表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺伝子の調律  作者: さんご
1章 火の竜王の救済
9/27

驚くハヤトそして

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 夕暮れ時、ハヤトは汗でぐっしょり濡れたシャツのまま宿の扉を開けた。手には、今日稼いだばかりの小さな銀貨の袋。足取りは重く、膝も笑っていた。


 「ただいま……姉ちゃん、今日も無理しないで――」

 言いかけて、ハヤトは目を見開いた。


 ベッドに寝ているはずのマスリナが、椅子に腰をかけ、本を片手にこちらを見ていた。包帯は巻かれているが、顔色は良く、肩も普通に動かしている。


 「おかえり、ハヤト」

 「な、なんで!? 動いちゃダメだって……! 治療師さんが、一週間は絶対安静って!」

 慌てふためく弟に、マスリナは肩を軽く回して見せる。

 「大丈夫。ほら、もう痛くない」


 驚愕と安堵が入り混じった声を漏らすハヤト。

 「うそだろ……?」

 「嘘じゃないよ。ちょっとね、工夫しただけ」


 詳しくは語らない。魔法薬学で無理をして作ったポーションのことは秘密にしたまま、マスリナはただ微笑んだ。弟を安心させるように。


 「だから、もう一人で頑張らなくていい。これからは、また二人でやっていこう」

 「……うん!」


 その夜は久しぶりに笑い合いながら食事を取った。二人分の重荷を背負う必要がない――そのだけで、ハヤトの心は軽くなっていた。


 ◇


 翌日、二人はそろってギルドへ向かった。


 「……えっ!? もう来たの?」

 受付嬢は目を丸くする。彼女だけではない。周囲にいた冒険者たちもざわついた。

 「この前の傷、重かったはずだろ……?」

 「一週間は寝込むって噂だったのに」


 ひそひそと声が交わされるが、マスリナは動じない。淡々と掲示板を見上げ、紙を一枚引き抜いた。


 「ゴブリン討伐、受けたいんですけど」

 受付嬢が慌てて制止する。

 「ちょっと待って! 病み上がりでそんな危険な依頼……!」

 「もう平気です。大丈夫」


 強気な口調に、ハヤトは胸を張った。

 「僕もいます! 二人でなら、できます!」


 やり取りを横で聞いていた一団が、クスクスと笑った。三人組の冒険者。年の頃はハヤトやマスリナと変わらないが、装備はきちんと揃えられていて、顔つきにはどこか余裕がある。


 「へぇ、子供がゴブリン退治ね」

 その中の短髪の少年がにやりと笑う。

 「俺たちも同じ依頼を受けに来たところだ。……競争するか?」


 仲間の少女が肘で突っつく。

 「やめなよ、リオ。からかわないの」

 しかし少年――リオと呼ばれた彼は引かない。

 「いいだろ? どうせ同じ依頼なら、どっちが先に片付けるか試してみようぜ。冒険者ってのは、力で示すもんだろ」


 ハヤトは一瞬たじろいだが、マスリナが代わりに一歩前へ出る。

 「望むところよ。ただし、ゴブリン相手に油断して大怪我しないでね」


 挑発を挑発で返す。その落ち着きに、リオが一瞬言葉を詰まらせる。だがすぐに笑った。

 「おもしれえ! じゃあ決まりだ」


 こうして、初めて同年代の冒険者との出会いが始まった。


 ゴブリン討伐――それはただの依頼にとどまらず、姉弟にとって新たな人間関係と試練の幕開けでもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