プロローグ ふとした独り言
今日から第三部開始です。今後ともよろしくお願いいたします。
時々ふと考えるときがある。
俺はどうしてこの世界に呼ばれたのだろう?
女神は「俺に力があるから」だと言っていた。鬼を倒すための力を与えられる器だから、と。確かに俺には力があった。この世界でも、そして、この世界に来る前にも。「バケモノ」なんて呼ばれていた俺は、この世界では本物のバケモノである鬼退治をしようとしている。
俺の力が世界のためになっているのならば、うれしい限りだ。
でも、いったいどうして、俺にはそんな力があったのだろう? 人間たちから恐れられ、バケモノと呼ばれてしまうような人間離れした力をいったいどこで手に入れたのだろう。
女神は何も答えてくれない。俺を転生させてはいたけれど、やはり死ぬまでは俺の存在には気づかなかったのだろうか。
それとも、もしかしてこの力すらも何か女神の意志があったのだろうか。
……考えてみてもわからないことだらけだ。
手を何度か握ってみて、自分の中に宿っている力を確認してみる。俺の中には確かに今まで持っていなかった確かな力が宿っている。前の力で人間たちから恐れられていたこの力で、今度は鬼を殺そうとしている。
こんな考えでいいのかわからない。でも、こんなことを考えられるのも一瞬なんだ。
俺の頭は、鬼のことを考えるとすぐに熱くなる。頭がぼおっとして、鬼に対する怒りがこみあげてくる。この怒りがどこからやって来るのかわからない。もしかしたら、力を手に入れたのと同時に手に入れていたのかもしれない。
まあ、鬼は人達を苦しめているのだから怒りがこみあげてくるのも別にいいことだとは思う。
俺は鬼を退治するためにこの世界に転生させられてきた。それだけは間違いない事実だ。どれだけ逃げようとしてもその事実は、体全身に沁みついて、常に俺に告知をしてくる。「鬼を殺せ」という声と共に……。
別にこの世界が嫌いなわけじゃあない。この世界に来たことで俺はモモに出会えた。おじいさんやおばあさん、他にも素敵な人たちにたくさん出会えた。鬼退治という使命の中で生きる目的も見つけることができた。
ただ、少し怖くなるんだ。俺はほんとうにこのまま使命に任せて鬼退治をしていいのだろうか?
鬼退治自体が大きな正義に感じられてしまう分、たまにこわくなる。
まあ、だから何かが変わるということではないのだがな。俺はこの世界でモモと出会い新しい一歩を踏み出してしまった。今更振り返ることはできない。
俺に出来ることはただ自分の使命に任せて鬼退治に行くことだけだ。……きっとそれでいいんだ。




