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幕間 おつかい


 ロイドの刀を折ってしまって反省しているご様子のノワールちゃん。どうしようかお悩みです。あらら、また困ったらジュールくんに相談かな。


「おれには関係ない。そんなことは鍛冶屋に聞け」


 残念だけど、お仕事忙しいんだもの。でもヒントをもらえたね。

 一人で城下の職人街まで行けるかな?

 こらこら、屋台に目移りしたらダメだぞ。

 そうそう、今は我慢。おや、どっちか道が分からなっちゃった。親切な人に聞くしかないぞ。ちゃんと、お行儀よくたのめるかな?


「鍛冶屋はどっち、ですか?」


 よくできました。お辞儀もしてえらいえらい!


 ちゃんと鍛冶屋に着いたね。あとは修理に出すだけ。あれ? ノワールちゃん、お金持ってるの?


「こんな剣は見たことない。それに継ぐのは簡単じゃないな。いや、お金がないなら無理だぞ?」

「お金があればでき、ますか?」

「う〜ん、いや、くっつけて、壁に飾る装飾品にするならできる」

「いや、魔獣とか切ると思う」

「それは無理だな。武器としてはもう使えんだろう」


 あらら……そんなふくれっ面してもできないものはできないです。そんなお顔、カワイイだけだよ。

 

 これはノワールちゃんにはちょっと荷が重いかな?


「ワタクシ、これでも王宮騎士の方の専属でございまして、いやしかしこれを直すならば一振り新調した方が良いかと。ところでワタクシあなたのような美しい方にはぜひ――」

「東の国にこんな片刃の剣を使う民族がいると聞いたことがあるが。鋳つぶして叩いてみんことには材質がわからんな。やるか? なぁ、やっていいか?」

「姉ちゃん遊んでくれるなら直してやるよげへへへ」


 そんな悲しそうな顔しないで。

 がんばったよ。けが人出てないしね。


 だから背筋を伸ばして、明日また考えよう。




「ふむ、ロイド侯の剣か……確か、数年前のことだが、王立魔道学院に尋常ならざる鍛冶職人が現れたと聞く。詳しいことは紅燈隊の隊長が知っているだろう」

「そうか」


 そうか、じゃないよ。頭を下げて! 相手は王様でしょ!


「ありがとう、ございます」

「うむ」


 王様に聞いちゃうとは、びっくり。

 でも、手掛かりが手に入ったぞ。次は騎士の女の子を尋ねよう。訓練の邪魔はしちゃだめだよ。そう、ちゃんと待とうね。


「神妙な顔して何しているのよ? え、あの時の……? 確かに私の剣はその鍛冶師に造ってもらったわ。でもあの後すぐに居なくなったわね」

「どこに行ったか知ってそうな者はいないのか?」

「さぁ? ちょっと待ってて」


 ツインテ隊長さんが聞いて回ってくれてるよ。

 ぼーっと立ってないで、付いて行かなくちゃ。


「知りませんが情報屋に聞けばよいでしょう。名のある鍛冶師であれば、ギルドでわかるはずよ」

「さすがメイジーね。だって。情報屋はわかるわよね?」


 皆さん親切ですね。ありがとうございます。

 いやうれしいからってギュッとしないで……ほらツインテ隊長さんにビックリされたよ。

 

 さぁ、今日はギルドに行こう。


 要領は昨日と同じだから……って、また屋台に魅かれないの!


 さすがにギルドは迷わないよね。建物遠くから見えるからね。でもあんまりキョロキョロしてると男の人に声を掛けられちゃうよ。

 さぁ中に入ったら受け付けしよう。冒険者用のクエスト窓口じゃないから気を付けてね。

 

 銀行窓口の奥にあるベル鳴らして……

 

「これは、ノワール様。わざわざお越し頂けるとは光栄ございます。本日はどのようなご用向きでこちらへ?」

「情報が欲しい」

「かしこまりました。どうぞこちらへ」


 緊張するね。地下室にあるんだね。

 

「それで、どんな情報をお求めですか?」


 ここで怠けて伝えたらだめだよ。

 紅燈隊の、オリヴィア隊長の剣を造った、王立魔道学院で鍛冶をしていた、黒髪で大柄な女の鍛冶師、だよ?


「かしこまりました。少々お待ちを」


 なんだか、心当たりがあるみたいだね。

 ノワールちゃんもソワソワ、ワクワクだ。


「わかりました。おそらくこの方でしょう」

「おお〜」

「神出鬼没な鍛冶師など滅多に居りません。最後に噂になったのはブルボン領にあるミラ鉱山市でございます。この方は当サービスをご利用ではありませんので、わかるのはこれだけでございます」

「十分だ。ありがとう」

「では、清算の方に移らせていただきます」

「え? 私も払うのか?」

「恐れ入りますが、どなた様との取引にも料金が発生いたします」


 お金もってないよ。ピンチだよ! どうするの?

