表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超超弩級戦艦紀伊 ~暁の出撃~  作者: 生まれも育ちも痛い橋
勝利への中間地点
12/34

夜戦 ミッドウェー

お久しぶりです

夏です。暑いです。

そしてこの時期は我々日本人にとって色々と特別なことが思い起こされると思います。

これを機に、歳上の方から昔の話を聞いてみてはいかがでしょうか?

もちろん、相手の無理の無い範囲で

「第一水雷戦隊旗艦阿武隈より入電! 大和と武蔵が撃沈されました!」

その知らせは駆け込んできた伝令兵によって「紀伊」艦橋にもたらされた。

驚嘆の声が上がる。

「あの二隻が簡単に沈むか!」

松田が怒鳴るが、直ぐにそれが意味の無いものだと気付き声を鎮める。

「早急に事実かどうかの確認電を打て!」

山本が下令したときであった。

「艦橋に報告! 左舷前方に正体不明の明かり!」

言われてその方角を見ると、なるほど確かに白い光が差している。

「あそこには何がいる?」

「少々お待ち下さい・・・。あの辺りには第ニ号哨戒挺が居るはずですが」

黒島が首を捻ったその時である。

新たな報告が山本らのいる「紀伊」艦橋に飛び込んできた。

「大変です!本艦より北北東約30kmを哨戒しているニ号哨戒挺から緊急電!『敵艦見ユ』です!」

「なんだと!?規模は!!」

「それが、そこで電文は終わっていて呼び掛けてはいますが応答がありません」

これが意味することは明らかだった。



「急げ! 大和達を守らなければ!!」

「長門」と「陸奥」は今まさに敵戦艦からの射線を遮ろうと敵戦艦と「大和」、「武蔵」の間に割って入る。

「艦長! 敵との距離が近すぎます!」

副長が言うやいなや、艦長の早川幹夫は艦内放送用マイクを握り締める。



「左舷注水!右舷排水ポンプ急げ!」

「大和」では被雷による必死の復元作業がおこなわれていた。

「副長、被害はどうだ?」

大野が尋ねる。

「ハッ、右舷中部から後部にかけて計5本の魚雷を受け火災が発生しており、浸水著しく右舷に現在14度傾斜しています」

我々の知るところの「大和」及び「武蔵」は魚雷に対しても強靭な防御を見せた。

しかし、それは数時間かけたための結果だ。

今回のように一時に多数の魚雷を受け、しかも訓練は重ねていたが実際に浸水を食い止めるのは初めてな兵が多く、また内部の隔壁の歪み想定したよりも多量の浸水に見舞われる事となった。

そして片舷への多量の浸水が招く結果は、「大和」の沖縄特攻の最期の様に、横転して沈没 である。

「復旧の見込みは?」

「このまま傾斜を押さえられればなんとか、しかし缶室にも浸水の恐れがあり、また現在は大丈夫ですが火災で弾薬庫の温度が上がり続ければ弾薬庫への注水は避けられません」

「戦闘続行は不可能か・・・」

大野は大きくため息をつく。

こんなことになるのであれば、あの時角田の指示を素直に聞き入れていたら、

あの時、もう少しこうなる可能性を考えていたら、

「そう自分を責めなさんな」

声のする方を向くと、角田が立っていた。

しかし、その頭には包帯が巻かれていて一部は血の朱に染まっている。

「角田司令! お怪我は!?」

「私は大丈夫だ。頭を打ってしまったが、これも幸いちょっとした切り傷だ」

そう言い、角田は患部を軽く撫でてみせる。

「それより、今の状況は?」

「現在、大和及び武蔵は右舷に潜水艦からと思われる雷撃を受け、14度傾斜しています。なんとか沈没は免れそうですが、戦闘続行は難しいかと。武蔵も同様と思われます」

「そうか・・・。すまない、私がしっかりしていれば」

角田が頭を下げるのを周りの者は慌てて止めようとする。

「お止めください司令! 非は功を焦って司令の意見を殺した私達乗組員にあります。それに、まだ戦いは続いています」

「そうだ、敵艦はどうなっている?」

「水雷戦隊は突撃を中止させて対潜警戒をさせています」

「敵は、敵戦艦は!?」

そう角田が叫んだ時だった。


「敵戦艦発砲!」

敵は「大和」と「武蔵」に止めを刺すべく、ダメ押しとばかりの砲撃を加えてきた。

「何としても艦を守れ! 傾斜復元及び消火に尽力せよ! たかが14インチ砲弾で沈んだら後世にまで笑い者になるぞ!」


そして、着弾。

殆どが主要装甲部が弾き、炸裂した弾も、そもそも被雷したのとは反対側であったためにあまり損害はなかった。

しかし、塵も積もれば山となる。

危険な状態にあることには変わりない。



射撃指揮所にいた長田は、ただただじっと待っていた。

艦の重心から一番離れている射撃指揮所は、艦の揺れの影響がとても大きい。

怪我人を衛生兵に任せ、計器に損傷が無いかを確認し、射手の席に座る。

次にいつ来るか分からない

・・・ひょっとしたら永遠に来ないかもしれない射撃の時を。



「総員、よく聞け!」

早川が叫ぶ。

「大和と武蔵がやられた。敵の潜水艦にやられた。   貴様らはどうしたい?新鋭艦が沈められて臆するか?仇を取りたくはないのか?貴様らはそれほど臆病か?      何故この船に乗っている。何故海軍に入っている。国を、祖国を守る為ではないのか?家族を守る為ではないか?」


