かく見守っていただければ幸いです

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