溶岩華と小さな仲間
数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。
この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。
もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。
なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。
リュシオンは、翼を大きく開きそして熱気を切り裂き、ゴーレムの頭上へとたどり着いた。
――今だ!
震える手を伸ばし、真紅の花弁をわしづかみにする。
「取った……!」
花弁は燃え盛る炎のように輝き、指先に熱が走る。それでも離さなかった。
気づけば、リュシオンの手には二輪の溶岩華が握られていた。無我夢中で飛び込んだ際、もう一輪をもぎ取っていたのだ。
その瞬間、地鳴りがぴたりと止んだ。
巨体のゴーレムが不自然によろめき、膝をつく。
「……縮んでる……?」マスリナが目を見開き、声にならない驚きを漏らす。
溶岩華に宿っていた魔力が、リュシオンが溶岩華が取られたことで、失われた。
ゴーレムの体を支える支柱を一つずつ溶かすように弱めていた。
みるみるうちに、岩の塊は縮み、人間の子供ほどの大きさに変貌する。燃え盛っていた溶岩の輝きも、徐々に淡く、温もり程度の光に変わった。
戦闘中の迫力はすっかり影を潜め、代わりに不可思議な静けさが広がる。火の熱も以前ほどではなく、足元の空気がやわらかく感じられた。
ハヤトは思わず後ずさり、呆然とつぶやく。
「……あれが、さっきの……?」
マスリナはそっと息を吐き、リュシオンの方を見る。
「あなた……本当に、あの子の力を引き出したのね」
リュシオンは小さく肩で息をしながらも、かすかに笑みを浮かべていた。
“調律”の力が、絶望的に見えた状況を、ひとつの希望に変えた瞬間だった。
ごつごつとした岩肌はまだほんのり温かく、弱々しい光を放ちながら、ゴーレムはとことこ歩いて三人の前にやって来た。
そして――ぺたり、とマスリナの足元に座り込む。
「……かわいいっ!」
マスリナの目が輝いた。
「ちょっと待って、今まで散々苦しめられた相手だぞ?」ハヤトが剣を向けて慌てる。
「でも見て、このつぶらな目。ああもう、抱きしめたい……!」
抗う間もなく、マスリナは小さなゴーレムを抱き上げた。
すると、不思議なことが起こる。
抱きしめられたゴーレムの体が一瞬、柔らかい光を帯びたのだ。
「……え?」
次の瞬間、ハヤトとリュシオンの目の前に、淡い魔法陣が浮かび上がった。
マスリナが口にした名前――「ルカちゃん」という安易すぎる名が、その光と共に刻まれる。
「……契約、成立……?」ハヤトが呆然と呟く。
「うそ……使い魔……獣魔……?」リュシオンも驚愕する。
小さなゴーレム――ルカちゃんは、満足そうに「ごろごろ」と岩が転がるような音を鳴らし、マスリナの胸にすり寄った。
「ほら見なさい。やっぱりこの子、仲間になりたかったのよ!」
ハヤトは頭を抱えた。
「……姉さん、魔法薬学と動物愛に関しては、時々無敵だよな……」
こうして、一行に新たな“仲間”が加わったのだった。




