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パンツァネッラ





〇side:爺や




 パンツァネッラは農家で馴染みの郷土料理です。

 硬くなったパンの再利用としては非常に手軽で簡単な料理といえるでしょう。


「いやはや、助かります。残ってしまったパンも、出来るだけ早く処分してしまいたいですから」


 処分しなくてはいけない『残り物』が出る意味を、しっかりと考えなくてはいけないと思いますが。


「……精進いたします」


 ふむ。

 料理長はまだまだお若いですからな。むしろこれから脂ののってくる時期でしょう。学園にこの人ありと謳われるよう、頑張っていただきたいものです。

 そうそう、パンのことでしたら、フルールの店主殿に教わられるのが良いでしょうな。今は忙しい日々のようですが、常に創意工夫を忘れない御仁ですので、いずれは時間に余裕を作ってくださるでしょう。私も追加注文の準備をしなくては。

 ――さて。

 まずはこの、残ってしまっているバケットを調理してしまいましょう。


 バケットは二センチの角切りにします。

 ミディトマトは四分の一の大きさに。

 胡瓜はストライプに皮むきをして輪切り。モッツァレラチーズは二センチ角に切ります。

 ボウルに入れて混ぜ合わせるのは、オリーブオイル、赤ワインビネガー、蜂蜜、塩、胡椒。

 この中に先程のバケット、トマト、胡瓜、モッツアレラチーズ、それにケイパーと黒オリーブを加えて混ぜ合わせます。

 出来上がったものは冷蔵室へ。ここで二十分ほど冷やせば完成です。お出しするときはバジルの葉とセルフィーユをちぎって加えると良いでしょう。

 硬いパンがドレッシングを含み、柔らかくなると同時に味わいを深めます。食欲の無い夏にはもってこいですな。


「あっという間に出来てしまいましたね……」

「料理とはそのようなものです」


 どれほど時間のかかる料理であれ、手早く出来る料理であれ、材料と真摯に向き合い、お食べになる方を思って作ればどんなものでもあっという間に出来てしまうものです。作っている間は、ただただ無心になっておりますしな。


食品貯蔵庫(パントリー)も見させていただきましたが、少しばかり整理したほうが良いでしょうな。食べ物には鮮度があるのですから」

「は、はい」

「業者の見直しも行った方が良いでしょう。予算の関連についても、学園長から提出されています。後で、お話をしなくてはいけませんね」

「ひ……は、はいっ」


 硬直し、直立する料理長を一瞥しておきます。

 まったく。仮にもお嬢様がおられる学園の調理場を任されているのですから、しっかりしていただきたいものです。


「と、ところで、あちらでその学園長が待っておられるようなのですが」


 おっと。

 いつの間にかおいでになっていたようですな。

 転じた視線の先にいるのは、いかにも「私が学園長です」と存在そのもので訴えるような長い髭の老魔法使いです。

 ……いくらなんでも、形から入りすぎでは無いですかな? スティーブ?


