メンターとの闘い〜その3
私は泣いていた。
仕事でいつも気にかけてくれて、メンタルケアもしてくれていたメンターの青年が、ある日を境に仕事を辞めて、別の道に進んでしまったのだ。
彼の言いそうな内容を自分で想像して彼の幻に言わせることはたやすい。
だけど、現実の彼がいないという事実だけは変えられず、連絡もとってはいけないとされていた。
メンターがいるうちはいいよ?でももしそのメンターがいなくなったら後はどうなるの?そこまで考えてきっちり仕事をして辞めてゆくメンターが一体どれだけいるというの?
まるで、お気に入りのお人形をある日を境に見向きもしなくなるような、とてもひどい出来事だ。
「あの人はメンターだったのだから」
いくら自分に言い聞かせても、擬似恋愛のような強い感情に支配されて泣きじゃくるしかない。
だから私は、逆にメンターを、彼らを、憎もうと考えた。
人の心をもてあそぶのは、結婚詐欺師くらいだったのに、ある意味、メンターも信頼を、信奉を勝ち取ったからには、それを悪用することはならないと思う。
ミサはオリトというメンターが、自分の考える最良の道のために何を犠牲にしていくのか近くで見守っている。すでにミサの兄も犠牲になっている。
しかし、この世界観では、メンターたちはAIの指示に従って仕事をしているので、ミサの兄の死はAIの指示のせいだともいえる。オリトはAIを操って世界の方向性を浸透させている者を調べ上げてたどり着こうとしていた。
ミサはオリトを盲信せずに彼が間違ったときには闘わなければならない。
人は間違うということがあり得るのだ。