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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.11

「魔法を知らないはずないわ。ふざけた事を言わないでくれる?」


「………………いや、知らない。自分も、分からない」


 ああそうね。記憶喪失とか言うのね。これを信じろと言うのね………………人間なんて、信用できるわけがない。私の魔法で一瞬にしてくれるわ。そう再び―――今度は左手に魔力を溜める。けど………


「何をしているのかしら?」


「なにか………感じた」


「そう。離してくださらない?手が痛いのよ」


「………出来ない」


「なぜ?」


「貴方が、俺を、否定しているから」


「もう少し声を落として。先程も言ったけど、子どもたちが寝てるのよ」


 さっきのやり取りを見ていたでしょう?わざわざ小声でロロと話していたのに、貴方は分かっていないのかしら。まずは黙りなさい、と強い口調で言えば素直に熊男は静かになった。最初から黙ってればいいのよ。でもね、いい加減に離しなさいって。これは無意識なの?私の天敵がおこす、防衛?早く捨てなきゃ。


「悪いけど、貴方をここには置いておけないの。何度も言うけど、ここにはまだ成人にも満たない幼い子どもがいる。貴方の衣食住お分なんてないわ」


「しかし、俺は殺される。出来れば匿ってほしい」


「そこが怪しいわ。記憶がないのになぜ殺されると分かるの」


「感覚、と言えばいいのか?ここは大丈夫と分かる」


「意味がわからないわ」


 ここが大丈夫?それは私が外部から結界で守っているからに決まっている。それがなければきっとどこも変わらない。ならばここにいさせる意味はやはりない。私が匿う必要、どこにもないもの。それにいつまでも天敵を近くに置いておきたくはない。魔術師の天敵であって、ハーフエルフの天敵。国王騎士なんて、ただの使われる駒じゃない。


 認められない、と決断した私は覚悟を決めて魔法を放とうとする。本当は起こしたくないのだけど―――私の魔法と貴方の手腕、どちらが早いのかしら………………勝負しましょう。


「ホルティーナ様、少々よろしいでしょうか?」


「っ!?」


 ビックリしたわ。決意をした瞬間に出鼻を挫かれるなんて早々にないわよ。


 声をかけてきたのはアーテね。こんな夜遅くにどうしたのかしら?まさか気づいた?そう言う魔法があると言えばあるけど、使ったら私は分かる。でもそんな変化はなかった事から、この家の中で誰かが 魔法を使った事はない。


 まさかアーテは魔法教師になるために私から離れる事を躊躇ってる?来年にはここを出ていかなきゃならない話はもう言いつけていたはず。そう言うルール。分かっていても寂しくなってしまったかしら。ここはアーテに聞いてみなくてはわからないわね。


 少し嫌だけど、熊男に視線を送った。先ほどのロロと違ってここは出ていかなければおかしな事になる。その意図がわかったのか、ゆっくり離す手がなんだか腹がたった。まるで私が手を離せば暴れる猛獣みたいじゃないの。フードを目深く被っているから分からないでしょうけど、私はきつく熊男を睨んでから廊下に顔を出した。後ろで熊男が動く気配がする。


「何かあったの?」


「ミミルが起き出してぐずり始めてしまったんです。どうすればいいのか分からなくて」


 そうやって足元の小さな固まりを私に見せるように前に出す。そこにはシーツにくるまって必死に鳴き声を圧し殺すミミルがいた。薄暗くて見えにくいが、透視魔法を使えば震えているのがよく分かる。


 この子は親に言葉で殺されかけた子。運よく親がこの森の近くにミミルを捨てた事で私が育てる事になった子だ。たまに思い出してこうやって一人で絶えてしまうの。だからこの子と同じ目線にして声をかけてあげる。


「ミミル。いらっしゃい。今夜は私と一緒に寝ましょう?」


 あの親と反対の言葉をかければすぐに胸に飛び込んできた。また3歳の子どもなので私でも受け止められる。胸に顔を押し付けるように強く抱き締める小さな腕。私も離さないようにしっかりと抱き寄せて持ち上げた。


「ありがとう、アーテ。貴方も寝なさい」


「はい。お休みなさい」


「おやすみ」


 アーテを見送ってゆっくり扉を閉める。と、そこで気づいたのよ。熊男の存在を。うっかりしていたわ。




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