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超超弩級戦艦紀伊 ~暁の出撃~  作者: 生まれも育ちも痛い橋
勝利への中間地点
13/34

咆哮 紀伊

入道雲を見て泣けてきた今日このごろ

スプルーアンスは旗艦「ペンサコラ」艦橋にて仁王立ちしていた。

あと少しで、ミッドウェー島を砲撃可能な地点に着ける。

先程現れた敵艦には肝を冷やしたが、極めて迅速に沈めることができ一安心していた。

だからといって、決して油断のならない状況にあるのは変わりないということはわきまえている。沈めた敵艦は、その沈む間際に味方に発見の報を発した。そのためにこちらの存在は察知されたが、もう後の祭りだ。

敵の主力は殆どが囮の艦隊に引き付けられ、こちらに気付いても重巡洋艦8隻、軽巡洋艦3隻、駆逐艦5隻のこの艦隊を止める事は出来ないだろう。

「スプルーアンス司令、電文です」

艦橋に伝令が駆け込んでくる。

「読み上げてくれ」

「ハッ、『ハンターよりゲストへ コックによるメインディッシュがもうじき完成』とのことです」

「そうか・・・」

スプルーアンスの口元に笑みが浮かぶ。なにしろ、それは数ヶ月前にパールハーバーを壊滅させた、米国人であれば誰もが憎み、恐怖するあの「ヤマト」に大打撃を与え沈没にまで追いやろうとしていることをこの電文は意味しているからだ。

ゲストとはスプルーアンスの率いる艦隊、ハンターが囮部隊、コックが奇襲を行う潜水艦隊を意味する。

「囮になった彼らは本当によくやってくれた。しかも、重巡洋艦とあんな旧式艦でだ」

角田等は戦艦四隻を主軸に据えた艦隊だと思っていたが、これは間違っていた。

新鋭戦艦と思っていたのは実は新鋭は新鋭でも「ボルティモア」級重巡洋艦であった。

砲塔の配置や外観が日本軍の入手していた情報と似ていたのと暗闇であったことで起こった誤認である。後ろにいた二隻の「ニューヨーク」級戦艦と見なされた戦艦と比べても全長が大きかったのも誤認させる要因の一つであった。

そして、その「ニューヨーク」級戦艦も実は正解ではない。

なんとこの艦、それよりも一世代前の「ワイオミング」級弩級戦艦である。

ではなぜ見間違えたのか?

