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16.始祖直系



 カルオン・ハルに何者なのかを問うたところ、思いのほか簡単に口を開いた。


「そもそも魔族とは――」


 そこから話すんかい!!!


 お前は自己紹介するのに、種の起源から紹介するのか!!

 夜になっちまうよ!!!


 以下要約。ちぃ……本当に話始めたよこいつ。

 ◇まで読み飛ばしていいからね?

 


 全ての魔族のルーツは【始祖魔人】に遡る。

 つまり、マドルもリースも他の魔族も祖先はノワールさんというわけだ(彼女の子孫ってわけじゃないけどね)。

 ここから様々な種族が生まれたわけだが、いわゆる始祖の直系は【魔人族】とされている。

 マドルはノワールさんに遺伝子的に一番近いと言える。


 魔族はそれぞれ種族の特性を持っているが、魔人族の特徴である「完全な人型」、「白い肌」、「やや尖った耳」、「紅い眼」の条件を満たしている者は純粋種と呼ばれる。マドルのような純粋種は稀で、多くの魔人族は他の種族との混血であり、身体の一部にその特徴が現れる(鱗や、牙、肌の色や眼の色とかだ)。


 ここからがややこしいので、結論だけ。


 魔人族からその他の種族が派生した、とすると始祖の直系が他に二種はいることになるらしい。

 だが、この二種族については誰もわからずにいた。


 魔族たちは自分たちのルーツに想像をめぐらし、仮説を立てていた。


 天に浮かぶと呼ばれる幻の大陸【浮遊大陸】。

 そこには始祖から枝分かれした自分たちの祖先が暮らしており、気候を操り、下界を監視し、神々の使者として時折恵みと罰を地上にもたらすという。


 

 




「そうだ。おれは麒麟族。始祖の直系だ」

「そんなことはどうでもいい」

「なぁ!! これは数千年もの間秘密とされてきたことですよ? 我々は伝説の種族!! あなたは真実が知りたくはないのですか!?」


 そういうのがいるって何となくわかってたし。

 ピアシッド迷宮で見たタイタンは他の魔族と違っていた。


 でも。

 おれが聞いたのはなんでこの大会に出てきたのかだ。


「目的は、神の守り手に近づくこと」

「神の守り手?」

「あなたのことですよ」

「そういうのいいから」

「冗談を言っているわけではありません!! そもそも――」


 ああ、こいつ話なげぇな。要点だけしゃべれないの?

 

 要約すると、おれの力が大きいから制限したい。でも神殿は守ってもらいたい。だから大会で力を示しておれを制御するつもりだったようだ。


「でも、マドルより弱かったじゃん」

「いや、彼女もまた直系の子孫ですので!! というか、いいんですか!!? 私の力は御覧になったはずだ!!」

「でも、君、話が長いし」

「……え?」


 そもそもね?

 おれ、強い人集めてるわけじゃないからね。

 ちゃんとした人が傍にいた方が安心するだけであって。


「ちゃんと面接とか受けずに、マドルあたりを狙っておれの部下になろうって魂胆がきもい」

「きもっ……!!!!?」


 一言でいえば、「直接おれのところに来いよ!!!!」

 あとこれは言ったかもしれないけど……


 おれは女を殴れるやつは嫌いなのよ。


「『雷魔法』『自己再生』ができるようだが、おれもできるし、気門法や『獣化』はリースの下位互換に過ぎない。見知らぬ君を雇う理由がないんだけど」

「ええ!! というかなんで人族が雷魔法や自己再生ができるのですか!!? あと、私より、あの獣魔族が強いとでも!?」

「強ぇよ!!!! マドルに負けたくせにリースに適うはずないだろ!!!」

「ええええ!! 獣魔族は麒麟族と魔人族の混血と獣人族の混血の末裔。始祖からもっとも離れた血統なのに……」


 そういう、血統で判断するところも嫌いだな。

 そのくせ人族のおれにリクルートされに来るって矛盾していませんか?

 大仰な説明で、自分たちを大きく見せているように思える。


 それに、危機に際し参上した風を装っているけど、今まで無関心だったわけでしょ?

 困った時だけこっちを利用とするって虫が良くない?


 もし、本当に伝説の種族だと言うなら自分たちで教会を打倒すればいい。

 おれに頼る時点で程度が知れる。


「我々は力を重んじるのです。獣魔族には弱点が多く、気性も激しい。私がマドルを選んだのはあなたの配下の中で最も優れた種族だからです。もし、あの男と闘い、力を証明しろと言うならば……」


 弱点か。

 コイツがリースと闘うところを観るのも面白そうだが、そろそろ――


「まぁ、百聞は一見に如かず。コイツの決勝があるから観ればいい」


 湯で汗と血を落として寝たマドルを背負い、リースが戻って来た。

 ふふ、そうしていると親子みたいだな。

 

「主殿、そろそろ私は戻らねば」

「ああ、わかってる。リース、お前の決勝の相手は強いか?」

「いえ、極力初見で戦いたいので、他の試合は見ないようにしておりました」


 全力で楽しんでいるな。こいつが地元でエントリーしてくれて良かった。

 まぁ、決勝まで進んだんだし、それなりの相手のはずだ。

 見ればおれの言わんとすることは伝わるだろう。



「果たして、その余裕がどこまで持つかな?」


 なんだよこいつ。

 全部の会話に入らないとダメな人?


「その慢心が、黒獅子……そなたに敗北をもたらすであろう!!!」


 うるせっ!

 マドルが起きるだろうが。


 ああ、もうー、リースがうれしそうな顔してやがる。

 焚きつけるなよ。

 

 


 この時、おれはまだこの先の結末を全く予想していなかった。

 カルオンの不敵な笑みと自信。


 恐らく、こいつと同じくリースに差し向けられた刺客がいる。それは察しがついていた。


 それでもおれはリースの勝利を信じていた。




 それが、あんなことになろうとは……

 




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