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6.


「皆さん、忙しいところ集まってもらってすまない」


 おれは魔族たちにアンケートを渡した。


「いえ、いいですけどこれはなんでしょう?」

「見ての通りです。皆が求める魔王像を率直に書いて下さい」


 魔王から始めたのは、アルテイシアに追及されるかもしれないと考えたとき、一番困ったからだ。


 人族のガキが魔族の王だなんて、誰も望まない。

 

「私は旦那様が理想です」

「ありがとうマドル。なら魔王としてどこがふさわしいか書いてくれ」

「は〜い」

「みんなも、おれのことは意識せず、性格、能力、容姿、魔王と聞いて描くイメージをできるだけ詳細に頼む」


 先入観を排除するため、匿名にした。

 

 できるだけ多くの魔族にアンケートを配ったからすごい量になった。

 それを一人で精査してまとめる。


【優しくて思いやりがある:臨機応変に戦える:高貴でありながら親しみやすい顔立ち】


 用紙には絵も描いてある。

 これはおれだな。


 ……マドルか。

 

 おれは親しみやすい顔なの? そう……


【野獣のごとき容赦のなさ:猛獣のごとき力と速さ:猛々しく屈強な姿】


 リース。

 ならお前がやれ!



【踏み込むべきではない場所に迷わず踏み込み、敵が頭を垂れるカリスマ性を有し、あらゆる魔導に精通する天才でありながら、まず自分よりも他人のために行動する器の大きさを持つ:如何なる戦況でも優位に戦える万能の魔法、中・近距離で敵を寄せ付けない絶対的防御力、不測の事態でも対処できる機転と応用力、空を飛べる、魔法を消せる等々:角、鎧、翼】


 誰?

 ハードルあげんな。


 えーっとほかには……


【細かいこと言わない人:燃えない人:かっこいい人】

【繊細で美しい言葉遣い:荒くれ者たち大勢を力づくで従えられる腕力:大きく固い角】

【寛容でおおらか:自然を守れる強さ:大きく尊大】

【騒がしくドンパチするだけじゃなく静かに事を終わらせられる:大胆不敵で面白い:バカバカしいくらいかっこいいを追求した格好】

【義理堅く裏切らない:強靭で――】

 

 バラバラだ。

 わかってたが、簡単じゃないな。



 集まったアンケートの内容をまとめ、おれはロイドとは全く異なる、新たな魔王創造へと着手した。


 それには武器庫にいる彼女の協力も不可欠だ。


「ねぇねぇフラウお姉さ〜ん、お願いがあるんですが」

「気持ち悪い」

「例の()()()()できてる?」


 武器庫という名の巨大倉庫内にある工房からメンテナンスルーム、保管庫へと進む。


 どうやら全部完成しているみたいだ。



「……すごいな」

「我ながら、酔狂が過ぎた。だが生涯で間違いなくベスト5だ」


 どれも素晴らしい出来だ。

 あらゆる環境、あらゆる戦況に対応するおもちゃ。


 空中戦闘特化型『ストライカー』

 超重量級近接戦闘型『ビースト』

 魔法殲滅戦特化型『オーディン』

 全環境対応変形型『ドラグーン』

 隠密・拘束特化型『スパイダー』


 いや、思いつきもここまで形にされるとおもちゃは失礼だな。

 

 うん。いつになくフラウが笑顔だ。


「どうだ? 着てみるか?」

「フラウ、これ全部キャンセル」


 うん。


 真顔に戻った。指をぽきぽき鳴らして、腕の運動、肩の柔軟を始めたようだぞ。


 これは殴る準備だ。



 頭上から拳が降り注いだ。


 あたりまえだ。

 この一つの鎧を造るのはその辺の甲冑を造るのとはかかる手間が全然違う。

 彼女の職人としてのプライドを蔑ろにしている。


 だからとりあえずこの一発はけじめとして受けます。


「……あれ?」


 目の前で拳が止まっている?


「私も、お前の()()ならこの5つの鎧は面白いと思った。だけど、これは遊びではないということだな」

「これから必要なのはおれの力を補うものではない。世の中に必要な存在を生み出したい」

「……この五つを魔王の器にするわけか」

「ふふ、話が早い」


 魔族たちの望む魔王。

 

 それを、この五つの鎧を組み合わせることで創造する。


 どんな魔族も理想を重ね合わせ、自分たちの王と認める究極の存在になるため。


 そして、おれが居なくなった後もこの鎧が王の証として継承できるように。


「わかっているか? お前は変化の象徴だった魔王の概念を変えようとしている。魔族を治める者へ。帝国は黙っていないぞ」

「大丈夫。そっちは考えてある」

「上手くいくとは思えないけど」

「まずはやってみるさ。おれには頼りになる仲間がいるからな」

「あっそ」


 フラウは五つの鎧をすさまじい早さで分解し始めた。


 あ、まだ設計図を渡してないんだけど、要らない?

 ねぇ、見るだけ見て。


 ねぇねぇ……そうですか邪魔ですか。ここに置いていくから気が向いたら読んで欲しいな。


 後はお任せして、別の準備を始めよう。

 ちょうどいい、あの鎧もここにあったから着ていこう。


「……なんだ、そんなくたびれた鎧なんか着て……」

「これから行く場所はこの格好の方が効果的なんだ」


 それとジュールからもらった、‶ろくでもない奴リスト~〟!!


「これで、ヒーローになってくるぜ」

「いってらっしゃい」


 


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