米海軍は来る新鋭戦艦の様々な機構を試すテストベットに練習戦艦となっていた「ワイオミング」及び「アーカンソー」を選び、改造を施すことにした。

しかし、日本の奇襲から始まった太平洋戦争の開始からほぼ24時間以内に太平洋艦隊が壊滅。

応急的に戦力を揃えるため再戦力化も同時に行われた。

そこで参考にしたのが「ニューヨーク」級戦艦である。

そもそも、「ニューヨーク」級戦艦は「ワイオミング」級弩級戦艦の船体設計を流用して14インチ砲搭載超弩級戦艦を造るというコンセプトの下に造られた。

なので船体設計が似ており、改造が容易だったのである。

兵装は「ニューヨーク」級に準拠しながらも、「ニューヨーク」級で伸ばされたよりも更に船体を延長、機関も換装した。

こうして見た目は「ニューヨーク」そっくりながらも速力が27ktにまで向上し、生まれ変わった。

その能力は、日本の新鋭艦相手に囮とはいえ十全に発揮されたのは周知の事実である。

日本がこの事実を知るのは海戦終了後に救助した米兵からもたらされることとなる。



「よし、レーダー始動!」

島の正確な位置と、周囲に敵がいないかを探るためにスプルーアンスはレーダーを起動させる。

これまでは逆探知によって発見されるのを防ぐため起動していなかった。

ミッドウェーは起伏がなく平坦な島である。

なので、島の向こうの状況もレーダー波が遮られずよく分かった。

「ミッドウェーまであと約30km。現在島に数隻の船と思わしき反応、恐らく輸送船かと。その後方は小さい・・・駆逐艦と思わしき反応6。その後方は不明です」

スプルーアンスは内心飛び上がる程の喜びであった。

少なくとも島を砲撃する位置に着くまでに有力な敵艦と交戦することなしに一方的に島を攻撃出来そうだったからである。

「艦隊と島の間に敵艦はいるか?」

「いえ・・・あれ?」

レーダー観測員が妙な声を上げる。

「どうした?何かあったか?」

スプルーアンスが尋ねる。

「艦隊と島の間、こちらから約20kmに岩礁と思わしき大きな反応があるのですが、こんなのあったかなぁ・・・?」

レーダー観測員が首を傾げる。

「航海長、今すぐ海図を確認してくれ」

「少々お待ち下さい」

航海長が海図を広げて確認する。しかし、それを確認するまでもなく、それが何か分かることとなる。

「動いてる・・・! 目標、およそ20ktでこちらに移動しています!!」

動く岩礁などあるはずがない。そう、敵艦であることは間違いない。

「艦種は判るか!?」

スプルーアンスが怒鳴る。

「戦艦・・・だとはおもいますが、余りにも大きすぎます」

「どれだけ大きい?」

「レーダーなので正確な事は分かりませんが、コロラド級よりも二回り以上は断然大きい事は間違いありません!」

スプルーアンスの頭に、一隻の、この状況下で対峙するに於いて最悪の艦行き当たった。

「まさか、モンスター・・・!?」

当たって欲しくない、予想であった。


「司令、どうしますか?」

艦長がスプルーアンスに尋ねる。

「今のところ、奴は一隻で破格の攻防力を持っているだろう。しかし、戦艦にはない巡洋艦の大きな特徴がある」

そう言ってスプルーアンスは自身の足を軽く叩いて見せる。

「足・・・ですか」

「そうだ。幾らなんでも30ktもの速力は出せまい。信じられない事だが・・・、奴は既に7本もの魚雷を受けている。いいか、7本だぞ!?我が合衆国海軍は愚か、全世界を見渡してもそれだけの攻撃を受けて沈まない船を私は知らない」

そこで言葉を切り、付近の者に顔を巡らせる。

「だがその傷も癒えてはいない、少なくとも応急処置程度しかできていないだろう。そこに我々の付け入る隙があるはずだ。全速力で奴に肉薄し、我々の全力を叩き込む! だが出来るだけ戦力を失わないようにする。複縦陣で奴を挟み撃ちだ!」

