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12.運動会やる?(新)


 誕生日


 ベルグリッドの街にロイドは戻って来ていた。


 十歳の誕生日を祝うパーティーの為だ。

 貴族は無事に十歳を迎えた子供を社交デビューさせる。

 

 元も子もない言い方をすれば「うちの子どうですか?」と、婚約者の募集を掛けるのだ。


 ただし、ロイドはすでに社交界で有名で、婚約者を見繕うためでもない。


「これから先、支え合うのは友人や仲間、家族だ。自分がどれだけ多くの方のおかげで年齢を重ねることができたのか、それをしっかり認識しなさい。そして感謝することを忘れずにね」


 ヒースクリフの言葉に、初めは面倒だと思っていたロイドも納得した。


「あれから五年か……」


 目まぐるしく色々なことがあった。

 その記憶に思いをはせていると、声を掛けられた。


「あの〜すいやせん、ロイド様。ちょっとよろしいですかい?」

「あ〜い〜」


 ロイドは突っ伏した机から起き上がった。


「あれ? 定食は?」

「今、魚を焼いてまして……」


 街の食堂に昼飯を食べに来ていた。

 意外にバレない。


「あれ誰だ? いい身なりのガキだな」

「ばかだね、ロイド様だよ!」

「こんなところで普通に飯食うのか」


「こんなところで悪かったな!!」


 店主は客を黙らして、ロイドの向かいの席に座った。


「ちょいと、ロイド様を次期領主様と見込んでご相談がございやして」

「はは、次期かはわからないですが、なんですか? というか定食は?」

「実はうちのせがれも今十歳なんですが、名前がロイドなんです」

「ほう! まぁ、よくある名前だから」

「ええ、でもせがれは天命だと思っちまったらしくて」

「何が?」

「『大貴族と渡り合う正義の少年騎士、陰謀潰しのバリリス侯のように、自分も立身出世する!! だから店の手伝いなんかしねぇ! 店は継がねぇ!!』と、こういうわけなんですわ」

「はは、まぁ十歳ってそんなもんですよ」


(((あんたも十歳だろうが!!)))


 食堂の親父と客たちは心の中でツッコんだ。


「それで相談というのは?」

「実は、これがうちのせがれだけの話なら言うこと聞かせてやるんですが……他所の子もいるようで」

「そういえば、北通りの酒屋が同じようなこと言ってたよ」

「ああ、中央通りのバナックさんも」

「最近多いよな、冒険者や騎士のマネして街の外に抜け出そうとする子」

「怪我して帰ってくる子もいるらしいぞ」


 思いのほか相談は重大なことだった。


「それでご相談というのが……」

「わかりました」



 ロイドは子供たちが危険なことをする前に止めに向かった。




「冒険者になるには15歳以上じゃないといけないから……」


 少年たちのリーダーはそう弁解した。


 街の外れにある農地の一画。雑木林にけっこうな子供たちが集まり、修行と称して木の棒で剣術ごっこをしていた。

 はじめロイドが本物のロイド侯だと気が付かず、入団試験だと称して飛び掛かり見事返り討ちに遭いようやく本物だと気が付いた。


「でも、君たちは家の仕事を手伝わないと。跡を継がないわけにはいかないだろ?」


「そんなのつまんないよ」

「ロイド様みたいになりたいんだ!」

「そうだ、魔獣と戦って貴族になった方がお金持ちになれるもん」


 10歳ができるなら自分たちにも。

 彼らは現実をまだ知らない。

 しかしロイドには彼らに現実を突きつけて夢を否定する気にはなれなかった。


「みんなは魔獣を見たことある?」


「な、ないです……」

「でも、それは街に住んでるんだから当たり前だし……」

「だから今から修行してるんだ! いざって時に戦えるように!」



(おれが本当の魔獣との戦いを見せれば話が早いんだけど。それだと何か違う気がするな)



「そうだ、ロイド様が戦い方教えてよ!」

「うわ、いいなぁ! ぼくにも教えて!!」

「やった、魔法使えるようになれるぞ!!」


 すでにロイドが教えることになって話が伝わっていく。

 もしかしたらこの中に本当に才能がある子がいて、実家の仕事を継ぐよりも良い選択なのかもしれない。

 誰かが戦う術を教える時間は必要で、自分たちの才能のあるなしを他の子と比べる機会がないのも問題だ。

 だからこんな小さな集団で競い、その中で優劣=才能のありなしと判断してしまっている。



「わかった、戦い方を教えてあげよう。ただし、条件がある」


「なに? なんでもやるよ!」

「まぁ、落ち着いて聞きなよ。もうすぐおれの誕生日パーティーが開かれる。父上が気合を入れて、姫様も来るようなんだ。お祭りもやるって聞いてるだろ?」

「お祭りでうちは屋台やるよ!」

「王女様がこの街に!?」

「いいな〜、王女様かわいいんだろうな〜」


 子どもたちは大いに盛り上がった。


「おれは皆が楽しめる祭りにしようと思う。皆に参加できるお祭りに」

「参加できるお祭り?」


「うん。その余りあるエネルギーと情熱で競い合って優勝を決めるんだ。優勝した人にはおれが戦い方を教えてあげるよ」



 ロイドの提案に全員が賛成した。







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