 

「我が帝国海軍の誇りを見せつけようぞ」


暫しの沈黙


「主砲射撃管制所、諸元割り出し完了!」


「主砲残弾未だ豊富なり。存分に撃ってください!」


「副砲損害軽微! まだまだやれます!」


「機関良好! 全力発揮可能!」


「見張りから艦橋へ。視界良好、よく見えます!」


「握り飯なら主計科にまかせてくだせえ!」


乗組員の声は膨れ上がらんばかりに大きくなる。

小さな波は、合わさり、共鳴し、やがて島をも喰らう猛波となる。



『我レ長門 大和及ビ武蔵ハ健在ナレドモ戦闘不能 我レコレヨリ敵戦艦ニ突撃ス 大和ト武蔵ハ ソノ目見開キ シカト見届ケヨ』


あまり芳しくないこの戦闘において、この一報はささやかながらも前線にいる者達に光を与える。

そしてそれは後方に下がっている機動部隊や、今もなお物資を揚陸している部隊、上陸兵達等戦いの推移が把握しにくい者達にも同様であった。

特に多くの若い水兵にとっては幼少の時分から日本の誇りとして、憧れとして、魂として、歌留多や歌でも「長門」に触れてきた。

鼓舞されない訳がなかった。



「負けてはいられんな」

そう言う山本自分の中にある一つの思いが沸き上がって来ているのに気付いた。

戦艦・・・特にこの「紀伊」の活用法。



「紀伊」艦橋で主要員が集まり作戦会議を開く。

「・・・では、紀伊での迎撃は十分に可能ということか?」

山本に黒島が答える。

「ハッ、現在我が艦は丁度新たな敵艦隊とミッドウェーとの直線上にいます。敵は自分達の囮作戦が成功したものと見てそのまま迂回をせず直進して来るでしょう。そこを迎え撃ちます」

ここで松田が口を挟む。

「紀伊だけでは不安がある。敵の戦力がわからないし、分散されたらとてもではないが追いきれないだろう」

松田の言葉に再び黒島が答える。

「勿論、全ての敵戦力を殲滅できるとは思いません。今この紀伊は速力が低下しており、そもそも一隻しかいません。しかし、大きな打撃を与えることにより撤退に追い込むか、最悪は時間稼ぎができれば他から味方が駆けつけることができ、事態を打破出来るものと思われます」