 

「ノワール様がよろしければ、相応の情報でお支払いいただくことも可能です」


 良かった。でも、お金になるような情報なんてあったかな?

 

「情報ってどんな?」

「買い手がつき、売っても良いと思う情報でございます。今回で言えば、ノワール様ご自身が秘密にしていること、などでございます」


 情報屋カルタゴルトは、ノワールちゃんのことを知っているはずだよね。だってジュールくんの会社なんだから。

 

 秘密なんてある?

 

「秘密というほどではないけど……」

「ええ」


 まさか……

 ジュールくんとのこと話しちゃう?

 馴れ初めとか、実際の関係とか、皆興味あるんじゃないかな?



「私を封印した勇者の魂が、今も私の中で生きていて、ナレーションしてくる」


 あら、まぁ……私のことだわ。


「まさかガラン・レイカーの魂ですか?」

「確かそんな名前だ」


 いや、全然違うよ。

 長い付き合いなのに悲しいよ。人の名前はちゃんと覚えよう。ちょっと長いけど、ノワールちゃんの本名ほどじゃないよ?


 私はガラン=シエラ・アドレイク。

 主にノワールちゃんのハラハラドキドキな生活をハートフルに実況してます。他にすることないんだもの。

 

「今、勇者の魂はなんと?」

「それが……半分以上なまっててわからない。私、帝国語は最近覚えたから」


 ええええ!!!

 これ半分以上伝わってなかったの!!?

 どうりで、言った通りにしないわけだよね。

 いや、うそだ。半分は伝わってるでしょ。

 ねぇ、無視してるだけだよね?

 ね?

 ねー!!!!


「うるさっ!」

「け、結構でございます」


 なんにしても無事、情報が手に入ったね。

 あらら、そんなにたくさんお金もらっちゃって……屋台でドカ食いするんじゃありません。女の子でしょ!


「よし」


 あれ、「よし」じゃなくて。だからホラ、行くならちゃんとジュールくんに断ってからじゃないと心配されるよ?

 

 ああ、飛んじゃった。

 



 ミラ鉱山に到着しました。

 初めて来た街だけど、一人で人探しなんてできるのかな?

 

「……あの」

「あ、はい……」


 ノワールちゃんの魔性発動しましたよ。そりゃ、こんな美人に声を掛けられたら協力してしましますよ。

 でもいいの? 目立つと怖いおじさんとかもいるからね。


「ほう、魔族か。だがいい女だな」

 

 ほら、言わんこっちゃない。逃げて逃げて。もめ事を起こしたら探しづらくなるでしょ。


「くそーどこに逃げやがった!」


 そんな美女形態でいたら絡まれるよ。

 幼女形態で探したら?


「お嬢ちゃん、その持ってる剣見せてくれるかな?」


 あわわ、この街はあんまり治安がよくないな。探すのはすごく大変だぞ。

 

「鍛冶師……? ああ、あいつはよそ者だからここでは働いてないぞ」

「お金あげる」

「……わかってるな。郊外の神殿だ。食い扶持が無くてあそこで働いてる」


 おお、これはジュールくんのまねだね。

 長かったおつかいも終わりが見えてきました。

 神殿に着いて、ようやく鍛冶師を発見。


 本当に神殿で働いてたね。畑仕事してるけど、直せるかな。


「これは……お前の刀か?」

「違う。ロイドの」

「ロイドとは誰だ?」

「人族のすごい奴」


 なにその説明。全然伝わらないよ。


「そいつはこの刀で何をする?」


 考えこんじゃった。難しい質問されるとは思わなかったね。

 でも答えを間違えたら断られるかもしれない。

 慎重に答えよう。


「ロイドのことはよく知らない。でも、私のよく知る男が、ロイドに従ってる。誰かに従うような男じゃないけどロイドのことは認めてる。でも私がこれを折ったせいで、仲違いして欲しくないから、直して謝らないといけない」


 そうだったんだね。あなたがこんなに必死になっていたのはジュールくんのためだったんだね。

 誰か、ハンカチ持ってませんこと?

 

「そのロイドは、これを直さないとお前を責めるか?」

「責めない。でも、私のよく知る男とロイドは最近仲がよくない。私のせいかも」


 気にしてたんだ。でもそれはまた別の理由だよ。


「その男とは、お前の男か?」

「……」

 

 そんな顔を紅くしてもじもじしてたら答えたようなものだよね。

 鍛冶屋さん、脱線してないかい?

 初心な子なんです。やめてあげて。


「そうか、仕事を受ける。だがお前にも協力してもらう」

「わかった」

「じゃあ、私の代わりに畑を耕しておいて」

「……え?」


 理由を聞かないと! ホラ、刀持ってかれちゃったよ。畑仕事なんてやったことないからわからないし、やる意味もわからない。それにそろそろ帰らないと。え、ちょっとノワールちゃんやるの? 畑と刀は関係ないんだよ? 騙されてるんだってば!!


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