Devil(2)
「え、何それステキ! 行きます行きます!」
「あっそ。じゃ希望者って事ね」
悪官のギドーはそう言って書類に何かを書き込む。
天地交換留学。
待ってましたよ。それよそれ。リフレッシュ休暇もクソもない地獄なんですもの。ちょっとぐらいこういうのがあってもいいじゃない。
もちろん即決。交換留学どんと来い。優しくしちゃうわよー。
「ところでギドーさん。なんでこんな事急にするんですか?」
「なんかあれだって。現場の人間にも直接職場を見てもらうのはどうかって」
「ああー、確かにあたしら一般獄職は天国なんて縁ないもんね」
「そうだな」
「やったー。でもこれで一時とはいえ、天国で息抜き出来るわー」
「あ、競争率すごいから頑張ってね」
「へ?」
「この希望者全員通しちまったら地獄すっからかんになっちまうよ」
――マジですか。
*
『それではこれより、天地交換留学選抜トライアスロンを行う』
地を這うようなおどろおどろしい邪神王ゲオラの声が獄界に響き渡る。姿を見せた事は一度としてないが、その声だけでも十分に他を屈服させる存在感を示している。
留学を望む者達があまりにも多いため選抜を行わざるを得ない事態となり、この選抜トライアスロンを行う運びとなった。
スタートラインに集まった獄職員の群れ。皆目がギラついている。何をしてくるか分かったもんじゃない。
内容は至極簡単かつ地獄的。決められたコースを走破したものが勝ち。焦熱から大焦熱への灼熱ゾーン。からのアブタ~マカハドマの八寒地獄という熱さと寒さを乗り超える地獄名物巡りコース。これはキツイ。でもやるしかないのだ。
『では、スタート!』
*
――はあ……はあ……終わったー……。
まあ、この過酷なレースについて語りたい事は山ほどあるのだけれど、とにもかくにも何とか走破する事は出来た。ずっとここにいるから体は適応してるけど、それでもなんともなくへっちゃらって訳でもない。もう寒いのか熱いのかも分からない。この感覚を表現する的確な言葉ってないもんかね?
――あーでも……こりゃダメだな。
そう。私はまあまあ頑張った。だがまあまあなんだなーこれが。
順位はといえば……8位。ベスト8か。人間界だったら評価高いだろうけど、地獄でこれじゃあちょっとな。
――期待せずに結果でも待ちますか。