動き出した歯車
前回の投稿から二日間のみの合計のpvが1000に達してちょっとの嬉しさとかなりのプレッシャーを感じる今日この頃
てか結局そんなに短くなくなった
12月9日 ホワイトハウス
冬の寒空が空一面を覆い尽くし、今にも雪が降ってきそうな様相を呈していた。
「して、被害はどのくらいになりそうなのかね?」
時の大頭領 F、D、ルーズベルトは頭を抱えていた。
日本にとって到底呑み込む事のできないであろうハルノートを実質的な最後通告として、太平洋及び満州などの中国の利権をアメリカの物とするべく日本をけしかけて戦争に引きずり込んだ。
日本の大使宛の宣戦布告に関する暗号をいち早く解読し、各基地にそれを、特に前線になるであろうマニラやラバウルといった主要基地には厳戒体制を取るように指示した。
かくして、予想通り日本の大使は宣戦布告を行ってきた。
日露戦争や日清戦争でも、日本は宣戦同時攻撃をしてきたため、今回はそれを回避し逆に痛撃を与えられると確信した。
しかし、一日経って送られてきたのは絶望的な損害だった。
「最初の航空攻撃で「アリゾナ」「ネバダ」「サラトガ」が撃沈。「ペンシルバニア」大破横転。「オクラホマ」「カリフォルニア」大破着底。「テネシー」小破。後は小艦艇の半数に大小様々な被害が出ています。「メリーランド」「ウェストバージニア」はこの時演習航海に出ていたために被害なし。
飛行場も、いずれも大小被害を受けており、一番被害が大きかったのは内陸に位置するホイラー飛行場です。飛び立つ前に大半の航空隊が破壊され、滑走路もかなりの被害を受けました」
コーデル・ハル国務長官が報告を一度を切り、ルーズベルトの反応を待つ。
「なるほど、確かに大損害だ。だがその程度では真珠湾が使用不能にはならないだろう?」
「その通りです。問題はその夜、敵戦艦による砲撃です。これによりパールハーバーに面していたヒッカム飛行場、フォード島飛行場とそこに集まっていた多数の重機、工厰やドック、湾内にいた残存艦艇、要塞砲、重油貯蔵庫がやられました。特に致命的だったのが重油貯蔵庫です」
ここでルーズベルトは疑問を口にする。
「何故だね?パールハーバーの貯蔵量程度だったら確かに痛いが深刻とまでは行かないと思うがね?」
「確かに閣下のおっしゃる通り、我が国の石油産出量を考えるとパールハーバーで失った量は数ヵ月は少々艦隊運用に支障を来しますが、それほど問題ではないと思われます。一番の問題は、流出した重油による汚染です。貯蔵庫から流出した大量の重油により、港内は完全に船が航行出来る環境では無くなりました。無理矢理通ろうとすれば故障は免れません。更にパールハーバーは湾口が小さいために湾内に溜まった重油があまり湾外にいかないのです。また、港湾設備も破壊されてしまい、輸送艦からの荷揚げもままならない状況です。よって、パールハーバーは数ヵ月、ひょっとしたら数年、数十年使い物にならなくなるかもしれません」
ルーズベルトは頭を抱えた。
「ということはだ。今後太平洋艦隊は何処を拠点に活動したら良いのだね?」
「アラスカのダッチハーバーやオーストラリア方面の基地がありますが、そのどちらか一方に偏らせることは出来ません」
アメリカの工業は約一年間の空白があったとはいえ、その力は依然として驚異的なものである。
しかし、それを分散させるとなると各個の戦力の低下に繋がる。
現時点では戦力が日本より少ないため出来るだけ避けたかった。
「今後どのくらいの戦力を補充できるかね?」
「来年の春までに戦艦はノースカロライナ型2隻、サウスダコタ型4隻が戦線に投入可能です。空母は再来年からエセックス型が順次投入できます。」
「なるほど、後は敵新型戦艦に我が新型戦艦部隊で対抗出来るのかね?」
「我が国の新型戦艦では何とか渡り合える、といった感じであるとおもわれます。まだ詳細な分析がまだなので憶測が強いようですが」
「それでは困る。アメリカはいつも圧倒的な力で勝たねばならない。空母でも、戦艦でもだ。他の建造中の新型戦艦ではどうだ?」
「サウスダコタ型の次にアイオワ型が控えていますが、それは空母艦隊の随伴とパナマ運河の制約により少々無理な設計になってしまい戦艦としてはサウスダコタ型の方が有力になるのではないかという声が上がっています。その次にモンタナ型を計画してます。こっちは排水量は基準で60000トン、満載で70000トンに達する予定です。主砲も16インチ砲3連装4基12門あり、相手が9門であるのを考えるとそれだけこちらの戦艦は攻撃力でも防御力でも圧倒出来ます」
