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誤字・脱字・加筆・修正いたしました。27.4.11

「ホルティーナ様!おはようございますっ!」


「おはよう」


「あー!ホルティーナ様だ!おはよーございます!」


「はい。おはよう。みんなよく眠れたかしら?」


 フードを目深く被った私は駆けてきた子どもたちを受け止めながらみなに聞く。どの子もしっかりした子どもで、やんちゃで少し甘えん坊な子どもたち。私が声をかけると笑顔全快にみなが返事をしてくれる。


 元気な声を聞いたならばまず、ここでは朝に子どもたちの体調を確認するのが私の仕事。一人一人並んでもらい一人一人聞いていく。最近になって少しだけ人数が増えたが、それでも体調を聞くのをやめない。それがここのルールだ。軽い問診が終われば終わった子どもから井戸へ行き、水を汲んで顔と体を洗わせる。


「ホルティーナしゃま、あのね、きょうは、なんだかくすぐったいの!」


「あら。乾燥かしら?ミミルはちゃんと水分を飲んでいる?」


「んと、きのうは、わすれたの………」


「まあ。駄目よ。もっとくすぐったくなってしまわ。今日はトトミの果実を飲みましょうね」


「わかった!」


「アーテ、ミミルをお願いね」


「任せてください」


 そうしてこの子どもたちの中で一番の年長にあたるアーテに一番の年少であるミミルを預ける。それから問診は続き、私もみなに着いていくように井戸に向かった。


 ここを作ってから約、五、六百年前。細かい数字は覚えていない。孤児の子どもたちを導いてそれだけの日が経っていた。子どもたちは私の事を知らない。私はこうして目深く森の色のローブで隠してしまうから。約六百年ぐらい前から誰も私の姿を覚えているものはいないでしょう。ハーフエルフの私は、疎まれているから。


 だから十五になった子どもたちは私自ら追い出してしまう。子どもは代わりに私の本当の名前を家名としてあげて、若い子どもたちの未来を一人前の自分になるために外の世界へ返すのだ。それがここのルール。この世界は15から働ける。騎士にも魔術師にも。商人だってお店にだって働ける。冒険者にもなれる。未来はたくさんあるのに、ここにずっと留まらせる事は出来ない。疎まれたハーフエルフとバレてしまえばこの家のルールが崩れるから。


 今では私の名前を持った孤児たちが大いに活躍していたりする。嬉しいことこの上ない。たまに名前が被りすぎておかしな発想をする人間がいるけど、孤児と分かればそれは止んだ。まあ、貴族関係で揉めることはあるけど、その名が消える事はない。幸いにも、私はハーフエルフですぐに疎まれたから、名前すら長寿のエルフにも分からない。ちょっとした腹いせね。誰にも分からない、小さな悪戯。


「みんな洗い終わったかしら?」


「えーと………はい!大丈夫です」


「では、いつものように役割分担をしましょう。今日は料理担当に私が付き添いましょうか」


「はーい」


 また元気よく返事を返してくれた。どうやら私の教育は変に曲がっていないらしい。笑顔で、素直に従ってくれる子どもたちに、手を繋いでそれぞれの持ち場に歩いた。今日も、平穏よ。



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