27sideアーテ
誤字・脱字を修正いたしました。27.4.12
とりあえずマティクだけ帰して私は残ってマーデクさんとお話をする。と、言っても有力な情報はこれ以上得られないのだけど………だからわかりに魔術について聞いてみた。
マーデクさんは王国魔術師の先生だけあってたくさんの事を知っている。私は魔法教師になりたいのでアドバイスをもらえないか、と言えば快く話てくれた。
私と話しているだけなのにマーデクさんは私の弱点を教えてくれる。「失敗が恐いのじゃろう」「反応を気にしすぎじゃ」と言われたら当てはまっていた。
教師なんだから失敗してはいけないと思ってた。でも、誰しも失敗はあるのだから恐れずにみなと成長しなさい。いちいち回りに合わせていたら逆に気張らなくてはならないので悪循環しか生まれないとも教えてくれる。
これだけ少ししかお話ししていないのに、どうしてこんなに指摘できるのだろうか。聞いてみるのが少しだけ怖いですね。
「帰ってきたぞ」
「あ、マティク。どうだった?」
「………………探せない事はないわ。でも国が絡んでいるなら手なんて出せない。ごめんなさい。それよりそんな話、この子達に堂々と話さないで、マーデク。王子が迫害を受けているならそれを消さないと王子が戻ってきても意味がないでしょう。話を聞く限り綺麗に掃除も出来ていないみたいよね?急ぐのはマーデクの悪い癖。まだ直っていなかったのね。掃除してから王子を迎えないと繰り返し。匿うなんてせっかちのマーデクには難しいでしょう?私に訪ねたのならエルフは駄目だったのでしょうから風の妖精がいる西の森を訪ねなさい。これを渡せば話だけでも聞いてくれるはずよ」
握っていた手から出してきたのは………緑の宝石。に、なぜか蔓で縛ってある。ホルティーナ様はどこからこんな宝石を出してきたのでしょう?それよりマティク、あなたそんな長く喋れたのね。いつも一言二言ぽそって喋れば無言だったのに………ホルティーナ様の口調そのままでよく言えたものだ。
マーデクさんはその宝石をみて、マティクを見て静かに泣き出した。こんなオープンカフェで泣き出すと思っていなくて私たち二人はあせるっ。でも、聞こえる涙声は嬉しそうだった。
覚えてくださってる、とか。さすがホルティーナ様。ありがとうございます。浅はかな私をっ。すみません。と泣きながら感謝してた。私たちはなにも出来ないけど、泣いて喜ばせるほどホルティーナ様はすごいのだと改めて思わせてくれる。
ようやく泣き止んだマーデクさんは顔をしわしわにしながら笑って私たちにも感謝した。話を聞いてくれてありがとう、とホルティーナ様にお礼を。いっぱいの感謝を口にして去っていく。
「マティク、ホルティーナ様はなんで助言だけにしたの?しかも、さっき渡していたのって風の純魔石でしょう?」
「………王国に関わりたくないから。魔石を渡したのは今後の牽制、だって」
「………ああ。風の魔石は自由。それを縛ると言うことは束縛」
ホルティーナ様からマーデクさんに渡ったからつまり………私の自由を束縛するな。かな?マティクもそう思ったみたい。王国からみたらちょっと手助けしたらホルティーナ様は関わった事になる。
あそこからホルティーナ様は出たがらないからきっとどの国にも街にも関わりたくないんだと思う。こうやって私たちが買い物に出向いているんだもの。街に慣れるためって言ってるけど………たぶん、本音は出たくないんでしょう。
まあ、ホルティーナ様についての疑問は考えないのがルール。生きるために場所と食べ物と知恵を下さったのだからその恩を仇で返すことはない。
あ。『アヴリーベ』の事聞けばよかった………まあいいけど………………
「マティク、布をもう一度見ていく?」
「うん。糸しかない」
「そうよね。布と糸を一人で運べるわけないものね」
「あと、ガトラさんの服」
「………………作るの?買うの?」
「作る。だから別」
あの人の体格をまとわせる布………………なんだか生地が足りないような気がする。ホルティーナ様が作るのかな?でもなんだかすごく毛嫌いしてるみたいだし。そうしたら私が作るの?うーん。さすがに遠慮したいかも。
とりあえず選び直しでもう一度布のお店へ歩く。近づくにつれなんだか店主が怪訝そうな顔で私たちを見た。さっき見て買わなかったからまた冷やかしにきたと思ってるのかも。長居はできそうにない。
マティクと協力してさっさと選んで帰ることにした。男物はちょっと分からないから店主に聞いたりしてなんとか買えた。大量に買ったからか表情がさっきより嬉しそう。
これを背負うように背中に巻き付けて出ていく。門の兵士が変な顔で見るけど、さっさと離れたいので無視。誰も見当たらないところまで歩いたら転移石で帰る。いつやっても凄いな………私じゃあこんな距離を魔石に込められないよ。
ホルティーナ様のすごさに感嘆しながらマティクと一緒に家へ。「ただいま」と言えば返ってくる「おかえり」が嬉しくてほっとした。マーデクさんでちょっと緊張してたからかな。なんだか帰ってきて気がして………けどあと一年しかいられない事に、少しだけ胸か痛んだ。




