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遺伝子の調律  作者: さんご
1章 火の竜王の救済
19/27

再会と断絶

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 石畳の道を歩く三人は、ようやく隣町の門をくぐった。

 人々の喧騒、行き交う荷馬車、屋台の香ばしい匂い――小さな村にはなかった活気がそこにあった。


 「やっと……着いたな」

 ハヤトが深く息をつき、荷物を抱え直す。


 マスリナはギルドを訪れ、無事に依頼品を納めた。

 報酬を受け取り、ようやく一段落したところで、ハヤトはリュシオンに向き直る。


 「なあ、リュシオン」

 竜神族の子供は振り返り、不安そうに瞬きをする。

 「俺たちと一緒に旅をしないか?」


 その言葉にリュシオンの目が大きく見開かれた。

 「ぼ、ぼくが……一緒に?」


 ハヤトは頷く。

 「お前がいたからオークも倒せたし、俺も強くなれた気がする。何より……もう一人で泣かせたくないんだ」


 リュシオンの小さな胸が熱に震えた。

 両手を握りしめ、声を張る。

 「……ぜひお願いしたい! 竜神族は恩義を忘れない。ぼくは命を助けてもらった。だから、この身が果てるまで忠義を尽くす!」


 その真剣な眼差しに、ハヤトとマスリナは思わず微笑みを交わした。


 ハヤトは少し悩んだ様子で

 「忠義だなんて。そんなにきを張らなくていいよ」


 ◇


 だが、運命は静かに揺らぎを見せる。


 町の広場に差しかかったときだった。水の魔力を纏うような涼やかな雰囲気の少女が、泉の前で立っていた。

 長い青銀の髪、左右対称に輝く美しい角、翼は大きく広がり、その姿はまさに「竜神族の理想」そのもの。


 彼女はリュシオンに気づくと、目を細めた。

 「……あなた、まさかリュシオン?」


 嘲笑うかのように話す。


 リュシオンの顔色が一気に曇る。

 「……リアナ……」


 少女はため息をつき、腕を組んだ。

 「やっぱり。欠けた角と不揃いな翼……そのままね。まだ大きくなっていなかったのね。」


 冷たい声が広場に響く。

 「どうしてこんな場所にいるの? 里を追い出されたんじゃなかったの?もう死んでるのかと思っていたわ」



周囲の人々がざわめき、足を止めて振り返る。広場に集まった視線の中で、リュシオンの肩が小さく震えていた。


 ハヤトは思わず一歩、前へ踏み出す。

 「おい、やめろよ。こいつは――」

 その声には焦りと怒りが入り混じっていた。


 しかし、リアナは冷ややかな笑みを浮かべ、首を傾げる。

 「関係のない人間には、わからないでしょうね。竜神族は常に完璧であらねばならない。だからこそ我らは強く、美しい血を保ってきた。……だがリュシオンは“未完成”。その弱さは一族にとって恥でしかないのよ。

火の竜王の一族にいながら、赤き鱗すら持たぬ……その灰色、竜神族と呼べるのかしら? まるで、下等なリザードマンじゃない


リュシオンは胸が締めつけられ、呼吸すら苦しい。幼い頃から浴びせられてきた視線が蘇る。


 その言葉が刃のように響き、場の空気を凍りつかせた。囁きが広がり、見物人たちの目には同情と好奇の光が交じる。


 マスリナの瞳が怒りに燃え、鋭い光を放った。

 「……その言い方、絶対に許せないわ」

 彼女の声は低く、張り詰めた糸のように震え、広場に静寂が落ちた。


 リュシオンは唇を噛み、拳を握りしめながらも、言い返す言葉が見つからず俯く。喉の奥で声が震えたが、それは音にはならなかった。

 羞恥と悔しさが入り混じったその姿に、ハヤトの胸は熱くなる。守らねばならない――そう思わずにはいられなかった。


 広場の緊張は頂点に達し、息を呑む音すら大きく響く。

 人々の視線が交錯し、次の瞬間、誰かが動けば刃が交わるのではと錯覚させるほどに、場は張り詰めていた。

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