受け継いできたもの
短編です
鍵だ。
引き出しを開けたその奥底に鎮座する鍵。
大きめの宝飾品がついていて、持ち手のところは金属を掘って作った模様まで入っている。鍵の先端は、斧のような形をしていて、アニメや漫画の中に出てきそうな見た目をしていた。子供のおもちゃだろうか。
引っ張り出すと、少し重い。子供の頃自分もこういった鍵や棒が大好きで、そう言うモチーフのキーホルダーなどを買っては妄想にふけっていた。
しかしあの頃持っていた、こういった鍵を模したおもちゃはもっと軽かった気がする。この鍵は妙に重たい。それこそ自分の普段使う玄関の鍵よりもはるかに重い。昔博物館などでバイトしていた時に使っていた、重要なものを仕舞っておく倉庫の鍵と似た重さがある。それにしても見た目が妙にラブリーだ。よく見ると模様にはところどころハートや天使の羽のような模様も彫ってある。
こんな可愛らしい見た目の鍵が、普段使いできるのだろうか。でも子供が遊ぶには重すぎる。
疑問はまだある。こんなラブリーな見た目の鍵が、なぜ祖父の書斎の机の引き出しの奥から見つかるのか。
祖父はこんな可愛らしいものを身につける趣味はなかったはずだ。それこそ、今の時代にも外に出るときは着物を着こむような、大正、昭和の時代に取り残されてしまったような、厳格な人だったから、孫の自分が遊びに来ても、甘い顔など一切しなかった。まぁ、俺がやりたいことを応援してくれたのも、祖父だけだったと記憶しているから、厳しいながらも、寛容な人だったと思う。
そんな祖父だったから、なおさらこの鍵が一体何のための鍵なのかが知りたくなった。
とりあえず祖父の部屋を片っ端から探し回って、隠し扉や金庫が無いかを探し回った。しかしそのような怪しいドアも箱も一切見つからない。
ここまで来るともう意地のような物だった。
施設に入所する祖父の着替えを取りに来ただけなんだけど、俺は完全にもともとの目的を見失っていた。
二階からくまなく部屋中を見て回って、この鍵が合いそうな穴を探す。
しかし一切見つけられない。
それどころか、この鍵以外に、この家にここまでラブリーな物が無い。
俺の持つこの鍵だけが、異様に可愛らしかった。
三十分ほどうろついていると、両親に呼ばれた。祖父の服を見繕い終えたそうだ。残念時間切れ。
せっかくだから、このまま持って行って、祖父にこの鍵の正体を聞こう。
両親と一緒に車に乗り込んで、祖父の入所している施設に向かった。
見繕ってきた服を職員に渡して、面会室で祖父と向かいあった。
「爺ちゃん、この鍵何?」
「あら可愛い、こんなのあったの?」
「お前・・・そうか、これを見つけてしまったのか」
祖父の反応を見る限り、この鍵の記憶はまだはっきりしているようだ。
「コレ、何開けるやつ?財宝とか?」
「徳川の埋蔵金かぁ?」
両親が笑いながら茶化す。俺もそんなもんだろうと思っていた。
「これはな・・・」
爺ちゃんの顔だけが神妙だ。
「お前が見つけてしまうとは・・・そうか、でもそんな気はしていたんだ。お前は聡い子だから・・・・でも、そうか・・・」
爺ちゃんはずっと独り言を言っている。もったいつけないで早く教えてくれよ!
「お前、これを使う覚悟があるか?」
「使うってどういうこと?」
「これはな・・・」
ごくりと唾を飲み込む音が妙に大きく聞こえた気がする。
——受け継いできたもの——
鍵・・・