すぐさま命令が各艦に伝えられる。

その陣容は重巡洋艦で前後から水雷部隊を挟み込んだ部隊が二列。

双方8000m以上離れ、その間に敵艦を招き入れ、挟み撃ちにする。

重巡洋艦が攻撃を引き付け、一気に左右から魚雷の挟撃を食らわせる。

幾らか被害は出るかもしれないが、敵艦は左右に火力を振り分けねばならないので最小限の損失で済むはず。

そして残った艦の全魚雷が、ただ一隻に向けられるのだ。

現在艦隊には、魚雷を装備している艦は巡洋艦でアトランタ級、オマハ級が各一隻。駆逐艦でファラガット級二隻、ボーター級、シムス級が各一隻。

一度に「紀伊」へと向けられる魚雷の数は38本。

沈められないと思う方がおかしいくらいだ。

葬った後は、お待ちかねの少し遅いディナーショウが開幕される。


極めて短時間で陣形を整えた艦隊は、巨人を退治すべく疾駆する。

「敵艦が見えて来ました!」

そう言われてスプルーアンスは双眼鏡で確認するが、暗闇でまだハッキリとは見えない。

しかし、その大きさはなんとなくの外形で分かった。

「敵艦との距離は!?」

「およそ9000m!」

スプルーアンスの乗る「ペンサコラ」は艦隊右翼後方にいる。

それでも、大きい。

前の方にいる艦からはもっと大きく見えるだろう。

ジョナサンが「モンスター」と呼んだのも頷ける。最初は大袈裟に思ったものだったが、その後に入ってくる情報、他のパイロットの証言、そして今、この目で見るとわかる。

スプルーアンスは直感する。

今ここで奴を沈めなければ、合衆国に災厄を招く。

もちろん、今の最重要目標はミッドウェーへの砲撃だが

「よし、全艦射撃開始! 突撃せよ!」

8隻の重巡洋艦の8インチ砲が一斉に火を吹く。

同時に、突撃を行う軽巡洋艦や駆逐艦が一斉にタービンを唸らせ加速する。少しの後、敵艦の構造物に幾つもの爆発と、それに伴う黒煙が生じる。

外しようがない程の大きな的だ。敵艦の前部に後部に中腹に、幾つもの砲弾が命中する。



だが、黒煙を拭って現れた敵艦は何事も無かったかの様に海を進む。

そして次の瞬間、その時が訪れる。


いきなり敵艦が明るく照らされる

これまでよりも鮮やかに、くっきりと

8インチ砲弾の炸裂ではない。主砲の発射炎であるのは明白である。

ストロボ写真のフラッシュの様な、ほんの一瞬であったが、スプルーアンスらにはその戦艦の全容が眼に脳に記憶に焼き付いた。

写真で見た「ヤマト」と殆ど変わらない様に見えるが、彼我の距離からして規格外のその巨大さを思い知らされる。

既に8インチ砲弾を食らっているはずなのに、全く傷らしいものが見られない。

そして凄まじいであろうその発砲音を聞くより前に、前方から爆発音が響く。

「ウィチク轟沈!」

右翼先頭を航行していた艦が撃沈された。

直ぐに近くに雷が落ちたかの様な、くぐもった轟きが二回響く。

敵艦の主砲射撃音と「ウィチク」が轟沈した際に生じた誘爆の音だ。

「他に被害は!?」

「他の艦艇に被害無し!」

全砲門を使って一隻ずつ確実に葬りに来た、そうスプルーアンスは思った。

「敵艦、面舵を取って変針します!」

「しめた! 旋回中の今なら砲は撃てないはずだ。敵を逃がさず今のうちにドンドン撃て!」

7隻の重巡洋艦と、魚雷を搭載していない「ブルックリン」級軽巡洋艦が次々と砲弾を浴びせる。同時に攻撃されないのをこれ幸いとばかりに駆逐艦等がグングン接近する。

敵艦のあちらこちらで爆発が生じる。徹甲弾ではなく榴弾によるものであった。

これは装甲を貫くのは難しいと判断し、榴弾によって火災を生じさせて構造物を焼き払い、あわよくば中小口径の砲を排除して駆逐艦らの突撃の支援を目論んだためだ。


大柄の割には意外と小回りが効いている、とスプルーアンスは思った。

ゆっくりと、その身を軋ませ艦首を振る。

そして、「紀伊」はやっとのことで旋回を終える。



・・・土手っ腹を駆逐艦らに向け、同航戦となる形になって。

「奴は血迷ったか!?」

戦艦にとって一番の脅威となるのは魚雷である。しかし、命中は難しいものだ。

だから一度にたくさんばらまいて命中率を上げる。

通常の海戦であれば、全門一斉射したうち、一隻につき一本でも当たれば御の字だ。

先程の様に反航戦であれば敵味方の相対速度が大きく命中が難しくなるし、旋回して逃げ続ければこちらとしては射撃の機会が少なくなり、同様に命中は難しい。

しかし、敵艦はあろうことか最も命中させやすい、相対速度がほとんどない同航戦を選んだ。

勿論敵からの攻撃も命中しやすくなるが、たった一隻しかいない。

まさに、今これから雷撃されようとしているこの状況下において、常識で言えば賢明とはかけ離れた行動である。



「デイル」艦長は闘志に満ち溢れていた。

それは他の艦の艦長も、乗組員も同じである。

排水量2000トン前後の駆逐艦が、訓練でもあまり想定しない様な好条件で、訓練で想定したどんな船よりも大きい、それこそ自身の数十倍はあろう敵戦艦に一騎当千の魚雷をぶちこめるのだ。