「お久しぶりですな! 歓迎いたしますぞ!」

「出来るだけ早くお暇できるようにしたいですな、学園長」


 両手を広げるのに苦笑しつつ、私は厨房を後にいたしました。

 ああ、そちらのパンはキッシュにすると良いでしょう。後でレシピをお教えしますよ。


「さて。では、問題のあぶり出しに参りましょうか」


 向き直った私の声に、学園長はなんとも言えない微苦笑です。


「手加減をお願いいたしますぞ」


 それは相手次第ですな。





〇side:レティシア





 ……これはどういう状況でしょうか……


「では、次に精霊術を戦闘で使う際、気を付けなくてはいけないことを実践する。レティシア様、引き続き見本をお願いしたい」

「……はい」


 場所は学園の校庭、その一角。

 戦闘訓練が出来るよう、剥き出しの地面をならしてある広場です。

 一年Aクラスに三年Aクラスの先輩が教えに来てくれるようになって、はや一週間。他のクラスの方々にも授業内容は好評なのですが、問題が一つ。

 何故か私がAクラス代表での実技をさせられています。

 ……私、別にAクラスで一番精霊術が上手いというわけでは無いのですけれど……


「まず、魔法である以上、相手への契約履行を願う呪文を詠唱しなくてはいけない。これには集中力がいる。慣れれば動きながらの詠唱も可能だが、短いものならともかく、複雑な詠唱を必要とする高位の術ほど難しくなる。そのため、可能ならば前衛、中衛、後衛の役割に別れ、詠唱が終わるまで他の者に敵を近づけないでいてもらうのが基本となる。一番安定して術を行えるからね。この時、術者は無論、後衛に位置することになる」


 先輩が仰っているのはパーティー戦での立ち位置のお話です。

 魔法使いにとって、詠唱をきちんと唱えられるかどうかが、文字通り生死の分かれ目になるでしょう。無詠唱が可能な人でない限り、詠唱失敗は魔法の不発を意味しますから。

 とはいえ、動かずに詠唱だけに集中していられる環境なんて、緊急時には難しいと思うのですが。


「実際に、詠唱中に打ち込まれた時の状況を実践する。すまないが、レティシア様。私が……そうだな、体当たりするので何か術を唱えてもらえるだろうか」

「え!?」

「ああ、いや、もちろん、実際に吹き飛ばす等の力を加えることは無い。だが、攻め込まれることによる詠唱の難しさは理解してもらえると思う」

「え……ええ」

「それを実際に見せる。協力してほしい」

「は……はぁ」


 いえ、違います。

 違うのです、先輩。

 体当たりされるのが怖いとかそういうのではありません。

 単に私、動きながらでも魔法を唱えられますし、普通に迎撃してしまうんです!


「「失礼」」


 密かに狼狽えていましたら、クラスメイトの中から声があがりました。

 エリク様と……殿下?

 お二人とも思わず顔を見合わせてから、前へとお出でになりました。

 ……あら? クルト様、どうしてユニ様を必死に背中で留めていらっしゃるの?


「先輩、申し訳ないが、その見本を一人の女性にさせるというのは如何なものだろうか」


 殿下?


「実際の難しさは皆がその身に刻むべきだと思う。二人一組で互いにやりあったほうが実体験として身に付くのでは無いだろうか」

「ちょうどクラスメイトも四十名です。お互いにやりあった後、感想を述べ合うのも連帯感を育むのに良いかと思いますが」


 殿下もエリク様も淡々と仰ってますが、なにかちょっと怒っていらっしゃるような気がします。

 先輩お二人は戸惑っておられるというか、バツが悪そうというか……


「……殿下の仰ることももっともだな。では、二人一組で行うように。互いに出来るだけ怪我をさせないよう、魔法は威力の低いものを、体当たりは加減して行うように。どちらが先かは話し合って決めてくれ」

「「ありがとうございます」」


 先輩の声に、殿下とエリク様が丁寧に一礼して集団の中に戻られます。

 ……ん? エリク様と殿下が組むの?

 あら? クルト様はユニ様と?


「え!? 殿下、エリク様とですか!?」

「女性に体当たりをするなど、出来るわけないだろう」


 マリア様がビックリされてますけど、まぁ、普通に考えてそうですわよね。

 ……あら? もしかして……


「殿下もエリクも、女性が男性に体当たりされるのを知らん顔できなかった、ということですよ、レティシア様」


 クルト様がこそこそっと教えてくださいます。


「基本的には、良い方ですから」


 困ったように付け足すあたり、友情との板挟みは続いているのですね?


「殿下達のことはともかく……殿方でありながら、女性に体当たりする状況を強要するだなんて、先輩を見損ないましたわ!」


 ユニ様はお怒りのご様子です。

 それにしても、エリク様が殿下と組まれると人数が余ってしまいますね。

 エリク様はシュエット様、クルト様はユニ様、私はアリス様と組むつもり満々だったのですが……

 ……ん? ユニ様、この場合、クルト様のお立場は?


