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未来を知らぬ二人の朝


第一章


「少女の暗き過去と未来へ光を」

春の暖かい朝日が、カーテンの間から霧間の寝顔を照らしていた。


時刻は午前八時前。


この時間より四十分以内に学校へ登校しなければ遅刻となる。

霧間の家がある住宅街から学校まで、片道およそ七分あれば余裕で着く距離だ。


ゆえに、このくらいの時間に起きて準備をするのがベストだといえよう。


たが、霧間はいっこうに起きる気配がしない。


朝が極端に弱い彼は目覚まし時計という起床のおともを使うべきなのだが、霧間はそれを激しく嫌う。

その理由はとくに明確ではないのだが。


ならば、霧間はいつもどのようにして起きているのか。

両親を知らぬ間に亡くし、おじさんとも別居しているため家の中で彼を起こしてくれるものは誰もいない。


そう、『家の中では』。


彼を毎朝起こしているのは、彼の部屋の窓から直線距離でおよそ2メートルのところにベッドを構える、隣人であり幼なじみの楠原深月だ。


彼女は一人暮らしをしているため、日常生活においてはそこら辺の主婦に劣らないほどしっかりしているだろう。


彼女にとって、朝時間通りに起きることなど朝飯前なのだ。


しかし、楠原は今、自分のベッドにいない。

彼女の部屋は静まり返っており、時計の秒針を刻む音しか聞こえないのだ。


かわりに、霧間の部屋には彼の寝息と違うリズムを奏でる可愛らしい寝息が流れている。


寝ている霧間の傍らに上体を突っ伏している様子で、楠原深月は眠っていたのだ。




時は戻り昨晩、霧間を蹴飛ばして気絶させてしまった彼女は、彼を家まで運んだのだ。


クリーチェストの力を少し借りたため、楠原にそれほどの負担はなかった。


自分の家から窓をまたいで霧間麻人の部屋に入った楠原は、とりあえず彼をベッドに寝かしつけた。


が、ここで問題が発生していた。


「着替え、どうしようかしら…。」


さすがに、血まみれの服を着せたまま寝かすのはどうかと楠原は思ったのだ。


「あ、麻人ー…起きてよー…。」

彼女は彼の頬っぺたをつつきながら耳元でささやいたが、霧間が意識を取り戻すことはなかった。


しばらくして、楠原は『下着以外の衣類を交換する』ことを決意し、そしてクローゼットからスウェットを取りだし、震える指先で彼を着替えさせた。


「こ、これは麻人のことを思ってなんだからね?決してやましい気持ちは…。あ、いい体……。」


終始頬を赤く染めそんなことを呟きながら。


その後、任務が完了した楠原は精神的な疲れに襲われてその場で眠ってしまったのだ。



そして眠った状態は朝まで変わることなく、今に至るというわけだ。


すーっ…すーっ…と寝息をたてる楠原深月の表情はどこか幸せそうだった。

しかし数分後、部屋に流れたメロディーによってその表情は解かれ、彼女は目をあけた。


鳴った自分の携帯のアラームを止め、すくっと立ち上がった楠原。


彼女は自分の部屋じゃないことに少し疑問を感じたが、目の前にいる霧間麻人を見て状況を把握した。


そして昨夜のことを思いだし、少し顔が赤くなる。


「と、とりあえず麻人を起こさなきゃ…。」


楠原は少しあたふたしながらも霧間麻人の両肩に手を当て軽くゆすった。


「麻人ぉー。起きなさーい。」


彼女は、もしもこのまま起きなかったらどうしようか、と少し心配をしていたが、そんな不安は彼のいつも通りの欠伸で吹き飛んだ。


「ふあーぁ。あ、おはよ深月。」


そしていつも通りの彼に、楠原はホッと胸をなでおろした。


「おはよ、麻人。…さあ、さっさと準備しなさいよ。私朝ごはん作ってくるから。」


あいさつよりも昨晩頭を蹴ったことを謝りたかった楠原だったが、彼女はどうも霧間には素直になれない。

そんな一面は彼女の『いつも通り』なのだが。


楠原は霧間にそう言い残し、言葉通り二人分の朝ごはんをつくるべく部屋の出口に向かった。


今日は何にしようか、などと考えていると、背後から霧間の疑問に満ちた声がした。


「なあ深月、俺は確か昨日の夜気絶して、朝ここで眠っていたということはお前が運んでくれたんだろうけど、俺、何で今スウェット着てるんだ?」


一瞬、楠原の時間はフリーズした。


そして時間が解凍されると、彼女の顔は真っ赤に染まった。


楠原深月の性格上、私が着替えさせた、なんて言えるはずもなく、彼女はただその場でもじもじしはじめた。


「えっと、それはその…。」


言葉に詰まる楠原。

たった一言だけ発せばいいのだが、肝心なところで何も言えなくなるのが楠原深月のステータスといえよう。


そして右往左往する彼女の思考は、『霧間への怒り』へと変わる。


「そ、そんなこと察しなさいよバカァ!!」


そう叫んで彼女はドアを乱暴に閉めた。


部屋では、全く状況がつかめない様子の霧間麻人がポカンと突っ立っていた。


楠原は思っていた。

麻人は、どこか大切なところが抜けている、鈍感だと。


それに間違いはないが、楠原が素直じゃないことが霧間のその鈍感さがいっこうに治らない原因の一つといえよう。


その後の朝食は、楠原が霧間と目があうたびに頬を火照らせて顔を背けるという、とても気まずい時間が続いた。



小説の閲覧ありがとうございます。


茜空と超能力シャ の作者、黒崎千叉です。



今日はとても良いお天気でしたね。



梅雨も明けたそうでこれからはじめじめ感に悩まされずに済みそうです。




はい、



いよいよ第一章に入りました。



しょっぱなから暗くしちゃいけないと思ったのでまだ話題が明るいですね。



キャラが増える前にもう少し二人の関係(?)や性格を知ってほしくて書きました。





いやぁやっぱ




ツンデレっていいですね。




個人的には女子の照れた仕草がかなり好きなので…なんていうか……アレですね。




はい、まあ自分の話はおいといて…



第一章のタイトルは前書きにも書かせてもらいましたが、「少女の暗き過去と未来へ光を」です。



その『少女』が誰なのか予想しながら読んでいただくと幸いです。



っと言うよりすぐにわかると思いますが。



ってかわからないと話が進まないんで。



少女とは深月ちゃんのことなのか、



それとも新しく登場するキャラなのか、



それとも麻人君がガチホm―。いや、これはないですね。




というわけでこれからの展開に期待してください。



読んでくださっている皆さんの期待に答えられるような作品にしていきたいと思っています。



まだまだ駆け出しですが、茜空と超能力シャ と 黒崎千叉 をよろしくお願いします。




それでは皆さん、良い日々を。

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