これほどのジャイアントキリングを、これほどのカタルシスを味わう機会がこの先の人生で訪れるだろうか。

その瞬間を今か今かと待ちわびる。

そして


「信号上がりました!!」

雷撃の合図が出された。

「魚雷、全門発射!!」

艦長が命令を下す。

「魚雷、全門発射!!」

水雷長が復唱する。


圧搾空気による小気味良い音を立てて次々と発射管から打ち出されるそれは、不気味に鈍く光り飛沫を上げて闇に没する。

その後、海面に真っ白な航跡が音も立てずに幾本も走る。

敵との距離はこの時およそ2500m

魚雷の速度は射程を4000mにした代わりに48ktも出る。

到達まで100秒

双方にとって、あまりにも長い100秒となる。



「照準、左舷の敵一番艦に設定完了!」

黛が報告する。

「てーっ!!」

松田が号令し、「紀伊」の主砲から51cm砲弾が撃ち出される。

左舷を向いた主砲が火を吹く。

砲撃の余韻覚め止まぬうちに、目標となっていた敵艦が盛大に爆炎を噴き上げ、黒煙が覆う。

その黒煙が拭われた跡にはもはや敵艦は殆どが沈んでしまい、艦首だったらしきものが浮かんでいたがそれもじきに海中へと没していった。

これで「紀伊」は左右に展開する敵艦を一隻ずつ葬ったことになる。

しかし、まだ敵艦隊にはミッドウェーに山積みにされた物資を焼き払うのに充分な戦力が残っている。

それにも関わらず、今のところ主砲ばかり火を吹いていて副砲や高角砲は沈黙したままである。

そして、静かに忍び寄る白い槍。

「左舷雷跡! 右舷からも来ます!!」

見張りが緊張で強ばった声で叫ぶ。

「長官、本当によろしかったのですか?」

黒島が緊張した面持ちで山本に尋ねる。

「参謀長、これは私と、この紀伊への試練だよ。この戦闘が終った時、私がここに立っていられればこの戦争に光を見出だせる。そうでないならば、この戦争は我が国に悲惨な結末をもたらす」


「仮に紀伊が沈んだとして、島を砲撃される前に敵艦隊を撃滅しミッドウェーを掌握したままででもですか?」

山本は大きく息を吐き、決心したかの様に答える。

「米国の工業力は脅威、という言葉で片付けて良い程生易しいものではない。今はまだ大人しいが変貌するのはそう遠いことではない。そして、そうなれば我が国が零戦を一機作る間に二十以上の戦闘機を、雲龍型空母一隻を造る間に三隻のヨークタウン級空母、ひょっとしたらそれ以上の性能を持つ空母を造るやもしれん。小艦艇に至っては比べるのも悲しくなる」

黒島を初め、皆一様に信じられないといった表情を山本に向ける。

「この圧倒的な物量差を覆すにはどうしたら良いか。それは、量にも勝る圧倒的な質だ」


「左右からの雷撃! まもなく着弾!」

見張りの、危機迫った叫びが響く。


「この雷撃に耐え、紀伊が洋上に健在ならばこの先米軍を完膚なきまでに叩く機会が必ず訪れる! この戦いよりももっと大きな戦でだ! もしここで沈むようなヤワさなら、我が国に未来は無い!!」


