煙草
掲載日:2026/03/14
タバコに火を付けた
苦しみの狼煙は誰にも見えないが
煙の実態はかすかに残っていた。
ハイライトがまた一本、また一本と消え去ると
細くなった血管が哀しみを醸し出し
一つ、また一つと夜が明けていった
放り投げられたライターは
通りかかった犬を連れた母にぶつかり
哀しみを燃やしていった。
迎えてくれた一日を雨と煙草が邪魔をして
暮れていったのは自分であった。
無くなった煙草を受け取った実感のある手は少し暖かく、血に触れた。
喫煙所に灯りが差し込んだ。
現代では意味のない闇に照らされた。




