シャボン
花はいつ死ぬんだろう
花瓶に活けられてから幾日か
まだ美しいまま咲き誇る
声を失った身体に
言葉は溢れ、消えゆく
あなたの言葉だけが留まる
閉ざされた本
あなたの横顔
夕日が頬を伝う
遠い記憶に耳を澄ませても
あなたの歌は聞こえない
変化を受け入れてなんて言わない
僕は
あなたの変化を受け止められなかったから
泡は弾ける
夏の終わりに
まだ遊び足りない子供たち
いつかこの日を
あの子たちは覚えていられるだろうか
蝉の鳴き声と忘れ去られた麦わら帽子
本を抱えた
過去への執着を伴って
枯れた向日葵を背に駆け出す
真白の花があなたには似合う
伝えたい言葉は沢山あるだろう
散らばった紙には文字の羅列
それでも
あなたが選んだのは
「おかえり」という簡素なもの
何度でも
「ただいま」と言うから
まだ、
咲かないで
と、願うのは
やはり身勝手なのだろうか