「よし、至急付近の味方に集結命令を。これより味方が来るまで紀伊単艦で敵を食い止める!」



「撃ち方初め!!」

「長門」と「陸奥」の巨砲が火を吹く。

「大和」や「紀伊」と比べると小さく思える砲ではあるが、依然として海上戦力の中核の一部であることに変わりはない。

「長門」の放った八発の41cm砲弾は敵との距離が8000mを切りそうな今、殆どが外れずに二隻いるうちの先頭の敵戦艦を捉える。

その命中の直前、負けじと敵戦艦二隻も撃ち返す。

そして、命中。

同時に大きな火焔が吹き上がり、その威力の凄まじさを見せつける。

あっという間に敵戦艦に火の手が回り、甲板は火の海と化す。

猛々たる黒煙が敵戦艦をすっかり包んでしまう。

しかし、それを見届けている暇は「長門」には無かった。

「長門」には、二隻の戦艦から放たれた20発もの14インチ砲弾が迫っていた。


「長門」を、これまでに経験したことのない強烈な衝撃が襲う。

一部の砲弾は甲板や艦橋等の構造物をかすめ、一部の砲弾は装甲に弾かれたが、尚も半分程の砲弾が被害を与える。

副砲群に命中した数発の砲弾は副砲を粉砕し、周囲にあった弾薬を誘爆させる。

艦首に被弾し、甲板が木片や金属の破片を撒き散らして歪み、火焔が上がり左舷主錨を繋ぐ鎖が途中で千切れとんで派手な水しぶきをたて錨が海中に没する。

艦橋下部に砲弾が命中し、衝撃と熱が付近にいた将兵を襲う。

いくら41cm用の装甲を施していても、至近距離から多数の14インチ砲弾を食らってしまえば多大な被害を負ってしまう。

その光景は「長門」が沈んでしまったのではないかと思わせる程壮烈であった。 が、

『我レ長門 健在ナリ』



「左舷副砲、被害甚大! 死傷者多数、砲撃不能です!」


「後部指揮所に被弾! 総員戦死!」


「艦首兵員室において火災発生! 消火にあたります!」


「長門」の被った被害は大きかったが、致命的とまではいかなかった。

「主砲は無事か!? 機関室も状況を知らせよ!!」

少しのタイムラグの後反応が返ってくる。


「機関良好、まだまだ行けます!」


「主砲損害軽微! もう少しで主砲弾装填完了!」


重要区画への被害は少なくなかったが、深刻なものではない。

「敵一番艦、大きく傾斜しています!」

「何だと!? 味方か!?」

角田がそう言ったのも無理はない。

傾斜しているということは詰まるところ、喫水線以下にダメージを受け浸水するために起こる物だ。

しかし「長門」は改装時に魚雷発射管を取っ払い、他の味方艦には対潜警戒を取らせている筈であった。

「水中弾ですよ司令!」

大野が顔を綻ばせながら叫ぶ。

この時敵一番艦には端から見ると船体の一部が破壊され、また中規模の火災が起こっているように見えた。

しかし、実際にはそれよりも水中弾による被害が深刻だった。

二発の水中弾が喫水線以下の装甲を貫き、船体奥深くで炸裂した。 

機関により深刻なダメージを与えたのか、完全に行き足が止まり、傾斜が一層険しくなっていった。

「敵一番艦の被害甚大! 敵二番艦も大火災!」

敵二番艦は「陸奥」の砲弾を数発浴びていた。

しかし、当たり所が良かったのか、火災が発生し速力も低下してきてはいるものの依然として戦う意志は潰えていない様であった。

「主砲照準ヨシ!」

「次弾装填完了!」


引導を渡す時が来た。


「てーッ!!」


二隻の戦艦の、計16門の砲が暗闇に光を灯す





「紀伊」はもうじき敵艦隊と鉢合わせするであろう所まで来ていた。

「艦長、打ち合わせ通りに頼むぞ」

山本が念を押す。

「了解しました」

松田が頷く。

今「紀伊」は速力が低下しており、味方の増援が来るまで一隻で戦わねばならないため、敵を逃がさないよう慎重な行動が求められている。

そのための「打ち合わせ」であった。

「前方に艦影あり!」

見張り員の一人が叫ぶ。

「距離は!?」

「およそ二〇〇!」

「紀伊」にとって既に敵は射程圏内である。だが、

「まだ撃つなよ。十分に引き付けてからだ」

松田が厳命する。というのも、今ここで攻撃して敵に気付かれ、こちらの状況を知られて艦隊を別れられるのはマズイ。

「敵艦隊の詳細を分かり次第知らせ!」

しばし沈黙が、艦橋を支配する。

数分後にそれは破られることとなった。

「報告します! 敵は複縦陣でこちらに真っ直ぐ接近! 先頭に大型巡洋艦、数は6,7・・・10隻! 更に駆逐艦ないし小型巡洋艦と思わしき艦が数隻!」

「ふむ・・・少々数が多いな。艦長、しっかり頼むぞ」

山本が松田の肩を軽く叩く。

「ガッテンであります!」

松田は気合いの籠った声で答える。


そのあとは、奇妙な沈黙と、緊張を保ったまま距離が縮まっていく。

20000m

18000

15000

14000




どちらも、艦首で静かに波を叩き開き、何事もないかのように、しかしただならぬ気配だけを双方醸し出している。



「長官! まだ撃っちゃあいかんのですか!!」

痺れを切らした砲術長の黛が射撃指揮所から伝声管を通して叫ぶ。

「もうとっくに射程に入っているどころか、この距離なら水平射撃で確実に当てられます!」

代わりに松田が伝声管を通して答える。


「もう少しの辛抱だ! そんなに早漏だと女に引かれるぞ?」

松田の言葉に、各所から押し殺した笑い声がする。

おや?砲術長は早漏でしたか? と黛の周りで茶化す声が聞こえる。

「これは参った。それではヤンキーのじゃじゃ馬娘どもに日本男児の根性をたっぷり見せつけてやらないとですなあ」

黛が頭を掻きながら言う。

「黛よ」

今度は山本が伝声管を通して話す。

「いくら根性があっても、その相手を落とせなきゃあ意味がないぞ?」

連合艦隊司令長官たる山本のこの発言に、それまで堪えていた者もどっと吹き出さざるを得なかった。


「そのために、私だけでなくこの紀伊の乗組員は訓練を重ねてきたのです。そしてこの船は、それを存分に発揮できます!」


それまで聞こえていた笑い声が一瞬にして止む。


「そうだ。日頃の訓練はこの実践のためにある。そして諸君らの鍛えた技があれば相手を落とすことは可能だと私は考えている」


緊張で張り詰めた空気が、程よく緩み、気合いが入るのを誰もが感じる。


「各員一層奮励努力せよ!」


何か延ばしに延ばしている感じですみません

いや本当にここまで延ばすつもりなかったんです、ハイ

次回は紀伊がガッツリやってくれる、筈です!(おい

ブックマークをしていただいたり、感想を寄越して頂いている方、そして読者の皆様、こんなヘタクソの自己満足みたいな作品を読んでいただき本当にありがとうございます!

皆様夏バテには気を付けて













あと鬱病にも

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