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遺伝子の調律  作者: さんご
1章 火の竜王の救済
26/27

溶岩華と小さな仲間

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 リュシオンは、翼を大きく開きそして熱気を切り裂き、ゴーレムの頭上へとたどり着いた。

 ――今だ!

 震える手を伸ばし、真紅の花弁をわしづかみにする。


 「取った……!」


 花弁は燃え盛る炎のように輝き、指先に熱が走る。それでも離さなかった。

 気づけば、リュシオンの手には二輪の溶岩華が握られていた。無我夢中で飛び込んだ際、もう一輪をもぎ取っていたのだ。


 その瞬間、地鳴りがぴたりと止んだ。

 巨体のゴーレムが不自然によろめき、膝をつく。


 「……縮んでる……?」マスリナが目を見開き、声にならない驚きを漏らす。


 溶岩華に宿っていた魔力が、リュシオンが溶岩華が取られたことで、失われた。

 ゴーレムの体を支える支柱を一つずつ溶かすように弱めていた。


 みるみるうちに、岩の塊は縮み、人間の子供ほどの大きさに変貌する。燃え盛っていた溶岩の輝きも、徐々に淡く、温もり程度の光に変わった。


 戦闘中の迫力はすっかり影を潜め、代わりに不可思議な静けさが広がる。火の熱も以前ほどではなく、足元の空気がやわらかく感じられた。


 ハヤトは思わず後ずさり、呆然とつぶやく。

 「……あれが、さっきの……?」


 マスリナはそっと息を吐き、リュシオンの方を見る。

 「あなた……本当に、あの子の力を引き出したのね」


 リュシオンは小さく肩で息をしながらも、かすかに笑みを浮かべていた。

 “調律”の力が、絶望的に見えた状況を、ひとつの希望に変えた瞬間だった。


 ごつごつとした岩肌はまだほんのり温かく、弱々しい光を放ちながら、ゴーレムはとことこ歩いて三人の前にやって来た。

 そして――ぺたり、とマスリナの足元に座り込む。


 「……かわいいっ!」

 マスリナの目が輝いた。

 「ちょっと待って、今まで散々苦しめられた相手だぞ?」ハヤトが剣を向けて慌てる。


 「でも見て、このつぶらな目。ああもう、抱きしめたい……!」


 抗う間もなく、マスリナは小さなゴーレムを抱き上げた。

 すると、不思議なことが起こる。

 抱きしめられたゴーレムの体が一瞬、柔らかい光を帯びたのだ。


 「……え?」

 次の瞬間、ハヤトとリュシオンの目の前に、淡い魔法陣が浮かび上がった。

 マスリナが口にした名前――「ルカちゃん」という安易すぎる名が、その光と共に刻まれる。


 「……契約、成立……?」ハヤトが呆然と呟く。

 「うそ……使い魔……獣魔……?」リュシオンも驚愕する。


 小さなゴーレム――ルカちゃんは、満足そうに「ごろごろ」と岩が転がるような音を鳴らし、マスリナの胸にすり寄った。

 「ほら見なさい。やっぱりこの子、仲間になりたかったのよ!」


 ハヤトは頭を抱えた。

 「……姉さん、魔法薬学と動物愛に関しては、時々無敵だよな……」


 こうして、一行に新たな“仲間”が加わったのだった。


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