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4.緑竜列島



「は〜い、魔の海域は抜けましたよ船長!!」

「ここは今どの辺りだ?」


 海図を見て骸骨は場所を指さした。


「随分南じゃないか」

「そりゃ、帝国軍に見つからないように進んでるんでね」


 当然そのルートは無法者たちが利用するものと重なる。

 

「あ、海賊」

「ビクっ???」

「なんでお前が驚くんだ? というかその顔は驚いてるのか?」


 海賊船団と遭遇したロイドたちは成り行きでその海賊たちと交戦した。



 海賊たちはもれなく骸骨がいた島へ転移した。

 

 海賊たちが運搬していた獣人たちは解放された。

 しかし、ロイドたちと話すことができないため、何が起きているのか理解できなかった。


「この人たちはおれたちをどうする気だろう?」

「きっと、別の奴に売るんだ。見ろよ、魔族を連れてる。奴隷商人だ」

「そうかな? 私は違うと思う。首輪もしてないし、巫女も一緒だし……」

「でも、あの動く骨は? 怪しいぞ」


 そんな不安はすぐに消えた。

 ロイドたちは解放した獣人たちに十分な衣食住を与え、何かを命じることは無かった。


 どこかの島に降ろしてもらえればと思っていたが、進むごとに遭遇する海賊や人攫いたちを壊滅させ、他の獣人たちも開放していった。


「つ、強い! たった三人で全員倒してしまった」


 獣人たちはロイドたちの戦いぶりに圧倒された。

 傷を負っていた者、病に侵されていた者もロイドの神聖術でたちまち完治した。


「ああ、もどかしい! この気持ちを伝えられないなんて!!」

「おれたちに何かできることは無いのか?」


 そんな彼らの様子を察したのは、マドルでもセイランでもなく、リースだった。


 彼はにやりと笑い、油断している自分の主の背後を襲った。

 ロイドはたちどころに反応し、躱しつつ反撃した。


「「「「「ええ!!!」」」」」

「謀反だ!!」

「い、いや待て。これは訓練じゃないか?」

「あ、なんかこっちを見てる。おれたちにもやれってことか?」


 リースは修行と称して暇な船での移動中、ロイドを襲った。

 魔導士の弱点である近接戦闘能力の向上。

 

 ロイドは戦闘技術の多くをリースから学び取り、同時に『思考強化』による転生前の情報修得であらゆる格闘・武術に関する知識を獲得していった。


 しかし実戦に勝る修行無し。

 

 実際に容赦のないリースの攻撃を受けながら、ロイドは技を修得し、同時に破壊された身体を『自己再生』で修復することで強くなっていった。


 現在は不意打ちへの対応力をあげている。

 リースは複数からの不意打ちの訓練へ獣人たちを誘ったのだ。


「よし、や、やるぞ!」

「訓練相手という事なら……」


 ネコ獣人は気配を消せる。

 足音もさせず素早く接近できる。


 オオカミ獣人は集団で動くことに長けている。


 狐獣人は不意打ちが得意。


 他にも多種多様な獣人たちが自分たちの得意を生かして、ロイドを襲い、返り討ちにされた。


「つ、強い……」

「絶対におれたちの方が早いし、力も強いのに」

「人族の技は侮れないな」


「ああ、とか言ってる間に、魔族の旦那にぶっ飛ばされた!!」

「容赦ない!!」

「海に落ちたぞ、お救いせねば!!!」


 そんなこんなで船は進み彼らは進んでいる方角が自分たちの故郷ではないかと気が付いた。


「なんでだ? どうしておれたちをわざわざ……」

「それに倒した海賊や人攫いたちはどこに行ってるんだろう」


 倒した敵は全員転移で島へ送られていた。


 誰も脱出することができないドルズゥール島へ。


 船は障害をものともせず進み、緑竜列島の沿岸に到着した。


 下船させられた。


 途中生き別れた家族と再会した者たちも多く、一同は精一杯の感謝を伝えた。

 沿岸を離れていく船を、地平線の彼方に消えるまでずっと見つめていた。


「本当にただ私たちを解放しただけ……」

「人族にはあんな方がいるのだな」

「私、お仕えしたかったな……」

「お前は気に入られたんじゃないか? 首飾りももらっていたし」


 だが、それは首飾りではない。

 それはほどなくして分かった。


「また、同胞が!!」

「ここは……! 戻れたのか、おれたちは!?」


 ロイドの転移によってそれから遭遇した獣人たちも軒並み解放され、故郷に戻ることができた。




「容赦ないね、船長。あの海賊たちもお仕事なんだから」

「おれに言うな。マドルとセイランが助けてあげたいと聞かないんだ。一回助けちゃったんだから他を見逃すのは不公平だろ?」


「いや、だとしても島へ送っちゃう〜? おれが言うのも何だけど、あの島で生きるのはキツイよ。今頃殺し合ってるだろうぜ?」

「それこそ知らん」

「こわいこわい」


 ロイドは知っていた。


 海賊と乱戦になった時、パルクゥーンも戦った。骸骨であることを抜きにしても、その力は圧倒的だった。その割にはパルクゥーンと戦った海賊は海に落ちるだけで誰も死んでいなかった。


「やけに海賊の肩を持つな。なぜだ?」

「……へんじがない ただの しかばね のようだ」

「あはは、上手い!」


 ロイドたちが進んだ後には海賊はいなくなり、南海の勢力図は大きく塗り替わった。


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『ゾンビにされたので終活します × 死神辞めたので人間やります』
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