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遺伝子の調律  作者: さんご
1章 火の竜王の救済
10/27

競争の始まり、そして異変

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

 森の北側、街から半日の距離にある廃村跡。そこはゴブリンの群れが巣を作っていると噂される討伐指定区域だった。


 「ここが現場か……思ったより静かだな」

 短髪の少年――リオが剣を肩に担ぎ、仲間の二人と共に辺りを見回す。


 マスリナは冷ややかな目を向けた。

 「静かなのは、隠れてるからよ。ほら」

 彼女が手をかざし、微かな魔力を放つ。草むらの奥でざわめきが起き、四匹のゴブリンが姿を現した。


 「さすが……魔法薬学の応用か」

 リオが感心したように呟いた瞬間、ハヤトが前へ出る。

 「じゃあ、勝負開始だな!」


 こうして“どちらのパーティがより多く討伐できるか”の競争が始まった。


 ◇


 ハヤトはまだ非力だ。それでも姉と組めば補助や連携で活路を開ける。

 「姉ちゃん、右!」

 マスリナが即座に魔力弾を撃ち込み、飛びかかるゴブリンを吹き飛ばす。ハヤトはその隙を逃さず、短剣でトドメを刺した。


 対するリオたち三人組も負けてはいない。リオが前衛で剣を振るい、弓を持つ少女が正確に援護を入れる。残る少年は防御魔法で支える――三人の連携はよく練られていた。


 「こっちが三体目!」

 リオが声を上げると、ハヤトも負けじと叫ぶ。

 「僕らも三体!」


 数を競うごとに、双方の動きは熱を帯びていく。互いに一歩も譲らず、次々とゴブリンを倒していった。


 だが――。


 「……おかしい」

 マスリナが眉をひそめた。

 「こんなに数が多いはずない」


 確かに。討伐依頼の報告では“十体前後”とされていた。だが既に十を超えている。それでもなお、森の奥から続々と現れる。


 「くそっ、全然減らねえ!」

 リオが舌打ちする。背後から矢を受けたゴブリンが倒れたが、すぐに二匹が代わりに飛び出してくる。


 「囲まれてる……?」

 ハヤトが息を呑む。視界の四方八方に緑色の影が揺れ、ざわざわと耳障りな笑い声が響いていた。


 「退くわよ!」

 マスリナが叫ぶが、既に遅かった。木々の陰からさらに大きな影が現れた。


 「ゴブリン……リーダー!」

 リオの仲間が声を上げる。身の丈は普通のゴブリンの倍、粗末ながら鎧をまとい、錆びた大剣を引きずっている。


 群れの中心が姿を現した瞬間、空気が変わった。

 小さな競争だったはずが、一気に命を賭けた戦場へと変貌したのだ。


 「ハヤト……下がって」

 マスリナが弟を庇うように前に立つ。だがその表情には焦りが滲んでいた。


 五人の若き冒険者たちは、知らぬ間に“狩る側”から“狩られる側”へと立場を逆転させられていた。


 そして、森の中に不気味な咆哮が響き渡った。

 次の瞬間、ゴブリンの大群が雪崩のように押し寄せてきた。


 ――競争は、混沌の序章に過ぎなかった。


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