1話 暗い闇の中での移動
遅くなってすみません。
「なんだよ...これ......。」
今、おかれたこの状況を理解できずにいた。
さっきまで、自分の部屋にいたはずなのに、いつのまにか外に、しかも明らかに地球とは違う世界にいるのだ。
訳がわからない今の状況に、恐怖が込み上げてくる。今夢を見ているのかとも思い、恐怖を押さえながらゆっくりと周りを確認するが、変わった様子はなく、やはりそこが現実であることをはっきりと現していた。
服は普段着から変わっていなかったが、いつのまにか靴を履いていて、外を歩くのは苦にはならなかった。
ゆっくりとたちあがり、風に当たって頭を冷やした。冷静にする頭で今の状況を考えるが、たどり着いた答えはあまりにも現実場馴れしていて、自分でも認められなかった。
「異...世界転移......?」
声に出してみるとひどく実感がわいた。
その実感を感じるごとに、恐怖は消え、恐れより好奇心が出てくるようだった。
たくさんに読んだ小説の舞台のような現実にワクワクさせられていた。ただ、そんな小説では異世界に飛んだときは、よく王宮などから始まり、目的や目標がはっきりしていた。
こんなにもなにもない、いやしいていえば、禍々しい色の地から始まるのは、あまりにも不気味に感じた。
何をするにも、ここにいては何も始まらない。とりあえずの目標は人とあったり、町にいったりすることだ。そのために情報を集めようと、現状を把握するために、辺りを見回した。
さっきまで見ていた崖側の反対、つまり、背中側だが、そこは木々が生い茂り、うっそうと深い森が広がっていた。森の中は暗く、光も射していないので数メートル先には闇が広がっていた。木のなかには葉が紫や黒と言った、もとの世界では見かけない木々が生えていた。
町がどこにあるかも分からず、どこへいくのかあてもないため、この森を抜けようと枝を掻き分け、茂みの中へ、足を踏み入れた。
注意を払い、何もわからないまま、歩を進める。一応自分の通った場所がわかるように、枝をおったり、葉をちぎったりしながら進んだ。
木々の茂りが、濃くなり、奥へ奥へと進むうちに、だんだんと闇が濃くなっていた。
((・・・暗量が一定値を越えました。オート使用により、「夜桜:闇目」を発動します。))
!?なんだ。頭の中に声が聞こえる。
・・・オート・・・スキル・・・?えっスキルってことは...能力とかあるのか?
よく小説で出てきた見慣れた言葉を口にする。
「スキル発動!」
・・・・・・。
何も反応がない。むなしく自分の声が闇の中へ消えていく。
さみしいやつかよ。そんなことを思ったが声には出さない。
言っても虚しくなるだけだ。現実味がまして、もっと虚しくなるだけだからな。
肩を落とし、また暗い森の中を進んでいった。ただ、その暗さは自分の心境とは違い、心なしか少し明るくなっているようだった。そのおかげで、さっきよりも遠くが見通せるようになっていた。
さっきなんか声がした時に聞こえたスキルってやつかな?といっても、何もわからないからなんにもできないんだけどな......。
進むにつれ木々はもちろんのこと、地面には得ている草もだんだんと高くなってきている。それらを掻き分けながら少しずつ進んでいると、少し低い木々の先にほのかにしっかりとした明かりが見えてくる。
少し警戒を強め、葉の隙間から明かりのある方をのぞいてみると、そこには小さな泉が広がっていた。
どうやら、開けているようなので、葉を避けて泉のもとへと向かう。するとそこは、とてもきれいで幻想的な光景が広がっていた。
その泉は、あろうことかみずが暖かく黄金色に光り輝いていたのだ。
いや、正確には違う。水の中に自生している水草のようなものが光っているのだ。
それらが泉全体に生えており、光る泉のように見えていたのだ。
その水草は、泉の小さな流れに呼応するかのように、美しく波をうっており、それはまるで風に揺られて波打つ小麦畑のようでとても美しかった。
また、その泉に集まっているのか、そこにつくまでの道中には見かけなかった光輝く草花やキノコが生えており、それらもまた泉に呼応しているようだった。
その草花に虫が集まっている。それらが空を飛ぶ様子はまるで流れ星のようだった。
そして、それらはまるでウユニ塩湖で見える全面に見える星空のようにだった。
暗い森の中で見かけた明るい場所。しかもそこは水辺である。こんな高立地の場所はあまりない。少し休もうと、出っ張った岩に腰を下ろす。と、そのとき、疲れからなのか立ちくらみが起こったように感じた。
なんだって俺はこんなところにいるんだ...。
そんなことを感じながら、肩を落とした。さらに、ついため息が出てしまった。
ほんとにここにいる意味がわからない。思考がループしている。
同じようなことを考えていたら、だんだんと悲しくなってきた。たとえ引きこもっていたとはいえ、家族とかゲームとか、未練がないわけではない。水の流れる音を聴きながらもとの世界のことに思いを馳せる。
ガサ・・・ガ・・サ・・・・。
ふいに、茂みの中から水の音とは違う何かが動く音が聞こえた。
腰を浮かせてすぐに動き出せるようにし、そこを見る。
少しずつ後ろに下がりながら、音のした場所から遠ざける。数歩下がったとき、ひどい立ちくらみがした。我慢して、後ろに下がろうとするがうまく体が動かない。
そして、その音がだんだんと近づいてきた。
ガサッ。
そこから現れたのは・・・・・・ねずみのような小さい生き物だった。
こわっ...。何だよ・・・びっくりさせやがって・・・。
さっきまで、感情を恐怖と緊張が支配していたので、口の中がカラカラになっていた。
泉の水を飲もうと泉の中を覗き込む。手で透き通った泉の水を飲もうと泉のなかに手をいれる。
と、そのとき、体の自由が奪われたかのように動かなくなってしまった。
あ・・・れ・・・・・・体が・・・う・・・ごかな・・・い・・・。あ・・・力も・・・・・・抜け・・・て・・・。
力の抜けたその体は重力に逆らえず、泉へと叩きつけられる。派手な音をたて、激しい水しぶきがたち、泉の中へと沈んでいった。
((魔力の極限低下を確認。休眠モードへと移行します。))
その声は、ほしの意識には届かなかった。
さっきまでいた小さな動物は、水しぶきの音に驚いたのか、もうその場所にはいなかった。
水面の波も落ち着き、泉の周りに静けさが漂っていた。
・・・・・・・・・・・・。
((魔力の回復を確認。・・・時が満ちました。スキル「夜桜:深夜」を発動します。))
その声に反応するものもやはりいなかった。
2話どうしよう...(’_`;)。
し...失踪はしないぞ...。