【#2 気づき】
暑いですね
気がつくと俺の目の前には銀髪の美少女がいた。
声もめっちゃ可愛いしーーー。
「立てますか?」
そう言いながら美少女は手を差し伸べてくれた。
そう言われて自分が横たわっていることに気づく。もしかして意識失ってた?
「……ぃゃ、はぃ」
あまりにも可愛すぎて言葉が出ない。
「……立てます?」
美少女は顔を近づける。自分の顔との距離が10センチも無い。やばい!自分の顔が怖いからと言ってこの18年間、女子が近づいてくれた事もないし、ましてや話しかけてくれたこともないし、しかも、美少女と話しているし、それに加え美少女の顔が目の前にあるなんて……!
「立てませんか……?もしかしてお熱が…?」
美少女は白く細い手で綺麗な銀色の前髪をかきあげてーーー。
ピトッ
アレ?オデコガアッタカイ……?
美少女のおでこと自分のおでこがくっついていることに気づく…………!!!
「ドッヒャァァァ!?」
思わず後ずさる。
「キャ!びっくりしたー…。良かった、動けるんですね!」
「ぇ、ぁあはい!!あ、あ、あの…ここ、どこです?」
自分の口調がさっきの財布を落としたひ弱そうな男の口調になっていることに気づき、恥ずかしくなる。
「ぁ、私の家です。あなたが私の家の前で倒れていたので私のベットまで運んで様子を見ていたのですが……ごめんなさい、いけませんでしたか?」
「え、え、いや!全然!全然いけなくないです!めちゃくちゃありがたいです!あぁ、ありがたいなら、いもむしゃくじらってね!へへ……!!!」
いや、俺何言ってんだ。
そもそも家の前でヤンキー倒れてるの見たらスルーか、もしくは救急車でしょ、自分のベットまで運んで看病って!!!めっちゃ嬉しいけど!!!
「ぁ、あの救急車は呼ばれなかったんですか?」
少し間が空き、美少女は答えた。
「キューキューシャ??」
ナニソレオイシイノ?的なノリで答える。
「救急車ですよ、あの白い車体に赤いランプを付けてる、車ですよ」
「ク、クルマ?」
初めて車と言った時のような発音。
「失礼ですけど、え、ぁの小学校には行かれたんですか?」
幼稚園児でも既存だと思うけどな。
「ショーガッコー?」
ああ、ここって義務教育の国、日本だよな。
てか日本語バリバリ話してるから当たり前だけど日本か。美少女ともっと話したいけどココがどこか聞いて帰るか……。
「すみません…ここの住所、なんですか?」
美少女が固まる。いけない、急に住所を聞いたのがいけなかったか…!!
「ジュ、ジューショ?」
あぁ、うん。大丈夫かな?からかってるだけ?
「場所の…なんか、ぁ場所の名前です」
「ば、場所の名前…アガス街 #263ですけど…」
え?なんて?
「あ、アガスマチ?しゃーぷにいろくさん?」
日本だよね?アガスマチ?阿賀州町 舎亜布2-63?
「ぇっと、ライトフォール地区アガス街 #263です」
ら、らいとふぉーる?ダメだ。漢字に変換できない。
ごめんなさい、からかってます?と、言おうと思ったその時、
ドゴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛オオオオオン!
地面が揺れる。
部屋の窓からとてつもなく大きな眼がこちらを睨んでいる。
「ぇ、あ、あれは?」
「ハァ、またブロークンドラゴンね…」
厨二病なのかしら?その疑問はすぐに破れた。
バリィィィン!
ガラスが割れ、とてつもない大きさの赤黒い爪がこっちに……!!!
「ウワァァァァ!!!!」
なにこれ夢?夢なら覚めろ!!
「ロールタイムッ!!!!!!」
美少女の可愛い声ーーー。
その刹那、赤黒い爪が戻っていく。
そして窓ガラスの破片が中に浮かび段々と窓ガラスの枠にはまっていく。
まるで時間が戻るようにーーー。
「え?」
おれは驚きながらも何かに気づいた。
銀髪の美少女、ライトフォール地区アガス街 #263、ドラゴンや魔法……。
あぁ、ここ、異世界だわ。
【つづく…】