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2.保護活動


 ベルグリッド、ギブソニアン邸へ銀河隊がやって来た。


 公務という名の、狩り(遊び)のため。

 だがあえてギブシニアン邸に来たのは嫌がらせのため。


「公務のため、この屋敷を借り受けるが良いな!?」

 

 王弟ジェレミア公爵の近衛騎士。

 その中にはもちろん、姫にフラれたダグもいた。


「素晴らしい蔵書だ。これは姫からか?」

「はい? よくわかりましたね」


(やはり! 成り上がりの元平民ごときが!)


 ダグはロイドの近くにいるヴィオラに目を付けた。


(ほう、若くて良さそうな娘だ。今晩、身も心もおれのものにしてくれよう。戸惑い嘆くがいい、ロイド!)



「ひぃ、ロロロロイド様、なんだかずっと見られている気が……」

「大丈夫だ」

 


 ロイドには高貴な格好をした野蛮人を接待する気など無く……


 

 酒に良く眠れるおクスリを盛った。



 翌朝、騎士たちは全員広間で酔いつぶれていた。


 

「ッう!! おい、薬を持って来い…… 二日酔いで馬になぞ乗れるか」


 騎士たちは不機嫌だったが、悪酔いの頭痛と吐き気で元気はない。


(おっと……あの薬は酒と飲み合わせが悪いものだったか。ざまぁ!!)


「引き返すか? この体調で魔獣狩りは……」

「馬鹿者、我々が公務を放棄すればジェレミア様の顔に泥を塗ることになるんだぞ」


 ゆっくり進むために、騎士たちは早めに屋敷を出て行った。


「ロイド様、何をしているんですか?」

「塩を撒いている。清めの塩じゃ」

「はぁ、高いのでやめてください」



 しかし、これは嵐の始まりでしかなかった。

 銀河隊は魔獣を討伐し遠征を終了した。



 結果、ベルグリッドより南では魔獣による被害が拡大したのである。




 原因は不要な討伐だった。

 

「何してんの、もうぉ〜!!」


 と、一狩り。


 魔獣の中には人を襲わない種類もいる。その魔獣が他の魔獣を牽制し、人と共存することもある。

 そのバランスを銀河隊は崩してしまった。


「仕事増やすなよぉ〜」


 と、一狩り。


 ダムの決壊のように、せき止められていた魔獣の流れが北上して拡大。

 当然ロイドも魔獣討伐に参加したが焼け石に水。


「働かないって決めたのに。らちが明かん」


 人手が足らなかった。

 それでも、確実に街の近くまでやって来た魔獣はロイドが葬った。


「おお、ロイド様が居なかったら、この街どうなってたんだ?」

「すげぇ、まだケガ人もでてねぇってよ」

「いや、南の村で冒険者と村人がやられたらしい……」



 時間が経つほど事態は深刻になっていく。



「銀河隊が追い出した魔獣を元の住処に戻すしかねぇ」



 そう提案したのはタンク。

 幸いにも極銀級であるタンク、金級リトナリアが揃い、生態系改善に向けて動き出していた。


「でも、魔獣が人の言う通りに動くのかな? どこにいるのかもわからないし」

「居場所には目星が付いているし、マスもいます」


 狩人のマスは追跡の達人でもある。


「そうですか、ではお願いします」

「何を言っているの? あなたも来なさい」


 リトナリアに連行されるロイド。


「あれ? なんで? ぼく~上から大人しくしてるよう言われたんですけど~」

「貴族なら役目を全うしなさい」

「あはは、姐さんはロイド君と任務したいだけっしょ」

「ロイドがいた方が隊のバランスがいいからよ」


 もし真っ向から討伐するならベルグリッドから全戦力を投入することになる。

 それをたった四人で解決しようというのだからロイドも断れない。



 

 一方、原因を作った銀河隊は証拠隠滅を目論む。

 魔獣の増加が自分たちの愚行の結果であると証明されてはならない。


「むっ!! 冒険者とロイドが南部へ向かっただと? 勝手なことを!!」

「追え!!」



 銀河隊はタンクたち一行を追ったが、四人の進行スピードには敵わなかった。



「このクラスの魔獣をたった四人でだと?」

「何ということだ、まるで天災にでもあったかにような量の死体だ……」

「奴ら……止められん……」





 南部の村に四名は到着。


「なにこれ?」

「これがあれだ」

「魔獣の縄張りを決めていた魔獣よ」

「聖獣様だね」


「にゃーん」


「猫じゃん」


 村で匿われていた【聖獣】を住処に返すことに成功し、魔獣の拡大はピタリと止まった。




「ロイド、強くなりましたね。王宮騎士は伊達ではありませんか」

「いや~」

「いや、姐さん! ロイド君は美人だらけの女騎士に囲まれてウハウハな毎日を送っていたんだよ!! そうに決まってるよ!!」

「お前は何を言っている?」

「あ、ロイド、誰か紹介しろよ!! 貸しがあんだろ?」

「子供に女を都合させるなよ……」




 しばらくすると溢れていた魔獣の討伐も進み、被害は沈静化していった。

 ロイドが銀河隊の不手際を正したと、噂が広まった。



「貴様ら、我らに濡れ衣を着せるその企て、不敬であるぞ!!」

「あ、おれらロイドの命令でやったから」

「そうそう」

「命令で〜、仕方なく〜」


 三人が小さな背中に隠れた。


「あん? そういうこと?」


 騎士爵のロイドに同じ騎士爵への不敬罪は成立しない。


「く、ロイド卿〜貴様!!」

「違う違う! え〜!!」


 最前線にいたロイドの報告が銀河隊の処分を左右する。

 彼らはそれを潰す気でいた。

 

 例え力づくでも。


 ロイド他三名も、それには気が付いていた。

 

「ロイド卿、我々の権威を奪わんと画策するは、正当な貴族である我々を敵にするということだが、よもやそれ我々が看過するとは思うまいな?」

「……ぼくは子供なのでよくわかりません。そう報告します」

「ほう、殊勝なことだ」


 銀河隊は満足そうに引き返していった。





「おい、いいのかよ」

「謹慎中って言ったでしょ。それにおれがそう報告するって言っただけだし。原因を特定するのはおれの仕事じゃない」

「ああそういうこと」



 この手柄で王都ではロイドの復帰論が過熱した。


 対する銀河隊は結局ギルドからの訴えで多額の賠償金を請求された。



「リトナリアさん、ひょっとしておれが王都に早く戻れるように手柄を?」

「勘が良い子供はかわいくないぞ」



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