「でもユニ、僕はユニがいいんだけどな」

「そ、それは別にかまいませんわよ!?」

「しっかり受け止めるからね!」

「そそそそそういう訓練ではあああありませんことよ!?」


 あら~。うふふ。

 思わず和やかな気持ちでお二人を見ていたら、ふいに殿下達の側で騒がしくなりました。


「いえ! 殿下! お相手ならば私が」


 ん?


「いえ! 私がお相手させていただきますわ!」

「なにを仰るの!? むしろ魔法の授業なのですから私でしょう!」


 んん?


「う……うわぁ……」

「……あの三人、殿下の先の発言、聞かれていなかったのでしょうか?」

「……あっちの三年、自重無しだね~……」

「まだこっちの先輩方の方が遙かにマシですわね……レティシア様に体当たりをしようとしていたのはともかく」


 慄いていらっしゃるアリス様に、呆れ顔のシュエット様。クルト様とユニ様は揃って溜息をついておられますが、私としては言葉もなく見入るしかありません。

 なんと殿下、三年の女子三名に引っ張りだこになってます。

 ……殿下、もしかして女難の相とか出てますか?


「いい加減にしていただきたい。女性に体当たりをするような真似はしたくないから、エリクと組んでいるのだ。貴方方を相手に組めるはずが無いでしょう。女性なのだから」

「「「うっ……」」」


 殿下の声に一瞬言葉を詰まらせられましたが、先輩方、諦めません。


「いいえ! 戦場では男女の違いなどに拘ってはいけませんわ!」

「そ、そうですわ! 自らの加減の仕方を学ぶことも出来ますでしょう!」

「そうですわ!」

「……それだったら、普通に一年同士で私が殿下と組むんですけど?」

「一年は黙ってらっしゃい!」


 嫌そうなマリア様のお声に、先輩方は目くじらをたてていらっしゃいます。

 あ。マリア様が。


「一年の授業で三年がでしゃばろうとするほうが間違ってるでしょ!?」


 キレるの早いですわね!?


「なんですって!?」

「あなた! 誰に物を言っていると思っているの!?」

「あと半年ちょっとで学園を去られる三年生の先輩ですね! ところで精霊王様と契約は出来そうですか? 基礎能力が千超えてないと契約どころかその手前にもたどり着けませんけど! 皆様、能力がまだ六百にも満たないんですね!」

「なぁ!?」


 ……マリア様……相変わらずですのね……

 あと、千とか六百とかって、何かしら……?


「いい加減にしないか!」

「ユイとアナリス、それにナタリーもだ!」

「誰の為の授業だと思ってる!?」


 殿下と三年の残り二人の先輩が怒鳴っておいでです。

 エリク様は冷ややかな目ですわね。

 他の方々はおろおろしていらっしゃるので、私達もそちらに赴いて観客となりましょう。

 ところでこの授業、まともに終わるのかしら?


「そっちのご令嬢の言うとおりだぞ。一年の授業なのに、なにをやってるんだ!」

「あなた達だって!」

「我々はあくまで代表としての見本で協力いただいていたにすぎない。なのに君達は本来学ぶべき生徒を押しのけて自分が居座ろうとしているじゃないか!」

「人のこと言えるの!? 毎回同じ人に見本になってもらって! 下心が透けて見えるわね!」

「なんだと!?」


 ああ、なんだかすごく面倒なことに……

 というか、あの三人はいったい何のためにこの授業に来ていらっしゃるのかしら? もうお二方の方は授業で教師役を務められてましたが、あの三人はずっと殿下にべったりしたままだったではありませんか。

 ……いらない気がしますわね。


「……どういたしましょう?」


 シュエット様がユニ様をチラッと見られました。

 ユニ様は腕を組んで厳しいお顔です。


「エリク様が殿下とご一緒されるようなら、私がマリア様の『お相手』をしようかと思っていたのですが」

「いえ、それでしたら私が」


 ユニ様とシュエット様……その鬼気迫る笑顔は何でしょう……?


