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遺伝子の調律  作者: さんご
1章 火の竜王の救済
22/27

火山の麓、燃え盛る蛇

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

火山の麓に足を踏み入れた瞬間、熱気が容赦なく肌を焦がした。

 赤くただれた地面、空気は重く淀み、息を吸うだけで肺が焼けつくようだ。

 リュシオンは、少し平気そうではあった。


 「こ、ここが……溶岩華が咲く山……」

 リュシオンが肩で息をしながらつぶやく。背中の小さな羽が熱風に煽られて震えた。


 だが、次の瞬間。

 溶岩の割れ目から、炎をまとった巨大な蛇が姿を現した。


 ――サラマンダー。


 竜になりきれなかった炎の魔物。その皮膚は黒鉄のような鱗に覆われ、真紅の眼がぎらついている。


 「嘘だろ……! こんなの相手にするのかよ!」

 ハヤトは額に汗を流しつつ、魔力を練り上げた。


 サラマンダーが口を開け、炎の奔流を吐き出す。

 「くっ……来る!」

 マスリナが咄嗟に結界を展開するも、熱に押され、きしむような音が響いた。


 「押しきれないっ!」


 その瞬間、ハヤトが前へ飛び出した。

 「俺が引きつける! リュシオン、隙を狙え!」


 「わ、わかった!」

 リュシオンの体から淡い竜気がにじむ。角は未完成でも、その力は確かに竜の血を宿していた。


 ハヤトが魔力の弾を連射し、サラマンダーの注意を引く。

 その横合いからリュシオンが飛び込み、鱗の隙間に鋭い爪で切り裂いた。

 「これでっ!」


 だが、硬い鱗は浅くしか削れない。

 サラマンダーが怒り狂い、体をしならせ、鞭のように尾を振るった。


 「危ない!」

 ハヤトがリュシオンを突き飛ばす。その衝撃で地面に転がったリュシオンが必死に立ち上がる。


 ――その時。


 マスリナの胸に、ひやりとした感覚が広がった。

 熱に押され、炎をかき消す何かを強く望んだ瞬間、指先から淡い蒼光が走る。


 「……凍れっ!」


 次の瞬間、氷の槍が生まれ、炎の蛇の頭部を貫いた。

 轟音と共に蒸気が立ちこめ、サラマンダーの動きが止まる。

 リュシオンがすかさず飛びかかり、胸元の鱗を砕くように爪を突き立てた。


 「これで終わりだぁっ!」


 サラマンダーが断末魔の咆哮を上げ、崩れ落ちる。


 静寂が訪れ、熱風だけが残った。


 マスリナは震える手を見つめ、息を呑む。

 「今の……氷の魔法……? 私、火山で……氷を……」


 ハヤトは驚きに目を見開いたが、すぐに笑った。

 「すげぇよ、姉さん! これで火山だって怖くない!」


 リュシオンも汗まみれの顔を上げ、必死に笑った。

 「やっぱり……ぼく、一人じゃないんだね」


 3人の視線が交わる。

 火山の試練は、まだ始まったばかりだった。

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