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On ne voit bien qu'avec le coeur


〇side:レティシア




「え?」

「「「なんで分かったの!?」」」

「「ええっ!?」」


 まぁ、皆様、ハモる回数の多いこと!

 首を傾げた私に、つめよるユニ様、アリス様、シュエット様の合唱と、それに驚いて声をあげるクルト様とエリク様のハーモニー。

 仲良しですわね?

 私だけ、どうして一人ですの?


「いや、待て! アリス……『嬢』……!?」

「明らかに別人……というか、男性だよ!?」


 クルト様とエリク様が青年を凝視しています。

 確かに男性のお姿ですけれど……なにしろ、爺やがあの若さになってましたから――


「あー、そういうお薬なんです。効果は十二時までですけど」


 ほら、やっぱり。

 それにしてもアリス様、立派な風采ですわね~。

 元々お顔立ちもよろしかったから、殿方になってもハンサムですわ!

 背も高くていらっしゃるし、優し気なお顔立ちですからとってもレディにモテると思います。ええ。爺やの次ぐらいに好みのお顔ですわ!

 目元にもうちょっと皺があるとさらに好みなのですが……


「というか、本当になんでレティシア様、分かったんです!?」


 あら。アリス様、どうしてそんなに不思議そうなのでしょう?


「一目でわかりますでしょう?」


 女性が男性になっただけですもの。

 それは確かに背も体格もお声も違いますけれど、アリス様がアリス様以外の誰かになったわけでもありませんでしょう?

 何故か皆様愕然としたお顔ですけれど。


「……え……えー?」

「あっ!……そういえばレティシア様、爺やさんのことも一目で看破されてました……よね?」

「あ! そうですわ! あのお姿の爺やさんは、予定を聞いていた私達でも一瞬本気で分からなかったのに! レティシア様、全然動じてませんでしたよね!? 一目でわかったんですの!?」

「? 一目で分かりましたわよ?」

「「「どうやって!?」」」


 それこそ、どうして不思議がられるのでしょう?


「私が爺やを見誤るはずがありませんわ?」

「「「…………」」」


 待って?

 お三方、待って?

 レディがそんな風に口をポカンと開けるものではありませんわ?

 私がナッツをお口に投入してしまいましてよ?

 ――ええ。ナッツはいつも腰の隠しポッケにハンカチにくるんで入れておりますの。そのまま食べれますから。

 ……入れていい?


「……え。じゃあ、アリスさんっていうのも、本当? レティシア様、それも見破っちゃうんだ?」


 クルト様が目を丸くされています。

 私はナッツを仕舞いました。こっそりです。見つかるヘマなどいたしませんとも。


「アリス様は目元がそのままですもの。気配も雰囲気も変わっておりませんでしょう?」

「気配」

「雰囲気」

「……目元は分かるけど……」

「ああ、でも、とっても背が高くなっていらっしゃるのは、驚きましたわ! あと、お胸はどこへ……」


 さわさわ。


「ひゃあ!?」


 ……やっぱり無いですわよね……

 どこへ? どこに消えたの?

 その一部は、何故、私に備わってくださらないの?

 さわさわさわ。


「レティシア様!? もしもし!? なんかさっきからちょくちょく不思議だったんですけど、おかしなことになってませんか!?」

「あ! アリス様、実は、レティシア様、私が渡してしまったシャンパンを……」

「酔ってる!?」


 いやですわ? 私、酔ってなんていませんわよ?

 爺やに対しては酔ってますけれどうふふ。

 ……そして私の夢なのに、爺やはまだ再出現しませんわね……


「……駄目だこれ完全に酔ってる感じだ……」

「え。レティシア様、お酒全くダメな人!?」

「うー……確かレティシア様は、発泡系が全部だめだって設定にあった!」

「「「「設定?」」」」

「ええええとそれはともかく!」


 アリス様、「え」が多くてよ?


「とりあえず、これからの殿下の動向のこととか、話しませんか!? たぶん、色々動きがあると思うので!」

「殿下のことは、もうよろしいのではないかしら?」


 私が報復第二弾に行く予定ですし。


「いや! レティシア様が一番気にされたほうがいいと思いますよ!?」


 あら~。







 アリス様に背中を押されて、私達は噴水の傍に集まることになりました。

 うふふ。水が綺麗。

 涼しい。

 ……あ。蚊が。


「それで、殿下のことなんですが」


 パンッ。


「……。マリア様とダンスパーティーに出たことで、マリア様の主目的は殿下なのは明白なんですが」


 パッパンッ。


「……。…………。殿下が今の段階であんな言動をされていることで、ちょっとこれからどうなるか不透明なところが」


 パッチン!


「……レティシア様?」


 なぁに?


「蚊でも飛んでるんですか?」

「……さっきから周りから寄って来て……」

「あー……お酒飲んじゃったから体温高くて寄ってくるんだ~……」


 え!? そうなんですの!?


「レティシア様、体温高い目だって話ですもんね」


 なぜ、それを。


「いえ、爺やさんが教えてくれてて」


 爺やー!

 またひそひそなの!?

 私以外にひそひそなの!?

 どうして私にはひそひそしてくれないのです!?


「……レティシア様、心の声、ダダ漏れになってますよ……?」

「だって爺やがつれなさすぎるんですもの!」

「ええ!? いや、えー……これ、爺やさんに直接聞かせてあげたほうがよくないですか!?」

「私達もそう思いますけど……!」

「どうして爺やさんのいる時にこうではありませんでしたの……!?」


 爺やー!

 皆して太腿をてしてし叩いて嘆く中、エリク様がぽそっと「……おい、話どうした……」とか呟いていらっしゃいましたけど、殿下のことはどうでもいいからよろしいのではないかしら!?


「もうちょっと早く酔ってたらよかったのかな……!? あ、でもダンスとかすっごい綺麗だったって聞きましたよ!」


 ええ!


「爺やすごく素敵でしたわ!」

「……その笑顔と台詞をぜひ爺やさんに聞かせたい……えーと……すっごく楽しまれました?」

「ええ! 一生分の幸せでしたわ!」

「レティシア様! そこで満足しちゃったら試合終了ですよ!?」


 アリス様!

 いいこと言いますね!!


「大丈夫です! 夢が覚める前にやりたいこと全部やっておくつもりですもの!」

「……それはそれで何か怖い……爺やさんといっぱいお話できました?」

「しました!」

「……かわいーなーもぅ……爺やさん、ちゃんと大事なこと告げてくれました?」

「えっとね、あのね、あのね、爺やがね?」


 うふふ。

 爺やの話が出来るお友達って素敵ですわ!


「それでね? それでね? 爺やがね?」


 アリス様ってばとっても優しい笑顔で聞いてくれるんですもの!

 爺やの話なら私、三十六時間戦えましてよ!?


「レティシア様、ほんっとに爺やさんのこと大好きですね!」

「大好き!」


 ……あら。アリス様。

 そこで撃沈して床石叩くのは何故?

 爺に聞かせてあげたい?

 でも爺や、たぶん聞いてもしれっとしたお顔だと思いますわよ?




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