「ほう、それは頼もしいな。何があっても完成させよ」
「承りました」
不意に執務室のドアがノックされる。
「何だね?」
「ハル国務長官はいらっしゃいますか?」
どうやらハルの部下の様であった。
「居るぞ、入りたまえ」
失礼しますの一言の後、ハルの部下は入ってきた。
「何かね?」
ハルはうんざりした様な顔で言った。
無理もない、戦争が始まってからは悪い知らせしか届いていなかったからである。
「日本の新型戦艦の名前が分かりました」
「本当か!」
ハルは目を輝かせた。
「はい、ヤマトという艦型で一番艦は「ヤマト」、二番艦は「ムサシ」というそうです」
「しかし何故分かったのかね?」
「新聞の号外でパールハーバーの攻撃で戦果を挙げたと堂々と書いてあったようです。主砲に関しても書いてあります。41cm砲、つまり16インチの主砲のようです」
「それはカモフラージュということは考えるられないのか?」
ルーズベルトが疑うのも当然だ。日本は長門型を建造する際も主砲を14インチと偽っていた。
兵器の性能をワザと低く発表するのはよくあることだった。
「今回に限ってはそれはないと思います。なぜなら条約が明けてからの20年振りの戦艦の建造でそれほど踏み込んだ物は造れないと思います。我が国のノースカロライナ型ですら当初は14インチ砲の予定を少々無理をして16インチ砲を載せたのもあって不具合が多発しました。我が国より技術の劣る日本にいきなり16インチより大きい主砲を載せられる戦艦を建造するのは難しいと思います」
「なるほど、確かに君の言う通りだ」
ルーズベルトは煙草に火を付けて一服する。
「そういえばハル国務長官」
煙を吹くとルーズベルトはハルに尋ねた。
「今回の被害の半分は日本の航空機によるものだそうだが」
「そうです」
「では、これからは戦艦と空母のどちらが有力になっていくかね?君の意見が聞きたい」
ハルは少し考えると意見を述べた。
「恐らく空母になるでしょう」
「ほう、なぜだね?」
「空母は何百キロも遠くから攻撃が出来ます。それに比べ、戦艦はせいぜい数十キロです。航空機の発展には目覚ましいものがありますから、そのうち大型の爆弾や魚雷を抱えながら空母から発艦でき、もっと早いスピードで飛んで敵艦隊を攻撃するようになるのでは?と今回の日本の攻撃を受けて思いました」
「ということは戦艦は空母に取って代わられると言いたいのかね?」
「その通りです。恐らく、この戦争が終わるころには戦艦はほとんど淘汰されてしまうでしょう」
「なるほど確かにそうだ。だがだからこそ、その戦艦には最後の花道を飾ってほしいものだ。それにはモンタナ型の建造は急務だ」
外を見ると、暗雲が立ち込めて今にも雪が降りそうであった。
ワシントンD.C.ではまだまだ寒さが続きそうだ。
12月10日 大英帝国 ロンドン 首相官邸
ロンドンは一年中霧に覆われていることから「霧の街」と呼ばれている。
今日もその名に負けない程濃い霧が立ち込めていた。
「詳細は分かったのかね?」
イギリスの首相、ウィンストン・チャーチル
彼は恐らく日本の参戦に連合国側では一番喜んだ人物であろう。日本の開戦を聞いた際に、喜びのあまりルーズベルトに電話で直接確認したという話が残っている。
「はい、パールハーバーに奇襲を受けて戦艦8隻、空母1隻、飛行場壊滅、果ては長期間港湾としての使用は不可能ということです」
チャーチルは葉巻を咥える。だが火は付けない。
「そうか、よくやったな日本」
「何故敵を称賛するのですか?」
「敵とはいえ、長いこと同盟を組んでいたんだ。我々が初めて同盟を組んだ国だ。それにアメリカが負けることはないだろう。あの国の工業力には恐ろしいものがある。だがパールハーバーを潰されたことによって太平洋における権威が下がり、我々が付け入る隙が生じる。ロイヤルネイビーの栄光のためにせいぜい日本とアメリカには潰しあってもらわないとな」
チャーチルはここでようやく葉巻に火を付けた。
一息ついて、ロンドンの街を見渡す。