「あれ? 私がしようかなって思ってたんですが」

「アリス様はレティシア様をお願いいたしますね? やはりここは、面倒な爵位がからんできますから」

「あ……あー……そうですね」

「それがなかったら、じゃんけんで決めるのも手だったのですが……」


 ……何故でしょう。私の知らないところで、何かあった時のマリア様の担当が決まっていたようですわ。

 ま……混ぜて?


「だいたい、殿下ぐらい才能がおありの方が、一年に混じって勉強されるなんて才能の無駄遣いだわ!」

「そうよ! 他は足手まといよ!」

「おい……いい加減に――」

「そもそも、動かなくては詠唱できないのを確認する授業だなんて、殿下には不釣り合いだわ!」

「殿下! 平行詠唱はできまして!?」

「……出来るが、それとこれとは――」

「ほら! 不要ではありませんか!」


 ……殿下。話聞いてもらえませんわね?

 仮にも王子なんですから、気迫でバシッとやっておしまいなさいな。この国、大丈夫かしら……


「授業の邪魔をされたいのなら、出て行かれよ!」


 とか思っていたら、殿下が怒鳴られました。

 殿下、やればできるではありませんか。なかなかの迫力です。

 けれど、残念ながら爺やの半分以下ですわね。三年の三人は震え上がっていますが、うちの爺やでしたら一声で気絶させられますもの。うふふ。

 ――それにしても、わりと沸点低いですわね、殿下。

 マリア様とお揃い?


「私達は、殿下のためを思って……!」

「どこが私の為だ!? 貴方達は我々の授業に来て一度でも教鞭をとったことがあったか!?」

「「「…………」」」

「一つずつ学んで行くべき段階の、この大事な授業を『教える』立場で来た者が邪魔をするとは何事だ!」

「わ……私は!」

「ひどいですわ殿下!」

「程度の低い一年とやるよりも、私達のほうがよりよく学べると思ったまでですのに!」

「まだ学び始めでこれから能力が開花する一年より、開花しきれなくて後は萎れるだけの自分達のほうが優秀とか思ってる女の見苦しさは異常ね」

「「「なんですって!?」」」


 マリア様!?

 思っていた以上に毒舌ですのね!?


「違うの? 三年ってことは最終学年よ。学園の叡智を存分に学ぶ機会があったんでしょ? Aクラスなんだから優遇され続けてたはずだわ。薬草や魔法植物などの素材も可能な限り提供してもらえる、そんな恵まれた環境にあって、どうしてまだ精霊術が中級なの? 普通、三年に上がったのなら上級になっててもおかしく無いじゃない。少なくとも、この時期にそのレベルだなんてお話にならないわ。精霊王はおろか上級精霊との対話すら不可能じゃないの。私達と違って二年もの長い間この学園で学んでるのに、お粗末にも程があるわ」

「なっ……なっ……」

「ど、どうして中級だって知ってるのよ!?」

「そんなの見れば一目で分かるわよ。おまけに何? 親和度、ひっく!! 魔力極振りで力任せになんとかしてきたのがバレバレだわ。あちらのお二人はまだバランスが良いけど、これで『三年の』Aクラスって本気で言ってるの? 本当に先輩方が『選抜されたメンバー』なの? この程度で!? 目標にすらならないわ!」

「言ったわね!?」

「王子に纏わりつく阿婆擦れのくせに!」

「あんたなんか本当はどこの馬の骨か分からないもらわれっ子じゃないの!」


 完全にキレたらしい先輩方に、マリア様は激昂せずむしろ冷ややかに微笑まれました。


「血筋しか誇るものが無い女は無様ね」


 ……すごいわー……


「残念ながら、私がお父様の実の子なのは魔法院も神殿も保証済み。DNA鑑定なんてこっちに無いから不安だったけど、魔法も侮れないわね? ついでにお母様のことについても、実のところ問題無いの。卒業時には明らかにされるわ。その時が楽しみね? ところで、貴族であろうがなかろうが、精霊術の有無によっても地位が確保されるのは知ってるわよね? 私の素質はSS。あなた達の素質は揃ってB+。それで? 血筋しか誇れないあなた達は、卒業した後の社会で私より上位に立てるの?」

