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1.ただいま(新)

第二部 四章後に新たに編集した章になります。(旧間の章から変更)

タイトル(新)は新規書き下ろし、それ以外は元のお話の改稿版です。約四万字ほど削りました。



 王都からベルグリッドへ。

 謹慎のため帰郷したロイドを多くの市民が待ち受けていた。


「きゃー! ロイド様―!!」

「ベルグリッドの星がご帰還だー!!」

「『陰謀潰し』だ!! 本物だ!」

「よっ、市民の味方!! バリリス侯様!!」


 大臣たちの陰謀を明るみにし、市民からの搾取を止めたことでロイドは人気の的となっていた。


「スーパーヒーローみたいだ」

「みたいじゃないですよ。ロイド様の人気は当然です。ほら、手を振って応えて下さい」

「やだよ。おれは、謹慎の身だ。大人しくしてないと。代わりにヴィオラが手を振っておくれ」

「いえ、私じゃ意味ないですから」

「こ〜んなカワイイ娘が手を振って喜ばない奴は、おれがぶっ飛ばしてやる」

「おとなしくしているのでは!?」



 ここまでの約2年、ロイドは多くを成した反面、目立った。

 目立ち過ぎた。

 今回の大規模摘発の要因を作ったことを、ロイドは心底反省し、しばらくは本気でおとなしくしていることにした。


「でも、ロイド様のことだから、またバっカ〜ンってやっちゃうんですよね?」

「いいや、おれはこれから屋敷に引き籠る。何もしない。働からない。働いたら負けだと思っている」

「怠け者宣言なのに言葉に重みが……でも、お暇になっちゃいますよ? 私と刺繍でもしますか?」

「それもいいが、やることはある」

「ああ……」


 馬車の荷物の半分は本。

 この世界では高価なものだが、ここにはその中でも希少な本が揃っていた。

 システィーナ王女の計らいだ。


「姫様には感謝だ。学院に行けないからあきらめてたんだけど」

「結局お勉強じゃないですか」



 馬車からヴィオラに操られるように手を振らされるロイド。

 

「ねぇ、普通貴族って直接見てはいかんのではないの?」

「皆さん! ロイド様はとってもシャイなのであんまり見ないであげて下さーい!!」

「やめてっ!」






 王都では大規模な人事の刷新が行われている。

 

 不正が明るみに出て降格する者、自ら職を辞する者。

 上の席を狙い仕事に励む者、ライバルを蹴落とす者。

 

 権力者にすり寄り出世を目論む者まで……




「姫様、銀河隊七席、ダグ・ガルーラが拝謁を希望して居ります」



 王宮のシスティーナの部屋。

 銀河隊の騎士がやって来た。

 

 姫はため息をついて進めていた作業を止めた。



「急に来られても会いません。今は忙しいのです。帰っていただきなさい」


 彼女の元には求婚者が度々訪れる。

 まだ十歳の少女を権力闘争の武器として手中に収めようという魂胆だ。



「ええい、下級貴族の分際でこの栄光たる銀河隊である私を引き留めるな!!」



 マイヤの制止を振り切り強引に男が入って来た。


「あらら」

「申し訳ございません姫様」

「いいのです。それで、あなたは?」

「はっ、私はパラノーツ王家に長年御使いして参りましたガルーラ家当主、ダグと申します。姫様に置かれましては本日も――」

「前置きは結構! 今忙しいので、用件だけおっしゃって!」

「はっ、ぜひこちらを姫様に献上したく!!」


 ダグは金で装飾された青い宝玉のネックレスを差し出した。


「まぁ、きれいですわ」


 ダグはつらつらとこれを差し出す口実を宣い、システィーナの関心を惹いた。


「ですが、これはいただけません」

「なぁ! なぜでしょうか?」



「なぜなら、このような高価なものを頂けば、私とあなたの間にあらぬ誤解を生みますでしょう?」




「ジェレミア公近衛騎士、銀河隊の席次七番!! ガルーラ家当主が夫では不足というのですか!!」




 マイヤがダグを無理やり立たせた。


「貴様、私に触れるな!!」

「隊は違いますが私は隊長です。上官へのその態度、団長へ報告しますよ」

「フン、女風情が! その地位が実力かどうか怪しいものだな!!」


 ダグは鼻息を荒くする。

 だがマイヤを見上げ、たじろぐ。


「ぐぅ、貴様……おれを誰だと――」

「騒ぐならお外で剣でも振って来なさい。今は忙しいのです!」


 システィーナは興味ない様子で、従騎士やメイドと積み上げられた本を仕分けている。


「おお、これは気が付きませんでした!! 姫様は勤勉でいらっしゃる。そうか、では次は本を持って来ましょう。貴重な伝記の原本をいくつか所有して居りまして……」

「……それは実用的な本ですか?」

「は、はい! 我がガルーラ家の王家への忠誠を綴った――」

「結構ですわ。実学的な本しか()は読まないですし」

「――は? 彼?」


 マイヤがダグを無理やり退出させた。


「そういうことです。このネックレスは()()()相手にお渡しください」


 ダグは部屋から出された後も、信じられないといった様子で佇んでいた。

 しばらくしてその怒りの矛先は、システィーナの本の送り主へ。


「あいつか……あんな平民が王家に加わるなど、国家の存亡に関わる!!」


 嫉妬と怒りがダグの中で正義に変換され行動に至った。





 銀河隊は魔獣討伐の遠征のためベルグリッドへ向かった。

 



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