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りんごの皮

作者: SIn

あれは7月の夜、小学4年生の女の子は、始めてリンゴの皮をむいた。

皮はガタガタで、食べられるところがまだたくさんあった。

もったいないねぇ、とお母さん。

女の子は不機嫌になって

じゃあ蟻にでもあげるよ。

といって、外に出て行って皮を蟻にあげた。

女の子は、学校とか家とかで、まぁいろいろあって、

今、自分は、

誰にも必要ないんだと感じていた。


リンゴの皮を土の上に置くとどこから臭いを嗅ぎつけたか、

たくさんの蟻が寄ってきた。

列を作って蟻が寄ってくる。

蟻がリンゴの皮に群がってくる。

ガジガジ皮をおいしそうにかじっていく。

女の子は美味しそうに見えて、手に残っているリンゴの皮を食べてみた。

さして美味しくはなかった。

でもお腹が空いていたのでとりあえず全部食べた。

美味しくはないけど蟻には必要なんだ、うん、私は善いことをしたんだ。

と、女の子は思ってみた。


次の日女の子は学校に行った。

学校に行くのはいやだったけれど、家に引きこもる勇気も無く、家出をするほどの勇気も無く、学校に行った。

休み時間には他の女の子達は楽しそうに外に出て行って遊んでいた。

女の子はつまらなくて、何となく持ってきた本を読んだ。

二段組みでちんぷんかんぷんな内容で、もっとつまらなくなった。


道徳の授業で最近、いいことをしたと思ったことを紙に書いて班で発表しましょう。と、先生が言った。

だから昨日の、リンゴの皮と蟻のことを書いて発表した。

5人グループのうちの3人の男の子は笑った。そんなん善いことに入らない。と。

善いことなんて言う奴は馬鹿だ。といった。

そうしたら、グループの中にいる、背の高いオンナノコが、善いことだよ。

と、綺麗に言った。

ありがとう。と、女のが言った。

べつに感謝されるようなことは言ってないからありがとうなんて言わなくていいよ。

と、背の高いオンナノコは言った。

そのあとに背の高いオンナノコは班の中で、何か発表したけれど、

班の中の誰よりも善いことをしていて、発表を見て回っていた先生にも誉められていた気がする。

それで女の子は感心して、密かに背の高いオンナノコを尊敬し始めた。

それに、それからその女の子と、背の高いオンナノコは、仲が良くなった。

女の子が転校してきてから、始めての友達だった。


帰る時、二人とも同じ方向だったので一緒に帰った。

たわいもない話をして二人とも笑った。

背の高い女の子と別れたあと、女の子は転校してきてから初めて、

明日も学校に行きたいな。

と思った。


蟻さん達ありがとう。

また明日も皮を剥いて蟻さん達にあげるね。

友達が作れたのは蟻さん達のおかげだからさ。

女の子はそう言って次の日も、また次の日も、

リンゴの皮を剥いて、蟻にあげた。

お腹が空いたら女の子もリンゴの皮を食べて。


それが何年も続いてるのに女の子がリンゴの皮を剥く腕は上手くならない。

どうしてなんだろう?

いつまで経ってもリンゴの皮はガタガタのままで、もったいないったらありゃしない。

土の上に置いておいたら蟻が喜んでたくさん来そうなくらいだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 語り手が、登場人物からちょっと距離を置いているような冷めた感じの文体ですね。 ストーリーがいいと思います。絵本にするとよさそうな作品だと思いました。
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