「なに訳の分からないこと言ってるの!?」

「だいたい、素質なんて何で分かるのよ!? 学園でさえ特殊な魔道具か先生でしか見抜けないのに!」

「そんなの、一目見れば分かるじゃない。ちなみに先生方はSランクよ。そんな先生がいるのに、どうして格下のあなた達の都合に振り回されないといけないの? 三年のAクラスにもSランクの先輩がいるのは知ってるのよ。なんであなた達が来てるのよ!? 邪魔にしかなってないわ!」


 ビシバシ言い切るマリア様に思わず拍手してしまいました。

 でぃーえぬえーやら素質やらランクやらはよく分かりませんけど、スッとしますわね。

 あら。拍手が二重だと思ったらアリス様も拍手中でした。しかもウンウン頷いていらっしゃいます。


「……なんでレティシア様とアリスが拍手するの~……」


 まぁ、マリア様、その微妙なお顔、おやめになって?


「言いたいことを仰っていただきましたもの。支援ですわ」

「そ……そうなの……」


 あら? 照れられましたの……?


「こ、公爵令嬢の貴女までそんなことを仰るの!?」

「どうしてそこで私の身分を仰るのでしょう? 私は一学生として同級生の発言を支援しているだけにすぎませんわ。――確かに、目上でいらっしゃる先輩方への発言として不適当なものも多かったのは事実ですけれど」

「そ、そうよね!」

「ですが、私もマリア様と同じ意見ですわ」

「え……」


 愕然とこちらをご覧になる先輩方には悪いですけれど、これはもう、先生方にかけあってでもなんとかしてもらうべき事柄でしょう。

 ――なによりも、『彼女達』が私の爺やが発案した『授業方法』の体現者だなんて、許すことはできません。


「同じ学び舎で学ぶ先達として、私達は上級生の方々を敬っておりました。ですが、その先輩方が、私達一年Aクラスが学友と共に学ぶ時間を、ご自身達の都合で歪め、潰してしまうのであれば、私はあなた方に敬意を抱くことは出来ません」


 パキ、と足元で音がしました。

 ……いけません。少し制御が緩んでいますね。


「え。え? レティシア様?」

「ちょ……ちょっとレティシア様、何で……」


 ああ、アリス様はそのまま後ろにいてくださいませ。

 そしてマリア様、あなたは三年達から離れてくださいましね? 巻き込んでしまうかもしれませんから。

 爺やが言っておりましたの。――気圧された方が負け。戦うのであれば、まず速攻で相手の心を砕くべし、と。

 ならば構わないでしょう。夏は暑いのです。多少、冷えたところで涼しくてよいですわよね?

 ねぇ、先輩方?


「あなた方は、このAクラスの皆を、私達全員を侮蔑なさいました。『足手まとい』、ですって?」


 パキパキと音をたてて私の力場(フィールド)も広がりました。

 強く。早く。遠く。深く。

 体の芯から凍えるように。恐怖と寒さに震えあがらせられるように。

 私と三番目に仲の良い精霊達の力で。

 ――私の極寒の戦場を。


「ならば、試してごらんにいれましょう。あなた方に学びたいなどとは思いません。その存在が不要であると、私が証明してさしあげます。杖を持ちなさい! 己が抜きんでたる者とおっしゃるのであれば!」


 一気に魔力を這わせ、後ろに下がりかけた先輩達の足を地面に張り付けさせます。

 逃がしませんとも。

 さぁ、戦おうではありませんか。


「私はあなた方に決闘を申し込みます!」





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