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12.山賊1


 試験に合格後、昼食を食べて宿に戻った。

 皆疲れていたし、ロイドにはやることがあった。


 街の露店で女物の香料を買う。

 詰所に行き作戦に参加する者を確認する。


 翌日の早朝。迷宮都市から王立魔導学院の生徒たちを乗せた馬車が出発した。


「ねぇ、ロイド君は先頭に乗ってるのかな。こっちに来ればいいのに」


 カミーユはロイドが違う馬車に乗って残念がる。 

 

「警戒してるんじゃないか? なんか捕まえた犯罪者の護送にたくさん護衛が付いたけど、行きで遭遇した魔獣のこともあるし」


「物々しいですな」

「答え合わせ、まだ」

「ああそうだね。ロイド君が僕らに絡んだ冒険者たちを捕まえた方法を答え合わせする予定だったよね。ジーナはわかったのかい?」


 ロイドが拘束したその冒険者たち。


 まさに彼らの後続車に乗っているが皆そのことを知らない。


「革鎧、濡れて乾くと縮んで固まる」


「ああ、なるほど!……ってそれ複合魔法ということか!」


 クリスは内心『単純なって言ってたじゃん! どこがだよ!』と突っ込んでいた。


 火属性魔法の『着火』と水属性魔法の『成水』の組み合わせ。


 ロイドオリジナルの複合魔法『鎧潰し』。

 

 鎧の革部分、アジャスター用のベルトをピンポイントで狙うことで鎧を固定して身動きを封じる。固まった革はカチカチに堅くなる。全身革鎧なら防具が拘束具になる。


 ロイドは無詠唱かつ三人同時に気づかれず微調整して発動させたが、全く簡単な魔法ではない。


「ロイド君が簡単て言うから考えこんじゃったわよ。分かるわけないよね?」

「でもよくジーナはわかったな」

「ロイドの簡単、私たち、難しい」

「そうですな。昨日も宿の廊下で見かけたら廊下の塵を集めて固めて集めて固めてを繰り返していましたな。あまりに自然なので最初ロイド君がやっているとは気づかなかったです」


 気づいてないことは実は他にもあった。

 彼らが先頭に乗っていると思っているロイドは、実はどの馬車にも乗っていなかった。


 ロイドはまだ迷宮都市の入り口にいた。



 当初の計画では、山賊を罠にはめて一網打尽にするため、山賊が襲う目印を付けた馬車に兵を乗せ、おびき出して捉える作戦だった。その馬車を先行させ、安全が確保できてから学生たちの乗る馬車を出す予定だった。

 しかし直前になってロイドがその順番を逆にした。


 囮馬車(ロイド・衛兵)→学生馬車(学生・捕縛者)のはずが、学生馬車→囮馬車に。


 急な計画変更に戸惑う駐屯騎士の兵たち。さすがに説明を求めた。これが七歳の子供の気まぐれなら大変なことになりかねない。王都の学院に通う学生を危険にさらしているのだ。その責任は重い。しかし、納得のいく説明はされなかった。これについて兵たちは作戦をもとに戻すよう進言したが、ロイドは突っぱねた。


「行きたくなければ来なくてもいいですよ?」


 その言葉に反論する者はいなくなった。


「そろそろ、山賊が出る地点は通過している頃でしょう。我々も行きますか」


「今からですか? それでは夜までに次の街に着きませんが……」


「いいんです。さぁ、行きましょう」


 兵を何人か乗せた馬車にロイドも乗り込み、出発。馬車には見逃す用の印が付いている。つまりロイドの乗る囮のはずの馬車に、襲撃を誘導する印がないのだ。


「まさか、ロイド卿、学生たちをおとりにして……」


 兵たちがまじまじとロイドを非難の眼で見るがロイドは気にした様子も無い。そのまま馬車は平原から森、そして山道へと入っていった。


 


 ロイドたちが山道に入ったころ、先を行く学生を乗せた馬車、それを守護する騎馬、後続の護送車は山賊が出没するポイントに差し掛かっていた。

 左手に山があり、うっそうとした木々は姿を隠すのに都合が良い。右手は切り立ったがけ。専用の装備なしでは降りられない。山賊は山側から攻めればすぐに囲むことができる。

 そこを、()()()()()()馬車が通っていく。


 本来囮役の馬車に付けられるはずの、襲撃を誘導する印だ。

 

 だが、山賊は現れなかった。

 今回に限り、山賊たちは目印ではなく、2回目に通る馬車を襲撃するよう言われていたからだ。しかし、ロイドが直前で急に順番を逆にし、学生と護送を先に行かせたため、そのまま通過できた。

 もちろんこれは単なる気まぐれではなくロイドの作戦である。



(衛兵にもスパイがいる)



 ロイドにはその確信があった。それも、山賊のことを初めて知った時にそう結論付けていた。



 冒険者に得られる情報は限られる。

 また、街道の安全の確保は駐屯兵の役回りなのだから、当然山賊が出れば街からも派兵される。

 この兵の中に手引きをしている者がいなければ冒険者とだけ通じても計画は回らない。

 

 襲われた馬車に目印があれば兵の誰かが気づいて報告するはずだ。山賊が何を基準に襲いやすい馬車を選別しているのか考えないはずが無いからだ。それが気づかれることなくこれまでうまくやってこられたのはもみ消し役がいるからだ。それも事件後に馬車を調べられる衛兵の中に、証拠を隠滅している者がいる。

 

 そこでロイドは大規模な作戦を急遽断行すると伝え、衛兵を集めさせた。

 そして当日になって、作戦変更。


 結果はこの通りである。



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