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遺伝子の調律  作者: さんご
1章 火の竜王の救済
17/27

竜の子

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 オークの棍棒が唸りを上げる。だが、もう以前のように圧倒されはしなかった。

 「マスリナ、右を頼む!」

 「わかった!」


 姉が閃光を走らせて視界を奪う。その瞬間、ハヤトは両手を掲げ、魔力を込める。

 ――父のように、一撃に魔力を込めるだけじゃない。

 意識を分割し、細かく刻んで放つ。


 「連射だっ!」

 炎の矢が次々と紡がれ、矢継ぎ早にオークの全身を撃ち抜いた。

 怒号も上げきれぬまま、巨体は前のめりに倒れる。


 もう一匹のオークは背後から迫ろうとするが、マスリナが薬草のエキスを注ぎ込んだ爆発玉を投げつけた。

 閃光と衝撃で怯んだところを、ハヤトが一閃――剣に宿した魔力の刃で断ち割る。


 「ふう……」

 土煙が収まり、静寂が戻った。


 ◇


 震えていた竜神族の子供が、恐る恐る二人に近づく。

 銀色の鱗が光に反射してきらめく。まだ幼いが、背筋には気品があった。


 「す、すごい……あんなオークを、こんなに早く……」

 ハヤトは剣を肩に担ぎ、息を整えながら笑った。

 「大丈夫か? 怪我はない?」


 子供は小さく頷いた。

 「……ありがとう。ぼくは〈リュシオン〉。竜神族の里から来たんだ」


 マスリナが目を細める。

 「竜神族の……あなたが、どうしてこんな場所に?」


 リュシオンは唇を噛んだ。

 「ぼくは……里から追い出されたんだ。力が足りないって。試練を果たせないなら、竜神族の名を名乗るなって……」

 幼い声が震えていた。


 ハヤトとマスリナは顔を見合わせる。あまりにも自分たちの境遇に重なる話だったからだ。

 優秀な姉と比べられ、自分だけが未熟だと感じ続けた日々――ハヤトは思わず拳を握りしめた。


 「……そんなの、間違ってる。誰だって最初は弱いんだ」

 リュシオンが驚いたように目を瞬かせる。


 マスリナは弟の肩に手を置いた。

 「でも、弱さを理由に居場所を失う子供がいるのは、放っておけないわね」


 リュシオンの瞳に、光が戻っていく。

 「君たちは……ぼくを置いていかない?」

 「当たり前だろ。さ、町まで一緒に行こう」


 その手を掴んだ瞬間、ハヤトの胸に確かな決意が芽生えた。

 ――この子を守る。それが、俺の新しい使命だ。

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