報告と別れ
数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。
この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。
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なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。
日が傾くころ、ようやく一行は町の門をくぐった。
泥にまみれ、服は裂け、しかし皆の手には確かな戦利品――ゴブリンの魔石と、リーダーの大きな魔石が握られていた。
ギルドの扉を押し開けると、ざわめきが一気に静まり返る。
「……子供が混じってるぞ」「あの傷の数……本当に討伐してきたのか?」
冒険者たちの視線が突き刺さる。
受付嬢が目を丸くした。
「あなたたち……まさか、この短時間で戻ったのですか? 依頼はゴブリンの討伐だったはず……」
ハヤトは震える手で魔石を差し出す。
「はい……これが、討伐の証拠です」
受付嬢が石を見て息を呑んだ。
「まさか、リーダー級まで……? こんな子供が……」
疑いの色を隠そうともしない。周囲の冒険者たちも同じだった。
「嘘だろ。あのガキが倒せるわけない」
「どうせリオたちが仕留めて、横から拾っただけだろ」
ハヤトは悔しさに唇を噛んだ。何も言い返せない。
その時――リオが一歩前に出た。
「違う。リーダーを仕留めたのは、間違いなくハヤトだ」
その言葉に場の空気が揺れる。
「俺たちは連携で群れをさばくのが精一杯だった。リーダーには歯が立たなかった。だが、あいつは……最後の最後で光のように戦って、リーダーを打ち倒したんだ」
沈黙が広がる。
受付嬢は戸惑いながらも、魔石を確認し、ようやく頷いた。
「……わかりました。依頼達成と認めます」
だが、その一言の後に付け加えられた言葉が、ハヤトの胸を刺した。
「リオさんたちが証言してくれなければ、とても信じられませんでしたね。彼らのサポートがあってこそでしょう」
――結局、自分の力は信用されなかった。
(俺は……まだ弱い。姉ちゃんを守るなんて、大口叩ける立場じゃないんだ)
拳を握りしめ、ハヤトは心の奥で誓った。
(必ず強くなる。誰に疑われても、俺の力だと証明できるように――!)
◇
報酬の受け取りを終え、受付を離れると、リオが振り返った。
「なあ、ハヤト、マスリナ。お前たち、よかったら俺たちの仲間にならないか?」
弓使いの少女も笑顔で頷く。
「ポーションのおかげで助かったし、あの力……一緒にやれば、もっと大きな依頼もこなせるよ」
魔導士も真剣な目で二人を見た。
「命を救ってもらった恩は忘れない。だからこそ一緒に戦いたい」
マスリナが一瞬ハヤトを見る。だが弟は首を振った。
「……ごめん。俺たちは、まだ未熟だ。特に俺は、あの力を制御できてない。だから今は、誰かと組む資格がないんだ」
リオは驚いた顔をしたが、やがて静かに頷いた。
「……そうか。確かに、俺たちじゃ釣り合わないかもしれないな」
弓使いが少し悔しそうに唇を尖らせた。
「でも、また会えるよね?」
マスリナが優しく笑う。
「ええ。きっと」
リオは最後に一言、真剣な声で告げた。
「ポーションの代金、必ず返す。その時は、また肩を並べよう」
そう言って彼らは去っていった。
◇
残された姉弟はしばし沈黙し、やがてマスリナが弟の肩を軽く叩いた。
「悔しい? でも、それは次へ進む力になる」
「うん。……俺、もっと強くなるよ」
夜の帳が降り始めた町で、二人の瞳は未来を見据えていた。




