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24話 鬼退治のためにってことよ

 そんなことをしているあいだに、目の前の再び川が現れた。

 さっきとは違う二本目の川だ。


 どこかの本流から別れてきているのだろうか、同じような水の音がした。川は夜の闇だけを水面に映していた。


 俺たちは川を渡った。俺も今度は特に意識することなくを飛び越えた。今日手に入れたような力ではあるが、ようやくその力加減も調整できるようになっていた。俺は女神と同じような位置に着地した。


「ようやく力にも慣れてきたみたいね」と女神は言った。「もっと実用的に使えるようにもしていかないとね」

「今でもしっかり実用的じゃないか」

 女神は首を横に振った。

「鬼退治のためにってことよ」


 俺は手を何度か握ってみる。力がこもる。さっき男を殴った時はあまり力を調整できなかった。それでも男にとっては致命的なダメージになっていなかったようだ。あの時は頭に血が上っていたからそこを気にする余裕はなかったが、今更になって気になって来た。あの時は俺の力がまだそこまで出せていなかったのか? それとも男が俺のこぶしに耐えうるほど頑丈だったのだろうか?


 しかしそれは今考えても解決できるわけがない。俺は疑問を振り払って、川の周りの風景を見渡してみた。川を越えてみると、あたりの雰囲気は少し変わっていた。生い茂っていた木々がより生えている。森の中には光があまり入ってこなくなっていた。道は一本道になっていて俺たちをこの先にある洞窟へと誘っていた。この先に洞窟がある、先は見えなくてもそう思わされる吸引力がそこにはあった。


 俺たちはその力に吸い寄せられるように歩いていく。この先には男が準備しているなにかがある。それが何なのか分からないがそれを乗り越えなければモモを取り返すことはできない。まっすぐ前を見つめて歩き続ける。


「何が待っていると思う?」と俺は女神に聞いてみる。

 女神は腕を組みながら考えている。

「まあ、『首を持ってこい」なんて言ってたし、本当になにか住んでるんじゃないの?」

 それから俺の方を見上げて続ける。

「あんたがその猛獣とやらの首を持って帰るのか、はたまた、その猛獣があんたの首を持って帰るのか。戦いが始まるということね」


 女神はやけに気軽そうに言う。俺は乾いたつばを飲み込んだ。戦いが始まる。鬼退治ということがどういうことなのか、ここにきてようやくそれが遊びではないのだということが真剣にわかって来た。


「まあ、私も付いているし大丈夫よっ」


 女神は俺の背中をたたいた。その手にはあいかわらず体温というものがない。ただ叩かれている感触があるだけだ。でも、いまはそんなものでも力がもらえるような気がした。


 闇の終わりが見えてきた。木々を抜けると、光の差し込む広場が目の前に広がった。

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