一時はアメリカ国内の混乱とドイツによる爆撃により危機的状態にあったが、アメリカが調子を取り戻し参戦してきたということがチャーチルを勇気付けていた。
「チャーチル首相!」
突如としてチャーチルの秘書の一人が飛び込んできた。
突然の来訪者に驚きながらも、顔をしかめつつもチャーチルは紳士らしく応対した。
「騒がしいぞ、ノック位したらどうかね?」
「それが・・・!」
「どうした?」
「東洋艦隊の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」「レパルス」「レナウン」、空母「ハーミーズ」「インドミダブル」が日本軍の航空機によって撃沈されました・・・!」
チャーチルが咥えた葉巻を落とす。
マレー沖海戦の結果を聞いてチャーチルが数日間失語症になったのは有名な話である。
さて、ここでどのようなことがマレー沖で起こったのかを説明しようと。
英東洋艦隊はマレー半島に迫る輸送船団と敵艦隊を撃破するべく、シンガポールにいた上記の戦艦、空母と若干の護衛の駆逐艦を出撃させた。
しかし、それを日本軍に察知され、日本は艦隊を向かわせた。
戦艦「金剛」「榛名」を中核とする水上打撃群、近藤艦隊と、空母「飛鷹」「隼鷹」「祥鳳」を中核とする航空打撃群、小澤艦隊であった。
艦載機の航続距離の長さと基地航空隊との連携により、3隻の空母の零戦で完全に制空権を奪うと、艦載機と陸上機による波状攻撃によりついに英東洋艦隊主力を葬ることに成功したのであった。
12月9日 ベルリン 総統府
日本参戦の報を聞いて喜ぶ男が一人いた。
「我々は非常に力強い味方を得た」
ナチスドイツ国家元首 アドルフ・ヒトラー
選挙によって政権を獲得した後独裁体制を敷き、この第二次世界大戦の引き金を引いた人物である。
日本では俗に「総統」と呼ばれている。
「しかし、アメリカが参戦して来るとなると、我が方の戦線にも影響が出てきます」
国防軍最高司令部総長 ヴィルヘルム・カイテルが懸念を伝える。
「ただでさえソ連とモスクワで一進一退なのに西に大挙して来られたら抑えれるだけの兵力はありません」
今ドイツは、スターリングラードの戦いに勝利し、とうとうモスクワを占領したが、早々に態勢を立て直したソ連軍と冬将軍に苦戦を強いられていた。
「君は敗北主義者なのかね?」
ヒトラーの目が冷たく光る。
「いえ!そうではありません。ただ少々そういった見方もあると伝えたっかだけです!」
「まあ良い」
カイテルはほっと胸を撫で下ろす。
「それにだ、カイテル君。私には胸を張れる理由があるのだよ。我々はミレニアム、千年帝国を目指しているな?」
「はぁ、その様に存じておりますが・・・」
「日本という国は二千年もの間他国の侵略を寄せ付けず、二千年間降伏をしたことがない。その様な国が我々の味方なのだから、これ以上頼れる事はないであろう」
「その通りです」
「日本には出来うる限りの支援をするように」
「了解しました。ハイル、ヒトラー!」
ちなみに、去年ヒトラーの和服姿が公表されたのは有名な話である。
12月10日 旅順
旅順はここ数年の間にすっかり様相が変わっていた。
鎮守府が復活し、造船所が新たに作られた町は活気に満ちていた。
その中でも、一際大きなドックが二つあった。
半分は植物や魚網で隠されたてみえないがもう半分から、軍艦を造っていることがうかがい知れた。
今、そのうちの片方のドックで、ひっそりとだが式典が行われていた。
「もう少し、ここまで来た・・・!」
感激の声を上げているのは、この軍艦の設計主任である牧野茂大佐だ。
現在、日本の軍艦の守り神である「艦内神社」の奉納を行っていた。
神社の宮司が祈祷を捧げる。
対象の軍艦は、まだ至る所が工事中ではあったが、先日大戦果を挙げた「大和」と非常に酷似していた。
しかし、明らかに大きい。
サイズがまったくもって「大和」より大きかった。
今、分霊が艦の中に入れられる。
その瞬間、牧野は「紀伊」に一瞬、身の毛のよだつ物を感じた。
次回はかなり空くと思います。
その代わり、外伝を数話上げてまたこっちを書いてまたあっちを書いてとなりそうです。
とある巡洋艦を舞台にこの世界でのその艦の戦闘記録みたいのを書いていきます。
良かったらそちらもご覧になってください
ここはないんじゃないかとか単純に面白かったとか何でも良いです。
感想切にお待ちしております