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20.神秘


 ええ~今回は、一つの謎解きに挑戦してみましょう。


 ある一人の少年がいました。彼は貧しい生まれながらも魔法の才で、領主の養子となり、その才能を開花させました。たったの六歳で王女システィーナの護衛騎士となったのです。


 ええ~、そんな彼はなぜか身体の中に、神殿にしかない神気という力を有していました。


 不思議ですね~。


 ほ~んとに不思議。なぜ、おれにだけそんな力が?

 演繹的思考法によって、一つの真実にたどり着いた。


「……あれか。寄付!!」


 子爵になってすぐに神殿の孤児院に寄付した。

 結構な大金だ。



 真実は一つ!

 確かめる方法も一つ。


 その前に皆が大好きなお金の話をしよう。


 おれはこれまでもベルグリッド伯ギブソニアン家の養子だったし、子爵だった。でも仕事を与えられていたわけでもないし、領地があったわけでもない。働いてない。


 でも、これからは給料が発生する。


 システィーナ王女の護衛をする王宮騎士という立派な仕事を得たのでかなりの額がおれの口座に振り込まれる。特に最初は準備金という名目で王宮からまとまった金をちょうだいした。ざっと金貨二百枚分。日本円にして……ちょっとわからないが、多分一千万ぐらい?


 この金で魔法の本を爆買いするとか、いい剣を買うとか、奴隷の美少女を買うとか、家を建てるとかいう選択肢もあるにはあった。家は無理かー。


 だがそれよりもこの目の前にある謎を解くために費やそうと思う!!





――結果から言って、寄付をしても何も変わらなかった。


 神の力は課金制ではありませんでした。うん、知ってた。

 寄付をしている人は他にもいるから、額の問題だと思ったが、それも違った。


 仕方ないので、地道に神気や神聖級魔法についておれは神殿で学ぶことにした。


 神気は神殿にいると自然とおれにチャージされた。でもこれはおれだけだ。

 神聖級魔法は謎多き秘術。他の神官や聖騎士は様々な書物を読んで、修行し、詠唱を行う。この魔法は魔法と言うより奇跡に近い。発動に明確な原理などは無い。


 長い期間を掛けて神に祈り、善行を積みかさねることが発動の近道と言われた。




 その直後に、おれは神聖級奥義とされる『神域』『霊薬』『神装』を使えた。


 ちょっと気まずい感じになった。



 増々謎が増えてしまった。

 正直この時には、飽きてきてそんなことどうでも良くなっていたけどおれは神や信仰についてもう少し深く学ぶことにした。

 基本的な十二神の役割とかはどうでも良かった。



「神が存在するとどう証明するのでしょうか?」


「神が存在するのならなぜ人は不平等なのでしょうか?」


「なぜ救われる者と救われない者がいるのですしょうか? 私の寄付が何に使われているか内訳を出してもらっていいですか?」



 子供教室で質問してたら追い出されてしまった。


 けっ、神なんて本当に居るのかい?


 悪態を付いてみたが影響はなし。


 もういいや、神がいるなら直接聞いてみようと思い『神域』を発動させた。あんまり深く考えなかった。本当に神が降臨するとも思っていなかった。


 だが、光に包まれて人が現れた。割とすぐに。

 優しさと美しさが人の姿になったような女神。


「あ、あなたは…‥まさか……!!!」


 彼女は深緑の瞳で優しくおれに話しかけた。


「ロイド君、再び会えましたね」


 三歳の時、出会ったお姉さんだった。


 彼女の予言通り、おれは再び彼女と出会うことができた。


 あれれ~おっかしいぞー?

 どうして神様が現れるはずの結界の中にこのお姉さんがいるんだろー?

 考えるまでも無い。答えは明らかだ。


 なぜ彼女がおれの元に現れたのか、おれにだけ自在に神気が扱える理由。名探偵でなくてもわかる。彼女は女神のようなお姉さんではなく、女神なのでした。

 

 どーでもいいですぅー!!! 

 ぶっちゃけ、この時こんなこと考えてませんでした!!


 ああ、すごい美人だ!!

 また会えたうれしー!!!

 このままあの胸にダイブしたい!! いいよね? 子どもだしいいよね? ダメでもおれの脚はもう止まらない!! 想いの限りを尽くして飛び込もう!! 篤い抱擁でおれを包み込んでくれぇぇ!!


 

 飛び込んだ先から思ったより控え目な感触が返ってきた。


「ふぅ、間に合った」


 聞き覚えのある声。でも女神様のものではない。ワシワシと雑に頭を撫でられた。これも女神さまのお手前ではない。ついでに匂いも嗅いでみた。


「おいおい、何しているだよ?」


 見上げると全然違う人がいた。『神域』は勝手に閉じ、女神様はもういなかった。

 

「あの方の存在は人を狂わすんだ。抱き着いていたら廃人になっていたぞ」


 おれは気まずさからお顔を良く見れないので、どんな顔をされているかわからなかったが、それが誰かは分かっていた。


「……あなたは、システィナ様ですね」

「あからさまにがっかりしないでもらえるかな?」


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