Devil(4)
「基本的にのんびり過ごしてもらっていいんで、気にせずゆったりして下さいね」
「ありがとうございます。いやーやっぱ天国って綺麗ですね」
「そうでしょ? あたしもこっち来てびっくりしてさ」
「え?」
「ああいや何でもないです! まあホントにいい所なんで」
いかんいかん。ついついいらぬ事まで言ってしまった。
召された方々への説明を少しさせてもらっているのだが、まあ予想以上に仕事は楽だ。
だってこの説明がメインで後はほとんどする事がないのだから。役職があがればする事も増えるのだろうが基本皆ゆったりまったりが信条なので、地獄みたいに働きづめなんて事は全くない。
「いやーすっかり慣れたもんじゃないですかー」
「いやここまでこっちの仕事が楽だなんて思ってなかったから」
そうだ、あまりにも楽すぎる。これでいいのか天国と思うが、これだからいいのだ天国は。というかこうでなければならないのだろう。この緩さや静けさは全て天界という世界で真に安らぎを得てもらう為に必要な空間整備なのだ。
そういう意味で今横にいるミリルちゃんなんて適材適所というか、まさに天国の為に存在しているとも言えるゆるふわ具合だ。
他の天使達とも言葉を交えてみたが、誰もが幸福を体現するような笑顔を見せてくれた。
素敵な場所だ。そう思えば思う程に、地獄の事を聞かれたとき素直に答えるのが苦しかった。あの世界をわざわざこんな幸せそうな天使達に教える必要があるのか。わざわざ知らせる必要なんてないんじゃないのか。あたしはただ彼らに対して、来るべき場所ではないとしか言いようがなかった。
――あたしがしてきた事って、何なんだろうな。