山本が言い終わるその直後、足元から突き上げるような衝撃が来る、艦全体が幾度も幾度も揺さぶられる。

一隻に与えるものとしては人類史上未曾有の破壊力が「紀伊」を襲い、「紀伊」はその衝撃に身を捩らせ、もがき、震える。



「命中! 5・・・6・・・7・・・、右舷だけで10本の命中を確認!!」

「デイル」で歓声が上がる。他の艦艇でもそれは同様であった。

合計で何本命中したかはわからないが、右舷側から放った魚雷約20本のうち半分は命中したことになる。よって、各艦数本ずつは魚雷を当てたと言っても良い。

そして、それは左舷も同様であった。

幾本もの水柱が高く上り、「紀伊」を完全に包んでしまう。


それが収まりそこから現れたのは


幾筋もの煙を噴き上げ


あちこちから自身を焼き焦がす炎に包まれ


船体部分が殆ど沈みかけ


やがてその身体がいくつにも断裂し


鋼鉄の悲鳴にも似た金切り声の断末魔を上げて無惨に沈んでいく


未曾有の敵超巨大戦艦
















スプルーアンス以下その場にいた米海軍の誰もが、そんな光景が実現したと確信していた。

だが「紀伊」は米海軍の、いや戦争の常識さえも凌駕した、それこそ

 「化け物」 と呼ぶに相応しい存在だった。




水柱のカーテンが収まり、暗闇にオレンジの光に照らされた敵艦の姿があった。その周りをおどろおどろしい黒煙が取り囲んでいる。

だがそれはほんの僅かであり、依然として敵艦が健在なのはその泰山自若たる様子から明らかである。


この時の米海軍の驚き様は、文字通り言葉にならなかった。

その光景を直接見た者は、喜びの笑みから一転、例外なく口をあんぐりと開き、洋上に浮かぶ「紀伊」を見つめる。

見ることが出来ずに口伝てで知ったものは、仰天して眼を白黒させる。


信じられない、悪夢でも見ているかの様であった。この海戦を生き残った者は後にそう語る。


そしてよく見ると

「て、敵艦の主砲旋回中!」

「デイル」の艦長はそこでまた仰天する。

「あれだけの、あれだけの攻撃を受けてまだ主砲を撃つ余裕があるのか!!」

その僅かの後にもたらされた報告は、「デイル」の乗員らには過酷なものであった。

「しゅ、主砲のうち一基が本艦に向けられています!!」


頭から氷水をぶちまけられたように背筋が凍り付く。

何か言おうとしても、今自分に迫っている危機が脳にけたたましいまでのアラームを鳴り響かし、口が強張りとても言葉とは言えない呻きが出る。


現在敵戦艦との彼我の距離はおよそ2800m、戦艦の主砲なら3門もあればほぼ必中の距離だ。

そして、たかだか2000トン前後の駆逐艦にとって、それ一発はおろか至近弾でさえも致命傷となる。


「か、回避!!」

艦長の命令はあまりにも遅すぎた。


「敵戦艦発砲!!」

ほとんど言い終わるか終わらないかのうちだ。

辺り一帯を眩ませる光、死神がその手にもつ大鎌を振り下ろしたような風切り音、その中で「デイル」艦長は一言発するのがやっとだった。


「モンスターめ!!」


放たれた3発の51cm砲弾はその断末魔にも似た声を掻き消し「デイル」船体に突き刺さる。

あっという間に内部深くまで達し、破裂する。

生じた破片が床を、天井を、壁をありとあらゆる物を粉砕する。

爆風が全てをメチャクチャに、四方八方へ吹き飛ばす。

熱風が全てを焼き尽くす。

それらはまもなく弾薬庫や機関部に達してより大きな物となる。

やがて「デイル」そのものが大きな火の玉となり、四散する。

10秒と掛からなかった。

「デイル」の姿は洋上から消えるまで。

その跡は燃え盛るばかりの炎と、その切れ間に見える「デイル」の一体何処を構成していたのか、艦首か船体か機関部かはたまた調度品か、もはや識別することは叶わない残骸が浮かんでいる。


「紀伊」は右舷の一隻、左舷の二隻の駆逐艦を主砲一基につき一隻、一度の斉射で葬ったのであった。

一連の光景を目にした他の艦艇の乗組員はそれらを見て一様に戦慄し、同時に自分でなくて良かったと安堵し、直ぐに次は自分の番になるのではないかということに思い当たり、恐怖する。

そして手持ちの全戦力を、普通であればあっという間に一隻等容易い過剰な数の魚雷を、実戦で動いている敵にこれ以上無いくらい最高の形で当てたのに、敵は沈むのはおろか主砲射撃を行うという余裕すら見せつけてきた。

しかも、そのたったの一斉射で逆に三隻撃沈された。

米艦隊にとって、これが悪夢と呼ばずして何と呼べるだろうか。

米艦隊は、「紀伊」という「モンスター」によって産み出された、「絶望」という名の「悪夢」に支配された。

やっとタイトルの紀伊がまともに戦った・・・

書き始めてから8ヵ月です

そういや外伝放置しぱなっしですが、当初ノリで書き始めたがために考察や特に階級とかで勉強不足だったので止まっちゃってます、申し訳ありません

秋ごろには再開できたらなあと思います

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