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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.11
「ホルティーナ様、いいのですか?」
「人が来るなんて珍しいもの………あの子たちを、見ていて、バナル。ロロ、それにアーテ。いらっしゃい。みなはお昼の用意をお願いね」
「はーい!!」
一番元気のいい挨拶をしてくれたトッティの頭を一撫でして家を出る。向かうはあの熊の人が発見された場所。なにかあるかもしれないのでもう一度みる事にした。私は見つかる事が、怖いから………
場所に戻って辺りを見渡す。ここは崖があるわけでもない、少し開けた花畑。あの熊の人のせいでその場所だけが潰れていた。いいえ、その熊の人が走ったのでしょう。道を作ったかのように潰れている場所から花が乱雑に散っている。
花を少しだけずらして様子を見るけど………駄目ね。この花たちは生き返らない。なんて事をしてくれたのかしら。花に罪はないのに………
「ホルティーナ様。これはあの男の私物でしょうか?」
「なにかしら?」
手渡されたそれは………宝石を一つつけた指輪だった。あの熊の人が身に付けていたのか、サイズがかなり大きい。しかもこの宝石………魔力を感じるわね。まさかここに誰かが詮索に来た?昨日の………?いいえ、昨日の人たちはちゃんと帰っていった。最後まで聞いたもの間違いない。
見つけたアーテに魔法でこの宝石を識別してもらう。私も出来るけど、彼女は魔法教師を目指している。なら、魔法に関しては片っ端から触らせた方がいい。幸いこの宝石に魔力があるのだから、識別も慣れなくては意味がないもの。
アーテが魔法を駆使している間にロロには別の魔法を使ってもらう。これもお勉強。私はこの子たちに教えるのは雑学も、魔法も、剣技もすべて。この子たちが生きていくなかで必要なものを覚えてもらわなければならない。
ロロの魔法は追跡。あの熊の人の何かに巻き込まれるのは嫌ですからね。来た道を塞いでおかなくては同じことの繰り返しだわ。ここにいる生きる者は、乱入者が苦手なのよ。あの熊の人は熊っぽいおかげでしょうけど。
「ホルティーナ様………この識別できした」
「歯切れが悪いわ、アーテ。識別はなんだったの?」
「結界、破りです」
「………ロロが見つけ次第、私が魔法をかけましょう」
「わかりました。もう少し待ってください」
厄介な熊の人を拾ったものね………アーテの手のひらに踊る指輪を見てため息を溢す。結界破りだなんて………狙ってるようにしか聴こえないじゃない。アーテもそれを思ったのか、暗い顔で私をみていた。そうだったわ。彼女は逃げる際に追いかけ回されたのだったわ。
私と同じ背丈になったアーテ。不安を取り除くようにさらさらな髪へ手を伸ばす。もうすぐ十五歳の彼女には、まだ心が追い付いていないわね。焦らなくて、いいのよ。
「分かりました。この道をそのまま真っ直ぐ。中途半端な道なりが出来ているところまで繋がっています」
「ロロも魔法が成長しているようでよかったわ。範囲が広まったみたいね」
「はい。ホルティーナ様の教えは分かりやすいですからね」
「何も出ないわ」
「ロロは魔法を使ったあと、いつも嬉しそうね」
「アーテほどではないけど、使える事は嬉しいんだよ」
そういってアーテの傍に並んだ。私の魔法を邪魔しないように。本当にみないい子達だわ。それじゃあ、一つ頑張っちゃおうかしら。誰からもこの平穏を邪魔されないように………想いをこめて。私は魔法の言葉を紡ぐ。
簡単な魔法なら名称を言えば出てくれるけど、強力なものは唱えてしっかり下地を作らなければ強力にならない。それだけ魔力を維持させ、魔法を作らなければならないから。少し大変なのよね。
唱え終われば空が少しだけ光る。あとはいつも通りの空だけど、反射した光でたまに結界が見えるから困ったものよね。滅多に見られないけれど。これで大丈夫でしょう。私が遠慮したい者たち進めないようにループにしたもの。私の魔法は今の者たちでは簡単に負けないわ。
「やっぱりホルティーナ様のもとでずっと勉強していたい………」
「約束を違えるように教えたつもりはないわよ」
「アーテは魔法教師になるんだろ?ここを出なきゃなれないぞ」
「わかってるわよ。でも、ホルティーナ様にもう逢えないのは辛い」
「嬉しいわ、アーテ。でも、それは言わない約束よ。みなには内緒にしていなさい。まだ他の子達には混乱させてしまうだけですから」
「………はい」
では、戻りましょう。