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3.第二回戦



「クルーゼ支部予選第二回戦、第二試合!! それでは選手入場です!!」


 一回戦から四日経った。この間にもいろいろあったけど割愛だ。

 フラウレスの元に来たいかがわしい依頼とか、ギルドのお姉さんに頼まれた暗殺阻止とか、他の支部の予選の状況とかはその内話すよ。


 そんなことより、バージョンアップした鎧を早くお披露目したい。


「おや? これはエドワード選手、やや鎧の形状が違うようですね」

 

 気づいたんやね。

 司会の彼女、優秀ですやん。


「全体的により洗練されスマートになって――え?何でしょうか、エドワード選手に手招きされたので、話を聞いてみましょう! え? なんでお金くれるんですか? えーっと、皆さん、私エドワード選手から金貨いただきました。意味わかりませんが実況がんばります!!」


 おや、相手選手が司会の子に近づいていくぞ。

 マイクを奪った。


 マイクパフォーマンスか?


「この鎧を見ろ!! 極銀(ミスリル)製の一級品だ!! そして、この剣も極銀製! さらにこの盾は神鉄(アダマンタイト)を含む合金!! 最強の装備を使いこなすオレ様は銀級冒険者だ! 実力は極銀級に匹敵するだろう!! 常人を遥かに凌駕するオレ様の戦いぶりを目に焼き付けるがいい!!」


 盛り上げようとしてくれたのかな?

 観客の皆さんはどう反応すればいいかわからずにザワザワしちゃってますが。


「ちょ、返してくださいよ。もう! えー気を取り直しまして、試合を始めて参りたいと思います!! 両者闘技台へどうぞ!!」


 さて、ちょうどいい具合に、全身鎧が相手だ。

 四日でどれだけ変わったか、試させてもらうぞ。


「では、試合開始!!!」

「うらぁー!!!」


 ほう、身体強化の魔石を使っているようだな。

 

「ああーっと完全武装しているとは思えないすさまじい早い攻撃!! しかし、黒騎士エドワード軽々と躱したぁーッ!!」


 すごい、全くおれの動きを損ねない。

 なんて滑らかなパワーアシストなんだ!

 それに、視界が全方面クリアになったからキョロキョロしないで済む。

 透明なギドラの鱗と、百年大蟲の甲殻を使ったらしいが、強度はどうだろ。


「一撃で試合終了だ! せいぜい頑張って逃げやがれ!! それじゃあ絶対勝てないがな!!」


 剣をヘルメットで受けてみた。


「ああーっとこれはモロに食らったぁー!! さすがの鎧でもこれは……おや?」

「馬鹿な……お、おれの剣が」


 砕けていた。

 おれの方は……うん。


 痛くなーい!!!


 衝撃吸収もばっちりだ。内部にあるプニプニの素材が衝撃を吸収する。

 ふむふむ、ヘルメットの方には傷もついてない。

 元々百年大蟲は極銀級のギガクが極銀の剣で斬れなかった程の硬度を持つ。ギドラの鱗も簡単には砕けない上に魔法を反射する。

 視界の確保だけじゃなく、防御も完璧だ。


「攻撃力はどうかな」

「くっ、だが、おれの盾は砕けんぞ!!」


 とりあえず、正面から思いっきり殴ってみた。


「うぉおお!!!」

「なんと! ただ殴りつけただけで吹っ飛ばしました!! だが、何とか耐えています!!!」


 さすがに神鉄は固いな。


 でも……


「ありえない!! この世に神鉄以上の硬度の金属は存在しないはず! あんなただの鉄でできた鎧で――」

「おや? 盾は健在ですが、くっきり拳の跡が、拳の形にへこんでしまっているぅー!!」


 鉄でできたとは失礼だな。この鎧も大部分は神鉄だぞ。

 神鉄と鉄の合金より、神鉄と黒の魔王の魔力との合金の方が強いに決まっている。精錬したのは最高の鍛冶職人だしね。


 結構動いたが暑くもならない。排熱を工夫したみたいだな。このプニプニの中を動きに合わせて何かの液体が循環して冷却してくれている。

 

 最後に新機構も使ってみるか。


「おや、黒騎士エドワードが初めて構えました。んん? えええ!!?」


 これこれ。

 これがやってみたかったんだ。


 武器召喚。


「エドワード選手の手から大剣が現れましたぁー!!!」


 武器庫から手の魔法陣に転移させただけだけどね。

 

 大太刀の一件で、おれが手元に置いておけないときのために封印する場所を造ることにした。

 でも一々取りに行くのが面倒だから、転移を使ってすぐ取り寄せられるようにした。

 武器庫にはギリオンが使っていたスクロールの立体式版があり、そこにおれが魔力を転移させることで、転移魔法が発動し、手元にやってくるというカラクリだ。

 この武器召喚を使えば、鎧の換装も瞬時にできてかっこいい。


 フラウレスにはこのロマンが理解できないようで、武器に求めるものについて激論を交わすことになった。

 

「な、なんだ……貴様、その剣は……!?」

「ロマンだ。これぞ、ロマン」


 彼女にも実用性よりロマンを優先して、依頼されたもの以外のものを造ってみな、と言ったらこれができた。


 無駄に長い剣。


 頂角が10°くらいの二等辺三角形で、底辺の長さが50センチくらいある。

 

 長いというか、もはや高い。

 おれの身長の二倍近くある。


 だが、そこまで重く感じない。

 鎧も熱にまみれていないところを見るとまだ余裕そうだ。


「これは、異常に大きい武器をどこからともなく出した黒騎士エドワード! その能力も驚愕ですが、驚くべきはその腕力!! 片手で途方もない質量の武器を構えた!」

「くそぉー!!」


 盾を持ったまま闘技台の上を逃げ始めた。的を絞らせないつもりだろうが、遅い。

 

「は、早い!! 信じられないスピード!!」


 追いついた勢いで、剣の先を盾に当てた。突きを放ったわけではない。ただ、先っぽを当てた。

 激しい衝撃と共に、金属同士が弾けた。


 その一撃で、相手は盾もろとも吹き飛び、壁にめり込んだ。


「そこまで!! 勝者、エドワード!」

「何という事でしょう!! このクルーゼ支部予選最大のダークホースでした、エドワード選手!! 未だその身に傷を負っていません。この男の快進撃を止める者は現れるのでしょうか!!?」

 

 おや、対戦相手に駆け寄ってきた男、フラウレスに依頼を持ちかけて来て断られた商人だな。

 おいおい、止せ止せ。


 そんな眼で見るなよ。


 アンタが殺意を向けてるのは、アンタが取り入ろうとしているここの領主だぞ。

 と言うわけにもいかない。


 これは、もう一仕事させられそうだな。


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