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3.職場復帰(新)



 銀河たちによる乱獲と魔獣の被害が王権への批判も高めたため、平民に人気のロイドの王都復帰が早まった。


「すごいよな、元平民なのに貴族の悪さをどんどん明るみにしていってさ」


 騎士見習の少年たちが鎧を磨きながら、自分もいつかと夢を膨らませる。


「まだ8歳だって。おれたちより年下だよ」

「ぼくなんて13歳だけど絶対無理だよ。銀河隊に歯向かったら家が心配だし」

「いいよな、しかも紅燈隊だぜ? すごい美人の大貴族の令嬢たちに囲まれてさ」


 夢のようなシチュエーションが空想を掻き立て会話を盛り上げた。




「あの、馬の餌やり終わったんですけど次はブラシ掛けですかね?」


「次は馬小屋の掃除だよ。早く済ませないと騎士たちが来ちゃうぞ」

「すいません……」

「あーっとどこまで話した?」


 少年たちの憧れは紅燈隊の席次。


「マイヤ隊長ってすげぇ強いんだってさ。最近じゃ魔法も使い始めて団長のヴァイス様と互角だってよ」


 強く気高い騎士の鏡。

 おまけに隊長でありながら下級貴族の出で、彼らの希望でもあった。


「おれはオリヴィア副隊長がいいな。小さくてかわいいし」

「もっと小さい人いたよな。確かでかい盾を持った女の子」

「テトラさんか。ああ見えて結構大人だよ」

「やっぱり三席のピアースさんがきれいだよな」

「でも、あの人 ‶色情卿〟ってあだ名なんだぜ。いい男はとっかえひっかえで」


 蠱惑的で背徳的な魅力を持つ騎士もいた。

 彼らの話題は単純に好みの女性へ移った。

 

「あの、掃除終わりました」

「もう? 早いな! 適当にやってないだろうな……うわ、きれいになってる」

「次は何を?」

「馬はもう少し走らせた方がいいからな。こっち来て鎧磨くの手伝えよ」

「はい」


 一番小さいその少年は手際よく鎧を整備し始めた。


「お前は誰がいい?」

「はい?」

「ほら、紅燈隊の好みだよ」

「ああ〜一番まともなのはメイジーだね。仕事するし」

「さ、さんをつけろよ」

「あの人もきれいだよな。凛としてて。でもちょっと怖そうだよ」


 涼し気な目元の若い騎士だが紅燈隊の事務関係の中心。

 紅燈隊の頭脳、参謀。

 

「融通が利かない石頭ですけどね」

「なんでそんなこと知っているだ?」




「――私が何ですって?」


「うああ!!」


 少年たちは立ち上がり姿勢を正した。


 そこには涼し気な目元の金髪と、目を半月状にして笑う黒髪が立っていた。


「メイジーさん、ピアースさん……」


 少年たちは緊張とばつの悪さで玉の汗をかく。

 しかし、彼女たちの目線は座ったままの少年。


 視線に気が付いて少年は立ち上がった。


 メイジーが目線を合わせる。


「何か言うことがあるんじゃなくて?」

「石頭は言い過ぎました。冗談が通じない優等生ってことで」

「……は?」

「うふふふ、おもしろいわ。メイジー、これをどう否定するの? 否定したら冗談が通じないと認めることになるわね。うふふ」

「笑わないで下さい。そんなことどうでも良いのです!!」


 メイジーは少年の腕を掴み無理やり連行した。



 他の少年たちは話を振った手前、自責の念に捕らわれる。



「メイジー、そんなくっつかないで下さい。彼らに誤解されますよ」

「どうでも良いですから、そのようなこと」

「うふふ、ごめんなさいね。彼女、年下好きなのよ」

「あえて誤解させないで下さい!」


 この時、少年らは同じ小姓が無礼を責められるのだと思っていた。


 それこそ誤解であった。


 彼らは自分たちより小さな少年が連行されていくのをただ茫然と見つめるしかなかった。


「なぁ、ところであいつ誰だ?」

「お前が話してただろ」

「いや、君が話してたから……」





 少年は王宮のとある部屋に連行された。


 そこには王女システィーナと紅燈隊が勢ぞろいしていた。


「王都に戻ってから地味な下働きばかり。どうしてしまったの?」


 姫は泣きそうな顔をしている。


「ひょっとして私のことを避けてるの?」

「いえ、騒ぎを起こさないよう、反省の意味を込めて……」


 王都に戻ったロイドは目立つことを避け、大人しくしていようと決めた。

 純血統派を刺激しないためだ。


「銀河隊のことは気にしないで。ロイドちゃんのことは私が護るから」

「姫様……」


 システィーナは自分より小さい少年の身体を抱き寄せる。


「事務仕事は助かりますが小姓の仕事を盗るのはやめて下さいね」

「あなたにはマイヤ隊長にしたように私たちにも魔法を教えてもらわないと」

「今度合同演習があるのよ」

「姫様を泣かせたら許さないぞ」

「その歳で女性を泣かせるなんて罪な男ね」


「――黙れテトラ」

「なんで私にだけ反論すんのさ!」



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