表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺伝子の調律  作者: さんご
1章 火の竜王の救済
20/27

水竜の矜持

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 広場の空気は凍りついていた。

 泉の前に立つ少女――リアナの瞳は、冷たい水面のように揺らがず、リュシオンを射抜いている。


 「あなたが外の世界にいるなんて……竜神族の恥をさらしているのと同じよ」

 その言葉にリュシオンは胸を抉られるように俯いた。


 ハヤトが一歩踏み出す。

 「恥? 何を言ってるんだ。リュシオンは俺たちの仲間だ。助け合って、一緒に生きてる。それが恥なもんか!」


 だがリアナは微動だにせず、むしろ彼を見下すように笑った。


 「人間ごときに下り、人間ごときに庇われるなんて――情けないにも程があるわ。竜神族は誇りと力によって存在を証明する。欠陥は、許されない」


 その言葉に、マスリナの眉がぴくりと震える。

 「……力だけが全てじゃないわ。今のあなたの言葉、聞いていて胸が痛む」


 しかしリアナは取り合わない。

 「価値観などどうでもいい。私は“水竜の巫女”。竜神族の名を汚す者を見過ごすわけにはいかない」


 その瞬間、泉の水面がざわりと揺れた。

 リアナの周囲に蒼い光が芽吹き、透明な水の刃が花弁のように浮かび上がる。

 「リュシオン。旅を続けたいなら――その価値を証明してみせなさい。できなければ、ここで力尽きるだけ」


 挑発とも宣告とも取れる声が広場に響き、群衆は息を呑んだ。

 リュシオンの背の小さな翼が震え、喉は乾ききり、声はかすれる。

 「ぼ、ぼくは……」

 幼いころ浴び続けた嘲笑と侮蔑が蘇り、視界が揺らいだ。心臓が恐怖に掻き立てられ、足は地に縫い付けられたように動かない。


 そのとき――強い手が彼の肩を掴んだ。

 「大丈夫だ、リュシオン」

 ハヤトの声は熱を帯び、真っ直ぐだった。

 「お前はもう一人じゃない。俺たちがいる」


 マスリナも凛と頷く。

 「そう。もし彼を“試す”つもりなら……私たちも一緒に受けて立つ」


 リアナの目が細まり、唇に冷笑が浮かぶ。

 「……ふふ。人間にできることなど、何もないのに。なら証明してみせなさい――欠けた翼にどれほどの価値があるのか。仲間に縋る愚かさを、ここで思い知るといい」


 水が渦を巻き、広場全体に戦いの気配が満ちていく。

 恐怖に打ち鳴らされるリュシオンの心臓。だがその背に触れる仲間の手が、確かに勇気を流し込んでいた。

 ――彼は今、初めて一人ではなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